蓮心 表千家茶道教室 池坊いけばな華道教室

西武新宿線沿い西東京市田無駅より徒歩11分の表千家茶道・池坊華道教室

2022年 池坊いけばな 1年 3期(10月)「生花」の学び

2024年1月3日 Category: blog

迎春。2024年が明けました。今年も宜しくお願いいたします。

昨年 2022年の池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 1年目、3 期10月12日〜16日の報告です。

 池坊に入門し、その「入門」の次、二番目のお許しは「初傳(伝)」です。 この「初傳」のお許しを頂くと、生花 「五箇条」と「七種傳」の伝花(でんか)の教えが伝授され、学ぶことが許されます。

さて 初日はその『五箇条』の伝花のひとつで、特殊な美感を表現するものの一つ「紅葉」。

紅葉は、花のない生花(ショウカ)。

花は無いが、紅葉・黄葉・青葉・曝(シャレ)木とで、充分に見応えがあります。基本的な陰陽の働きを守りながら、野趣のある素朴な味わいが素敵です。

江戸時代 弘化(1845~1848) 十月 41世 専明宗匠の絵図。逆勝手。

景観表現なので、立花に近い情景です。

牡丹籠に紅葉一色。白椿を根締めにすることもある。

シャレ木を1〜2本交えて、秋の山の景観を表現。教室一面に紅葉!

花形の中心「真(しん)」に色の濃いものを用い、中段下段に黄葉、客位は上座ながら隠方なので、青葉を交ぜ生けて。美しい照り葉も用いて。

実は「もみじ」という植物は存在しません。『もみじる』という形容詞です。

教室中紅葉一色!まるで山の中に迷い込んだようです。街中にいながら紅葉狩りとは・・・初日から贅沢学びの幕開けです。

 

2日目は変化形。「二重切」の重切の花筒の生花。

変化形の重切花筒には一重きり二重切り、獅子口、二重切雲龍、獅子口の口が長い浦島、鶴首などの花筒があります。

1832年江戸時代に刊行された『生花株要記』に、夏の花に(二重切りの)上の重に花をいけ、下に水ばかりにしておくことがある。これは猛暑の時、水を見るためのものである。古来よりあることである。』とあります。風流な教えですね。

『初伝』の「蔓物の事」に『二重切りの上の重に生る事 置にても不苦(くるしからず)、下座の方へ蔓くだりたる事よし。根締めは草よし』と記されている通り、上の重に「蔓梅擬(つるうめもどき)と小菊」、下の重に「竜胆」を生けます。蔓ものである鶴梅擬の垂れて生育する出生を生かして。

竹二重切に鶴梅擬と小菊、竜胆。

鶴梅擬は、溜(ため)が効くので生けやすいです。真(しん)と副(そえ)の蔓梅擬が斜め手前に立ち昇りながら向かい合う姿の緊張感が、その後垂れ下がり生きて行く姿を引き締め、そして優雅にみせてくれます。

  

3日目は、変化形。『生花別伝』「上中下三段流枝の事」。

文字にすると、まるで格闘技の技のようですね(笑)

「流枝」とは、枝が育ち行く過程で何かの障害があり、そのまますぐやかに伸びていくことが出来ない状況の時、その状況を回避し、育てるところを探して伸びていきます。その植物が無心に生きようとするその姿を表現します。それぞれ枝が流れて行く前にその「座」をいれます。

教室では各自 枝ぶりをみて、上段、中段、下段のどれかを学びます。私は上段流し。最初に選んだ枝が折れてしまい、苦心しましたが「諦めない」根性で頑張りました。先生にお手直しで陽方に一本、花のついた枝を一本差し入れていただいたことで、パッと作品が明るく仕上がりました。

木瓜 上段流枝

 

4日目は 同じく変化形。満月の月の輪形をした銅製の花器を釣って生けます。

花も木瓜。月型の花器の形との調和をはかり、特に躰の枝が月の丸い縁を沿うように。又、真と副が向きあい、真は前に出たら陽方へなびくことが肝要です。

「月」の花器に木瓜一種。

釣花いけは、「草の草」の花形。

「月」の他に「横掛け」「向かけ」「寸切」「尺八」「根付(筆)」「手籠(釣り)」「獅子口」「瓢」「雪月花(色々な生け方有)」「釣船」など。

外に釣ったり掛けたりして花を生ける、その成り立ちは 実はもっとも早い いけばなの形なのです。

 

最終日は各自「三種生け」か「新風体」を自分で選んでいけます。

私は「三種生け」。根締めの岩沙参を、株分けにすることで素敵に仕上がりました!

「三種生け」丸葉万作、マオランと、岩沙参(イワシャジン)の株分け。

万作の紅葉、枝ぶりが素晴らしかったので、マオランというチョコレート色の長葉を用い、秋らしく表現しました。

授業では、『三種生け・新風体とも、「器用」か「不器用」の花材をよく考えて選ぶように』と教わりました。花材の「器用・不器用」って?と不思議に思う方多いと思います。でも確かに、それはあるのです。

それは、「器用な花材」だから成功する、「不器用な花材」だから失敗する。というのではなく、それぞれの花材の特徴をよく識ることで「その花材の良さを最大限引き出しいかすことが大切」ということです。

「生花」とは、植物が光に向かって上に育ち伸び生きようとする姿を、それぞれ その植物の特徴をとらえながら表現する花形です。

生花には「正風体」と「新風体」の花形があります。

「正風体」には、一つの「型」があります。「真」「副」「躰」という三つの型とその「あしらい」から成り立ちます。先人が長い年月の上に創り上げてきた「型」です。

もう一つの「新風体」は「型」は、ない生花。「正風体」という「形」が生まれる前の、それぞれの植物が「生きる姿勢」を表現する花形です。

生花新風体は、現宗匠である45世池坊専永宗匠が1977年に発表された花形です。

   

 華道にしても茶道でも、おそらく「道」がつく教えの世界では共通のことかと思うのですが、その道の『お許し』というものは、西洋の「ライセンス」とは考え方が違います。出来る様になったから許される運転免許証のようなライセンスではなく、「ここまで学んで来たので、次のステージの門を開いてもいいですよ」という、「そのために同じ空間で学んでを深めても良いですよ」という『お許し』なのです。

正直、紹介している伝花の全てを稽古を始めたばかりの「初傳」で理解するのは、とても難しいことです。しかし繰り返し続けていくことで毎年、少しずつ理解が深まっていくことができます。

焦ったいようなのですが、同じことを繰り返し稽古することを繰り返し、一年たち、二年経ちとその都度違う自分に気付いていく。それをまた繰り返す。

華道稽古を始めてから38年位経っている私。今まで時間をかけて繰り返し伝傳も含めて学んできましたが、最近ようやくその「傳花」の意味がわかり始めたような気がします。

いやぁ、いけばなは… 深いですねぇ・・・伝えきれませんワァ(笑)

まぁ、だからこそ飽きずに学び続けていけるのでしょう。この先人の素敵な教えを後世へと繋ぎたい。それが私の使命なのです。

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告 – 後座 –

2023年12月3日 Category: blog

令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告「 初座」 につづく「後座」編です。

茶懐石の後、主菓子をいただき、名残の拝見をして露地へ移りました。

「初座」で炭点前の後、茶懐石と主菓子をいただいた後「露地」へ。
亭主からの後座への席入りの合図「喚鐘」を待ちます。

 たっぷりと水を打った外腰掛。暑さを忘れ…と 書きたいところですが、正直‥ 暑かったです。露地で静かに待っていると、席中を準備する皆の苦労が手に取るように伝わってきます。私はひとり、外腰掛けで今後の課題に真剣に向き合った時間でした。

  

 ほどなく、喚鐘(かんしょう)の音が響き、つくばってその音を静かに聴きます。蹲踞で手と口を清め、後座の席へ。

 後座の床の間には、蝉の花入に唐糸草と紫の桔梗、河原撫子、糸芒。涼しげで可憐なその花たちの姿を見、先程までの暑さがようやく吹き飛ばされました。

前日のリハーサル日の茶花
本番当日の茶花

後座の室礼を拝見し、いよいよ、茶事のメインである濃茶です。

感染症対策で各点前でいただいていましたが、社中皆さんの希望により、三年ぶりに回し飲みをするお濃茶です。

亭主の深雪さんが濃茶を点てます。
一同で濃茶をいただきます。

「今回の亭主や幹事、そして半東全員、一人ひとりの “節目” を、皆と 一緒に祝い味わっている。」と感じ、とても、とても美味しくおめでたく感じる味でした。

会記も拝見します。
リハーサル時の濃茶
徹夜して清書してくれた会記。

茶入  伊勢崎満さん作 備前肩衝  御仕服 菊苺
茶杓  瀑布 総見院 山岸久祐共箱
主茶碗 伊羅保写 鶉 妙全作    表千家 代 惺斎の箱書
 替  志野  加藤右衛門作  替 赤楽  無事 佐々木虚堂作        御濃茶 猶有斎好 柏樹の昔 ぎおん辻利

煙草盆は一閑 鱗鶴溜 五代 近左作
干菓子  団扇、水、蛍  干菓子盆は象彦製

干菓子  団扇、水、蛍
薄茶器   菊形  木村表惠作
薄茶椀  鳳凰紋  西村徳泉  替 尋牛斎共箱 蛍狩  替  兎  榊原勇一
薄茶   猶有斎特別挽上 楽寿の昔 柳桜園
 建水  白南蛮内渋 榊原勇一作 蓋置  波に千鳥  真葛香斎作

茶道が縁で京都の茶家へ嫁いだ弟子から祝いで頂いたおめでたいお茶碗。

今回の茶事は、私の還暦祝いだけでには留まらず「蓮心会に携わる全ての方の節目を祝う」意味もあるとのことで「節目」をテーマに開催したいと聞いています。

「続き薄茶」でお薄茶もいただきます。
薄茶の和やかな席中。
会記とお道具を拝見します。

お祝いの席に、美礼さんと奈月さんの連吟で「小督(こごう)」の仕舞いを披露。

「小督(こごう)」の仕舞い。

能も「継続の力」です。お粗末でしたが精一杯勤めました。美礼さん、奈月さん、ありがとうございます。

生徒の連吟で仕舞いが舞える幸せ。

東川先生がお祝いに「猩々」をお謡いくださりました。水中に住む酒好きの妖精の、祝言の趣を持った曲です。東かわ先生、ありがとう御座いました。

東川先生がお祝いに「猩々」をお謡いくださりました。

皆にこれだけのお祝いをしていただき、どれだけ幸せな先生でしょう! 高野竹工さんに特注で作って頂いた竹の花入を今回の記念品としました。皆で記念写真を撮り、名残り惜しいですがお開きです。

茶事が無事に済み、露地から帰ります。
露地には綺麗な虹が。
亭主のお見送りです。「残心の礼」。

今回、今の段階で精一杯、目の前の事に集中する皆の姿と対峙して、わたしにとっても、皆さんにとっても、もの凄く大きな「節目」の茶事となりました。

準備中の水屋。
準備中の半東。

改めて茶の湯は、人間を成長させてくれる難しくも素晴らしい学びだと確信しました。
この茶事の開催にあたり、試作や準備も沢山の日時を要しましたね。

茶懐石担当の半東。
茶懐石準備。
皆で仕込み中。
ひたすら私が大好きな枝豆の薄皮向き。
寄付きの白湯を暑い時なので、檸檬水に。

 ↓ 準備中の半東さんたち。

準備中の外半東さん。
茶花のススキを庭から選んで。
初めて着た着物と袴がびっしょり!


この準備を含めた「節目」の茶事を開催した経験を、しっかりと振り返り、この経験を今後、それぞれに 生かしていってください。

竹が強くしなやかに育つよう、今後も深く広い茶の湯の世界を学んでいきましょう。

素晴らしいお祝いの茶事でした。ありがとうございました。


今後とも宜しくお願い致します。

令和五年 八月大暑
 蓮心庵  高森 宗梨

令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告 – 初座 –

2023年10月26日 Category: blog

私ごとですが、本年令和 5年(2023年)卯年、還暦を迎えます。還暦は 干支が生まれた年に戻る=生まれ直して赤ちゃんに戻る、ということから子供用の袖なしの羽織、ちゃんちゃんこを送り祝う風習ができたそう。赤は魔除けの意味もありますしね。

 私は30歳から茶道と華道を伝えはじめました。道具も何も持っていのに。師匠から教わる世界が素敵すぎて。『こんなに素晴らしい、日本文化を知らないなんて、勿体ない!』ただ、それだけの気持ちが抑えられなくて。それから30年経。

  

 思い返すと、弟子たちが初めて自分たちで「茶事」を開いて私を招待してくれたのは、3年半前。私が表千家家元から教授者最高職を頂いたお祝いの茶事でした。(「蓮心会 令和2年「教授者最高職授与祝いの初釜 」で報告しています。)

その時、亭主を勤めてくれた 亜希さんの姿勢、働きが素晴らしく、後輩たちは皆『いずれ亜希さんのような亭主になってみたい』と志し、その時 新たな目標が生まれたのでした。

それから3年半の経験を積み、「時期も熟したかな?」との私の期待と 弟子たちの気持ちが “ 啐啄同時 ” 。弟子たちから今年度、「還暦祝い茶事」を開催しましょう!。というお話に。

しかし、だれか一人で亭主を勤めるのはまだ自信がない。なので、今回は経験が長い深雪さんを中心に、美礼さん、奈月さん、定篤さんの4人のチームで取り組みたいとのこと。

企画・進行が仕事上でも得意な深雪さんが社中の結束を目的に企画書『お祝いの茶事ストーリー』を書きました。本来の茶事は、そのようなもので進行するものではありませんが、なにせ今回は、初めてのことばかり。見守ります。

道具組も自分達で考えるので、物語のイメージも出来てきます。普段の稽古日から茶室の準備を自分達だけでし、庭の手入れや、掃除、そして茶懐石の試作も何度も繰り返しています。

毎週のように庭の手入れを全員で。
小学生の頃から稽古している昌平さんは、今や立派な造園技師に!
すだれ掛けの元木と、露地へ入るくぐり戸を作り直してくれました。
茶懐石の試作や仕込みのリーダーは定篤さん。
釜の灰も整えます。

 

本番開催は、7月23日(日)。参加者が 22人となったので、11人ずつにわかれ、前日22日はリハーサルとし、全員が何かしらで茶事へ参加できるようにしました。

  

さて、いよいよ 当日。台風は上手く外れてくれ、あっぱれな快晴。本当によそ様の家に招かれた気持ちで玄関前で待ちます。

 

幹事が企画した「お祝い茶事のストーリー」とともに報告を進めていきましょう。『』内が その企画書の文章です。

『この度、高森先生の還暦のお祝と、日頃の感謝をこめて、蓮心会主催によるお祝いの茶事を開催させていただくことになりました。

一本の竹には平均六十個の節があり、竹ごとに成長点を持つそうです。竹が強く、しなやかに、そして早く成長することが出来るのも ” 節 ” があるからとも言います。暦が一巡し、高森先生が新たな一巡に入られる ” 節目 ” を尊び、お祝いするとともに、社中である私たちにとっても今回のお茶事を一つの節目に、これからも成長していく所存です。』

玄関に兼中斎筆「雨後の青山青 転青(うごのせいざんあお うたたあお)」の短冊。

『お祝いの茶事を開催させていただくことにあたり、私たちは自身の未熟さや力不足を実感しましたが、それでもこうして無事にこの日を迎えることができましたのは、先生のお世話になっている皆様のお力添えによるものです。これからも精進して参ります。』

兼中斎筆「雨後の青山青 転青」

この一行は「雨によって空気中に漂う塵も落とされ 山に生える樹木も潤いを得て、は鮮やかに青さが冴えている。」という、目の前のありのままの自然の姿を “ あぁ、ありのままだなぁ ” と素直に感じる心と同時に、

「目の前の塵が洗い流されて迷いがなくなり、端々しい生気を放っている。厳しい酒豪の後、自身がそれ以前と変わっている。」という、悟りの境涯も表しているそうです。

この会が始まるまで、皆が無心に 目の前のことに対峙している心持ちと、この会が無事に終わった後の皆さんの悟りの境涯を予感しているようで、とても楽しみになりました。

玄関から「寄り付き」へ。

玄関から寄り付きへ。

寄付きの床の間に 即中斎筆の扇面、「南山寿」。

寄付きの扇面「南山寿」、即中斎筆。

『高森先生の還暦をお祝い申し上げます。先生がご健康で末長くご活躍されますように。また これからも先生にたくさんの幸せが訪れますよう 社中一同お祈り申し上げます。』

「南山」は、中国再安の西南に悠々とそびえる終南山。この山は全山堅固な岩石からなるゆえ「不壊」を意味します。「寿」も「南山」も めでたさを表す縁語に繋がるため、正月などの祝い、特に長寿の祝いの席で好まれます。

「月の恒ゆみはりの如く、日の升(のぼ)るが如く、南山の寿(じゅ)の如く、かけず崩れず。松柏の茂(しげる)が如く、爾(なんじ)に承(う)くるくる或(あ)らざる無し」(「事文類聚」より)

この扇面から祝風が吹き下ろしているよう。期待に胸が膨らみます。

床の間に、掛物と釜、茶杓、茶碗二種の「箱書き」。
莨盆 竹手付 火入 青楽木瓜形
煙草盆の火入れも頑張って練習していましたね。水団扇があって助かりました。
京都に戻られた敦子さんからいただいた「蘇民将来子孫也」の御守り。
玄関の厄除けの御守り粽(ちまき)と共に毎年、とても有り難く飾っています。

寄付で白湯代わりに頂いた冷たい檸檬水で爽やかに喉を潤した後、半東から「露地へ」との案内があり、露地へは昌平さんが竹を割くことから作ってくれた力作! の潜り戸をくぐり移ります。

昌平さんが丹精込めて作ってくれた潜り戸。とても素敵!

綺麗に整えられた露地、苔。

今年の酷暑で日向の苔は焼けていますが、素晴らしく手入れが行き届いています。

これは 一朝一夕にできることではないですね。

昨夜梅雨明け宣言され、今日は “大暑”。とても暑い最中でしたが、今さっき雨が降ったのかと見まがうほどに水打ちされた木や草を抜け、時折り吹く風が 私たちの心を優しく清めてくれます。

露地の腰掛けで、亭主の迎え付けを待ちます。

亭主が蹲踞の水をあらため、迎え付けてくださいます。

亭主の迎え付け。前日のリハーサル。
亭主の迎え付け。本番当日。

『今回のお茶事は、先生のおめでたい節目に開催されるものです。また、社中にとってもひとつの成長の節目でもあります。そのため、次に目指す先を見定める良い機会とも言えます。

普段は先のことや雑念に振り回されがちですが、こういった「節目」のタイミングこそ、今一度、大事なことに向き合うことができているかどうかを自分に問いかけていきたいと思います。今後も引き続き、ご指導を賜りたく、宜しくお願い致します。』

新たな水にあらためられた蹲踞で口と手を清めます。
露地の腰掛けには「煙草盆」と、円座が用意されています。
莨盆 一閑 鱗透溜 五代 近左作  火入 祥瑞  莨入 檀紙
煙管 如心斎好 二代 清五郎

ご亭主の深雪さんに迎えられ、初座へ関入りすると、「一箭中紅心 (いっせん こうしんにあたる) 」のお掛けもの。
表千家九代 了々斎宗匠が書かれた一行物で、寄付きに即中斎の箱書がありましたね。

「一箭中紅心」九代 了々斎宗匠筆、即中斎の箱書。

「箭」は矢。「一矢でど真ん中を射抜け。当たらないまでもど真ん中を狙え。」「一点一心に集中する。」

聞けば当たり前のことのようだけと、これがなかなか、簡単に出来ることではあません。「瞬間、ことの本質に対峙する。」「自分がやるべきことからやれているか?」「目の前のことに、集中する!」

今年の初釜、この掛物の言葉に触れた時、皆の中にまるで電気が走るように何かが生まれた瞬間があったのではないでしょうか?
この掛物から、今日という日が始まったことを思い、感無量の気持ちで改めて拝見しました。
皆のなかにそれぞれの形で確実に茶道で培われた意識が育っている。だからこそ、この掛物しかないと感じた。その声が聞こえてきました。
この言葉とともに一日を成功させようと一心になっている皆の姿を頼もしく、そして心から嬉しく感じました。

亭主の深雪さんとここで初めてご挨拶。お互い感無量の心です。
炭点前の室礼。

たっぷりとした松竹文様の真成形の釜、十二代 加藤忠三郎作。寄付に宗心宗匠の箱書きも寄付きにありました。
拝見すると灰も綺麗に整えられていました。

濡れたような潤いのある春慶塗の丸卓、竹で出来た水指は繊細で細かな漣(さざなみ)の模様が施され、まさに高野竹工の伝説の名人職人、不虔斎(増田宗陵)さんの技。水辺にさざ波が広がる様子が目に浮かびます。
 同じく高野竹工さんの職人、窮斎作が利休ゆかりの待庵古材で造られた風炉先「天王山写し」。妙喜庵の士芳老師の花押が漆で有ります。
岩清水八幡、男山から天王山を眺めたときの景色を妙喜庵の写したものだそうです。「天王山」大山崎の山で、「天下分け目の天王山」と比喩される山崎合戦の舞台。秀吉は天王山に城を築き、利休に二畳の茶室「待庵」を作らせました。その茶室が後に妙喜庵に委託されています。
天王山北西には、細川三斎と古田織部が境に蟄居する利休を見送った場所もあります。
戦国時代から安土桃山時代、生死をかけて生き抜いた武士たちの息遣いが感じられる妙喜庵の古材で天王山を写した風炉先は、目の前の茶室全体を山々に囲まれた大自然に一気にワープさせてくれました。
さて、今日の一日は「天下分け目の天王山」… となるか?と感じてしまいました。

亭主の炭点前。

利休好みの油竹網代の炭斗。火箸は竹の節。釜敷は木村表惠作、こより。
釜に清らからな水が足されるその音は、朝茶ならではの瑞々しさで、外の暑さをすっかり忘れさせてくます。

亭主の炭点前を見守る11人の客、一体感。

香合 小林星山さん作「翡翠(かわせみ)」。初夏を知らせる渡り鳥。

香合 小林星山さん作 「翡翠(かわせみ)」。

香合を拝見させていただき、亭主にお尋ねします。

香合を拝見し、お尋ねをする。

実は道具組の相談があった時、この香合は普段使いにしていたものだったので少し不思議に思って、道具組みの担当 奈月さんに『香合はもっと値打ちのあるものにしては?』と聞いてみました。すると、『幸福な蒼い鳥は幸せを運んでくれる。なので、今回先生へのお祝いに是非、と想い選びました。』とのこと。

一つひとつの道具に皆の”想い“ が込められて選ばれている。これこそが茶事の醍醐味。
ほの暗い室内でこそ、生き生きと輝く金と翠の輝きは、皆の想いの深いさなのだと感じ、あらためて感動しました。

幸せ気分に慕っていると、鼻腔をくすぐるお出汁の良い香り!茶懐石のはじまりです。

半東さんたちが、手際良くお膳を運んでくださいます。
めいめいに折敷の膳が出されます。(↑写真は前日リハーサル)

お献立は、新生姜と玉蜀黍ご飯、稚鮎、和歌山雑賀崎の海老、冬瓜翡翠煮、花蓮根、黄ズッキーニ・南瓜・隠元胡麻和え、巻玉子、ミニトマト出汁付、青楓麩、守口漬・瓜・水茄子の漬物。

銘々皿に盛り合わせて。いろどりも素晴らしい。

茶懐石のメイン、煮物椀は「枝豆豆腐」、柚子、白木耳、潤菜。

煮物椀「枝豆豆腐」。私の一番好物ばかりです。
全てに心がこもったお献立

すべてに心と身体が喜ぶご馳走。この時間、永遠に続かないかな。と思っていると、小吸い物が運ばれてきます。梨と茗荷が刻んで浮かんでいます。シャリシャリと食感がさわやか。

小吸い物でお口をさっぱりと洗います。

 そして、茶懐石のハイライト。亭主から「八寸」で一献。

 焼き加減、塩加減とも絶妙な美味しさ! 和歌山の鱧の白焼と、アスパラガスの味噌漬けの「八寸」。

「八寸」は、鱧の白焼と アスパラガスの味噌漬け。
「海の幸、山の幸」八寸は茶懐石のハイライト。
一人ひとり、亭主とのやりとり。
「どうぞ、お取りあげを」
「こんなに綺麗に盛り付けてあるので、どうぞ取り分けてくださいませ。」
そして、一献。
中正客から、美玲さんが。

「千鳥の盃」を楽しみ 茶懐石を楽しんだ最後に、縁高で主菓子をいただきます。

 とても涼しげな「水牡丹」の主菓子。優しくて上品。

「水牡丹」の主菓子。お菓子もとても重要なテーマ。

 『お菓子を召し上がりましたら、露地へ。』との案内に、『お鳴り物でお知らせください。』と、主客の挨拶。初座の名残の拝見後、ふたたび露地へ。

 と… 。

かなり長くなりすぎてしまいましたが、ここまでが茶事の初座です。

つづきは後日、「後座〜編」で報告させていただきます。お楽しみに。

 

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2023年 7月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月15日 Category: blog

(池坊いけばな「生花」の学び、去年の報告も一緒にさせていただいているので間際らしくてすみません。月の時系列で投稿しますので、ご理解ください💦)

今年令和5年の池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 2年目 2期 、7月3〜7日の報告です。

よく皆さんに云われるのです。『年に何度も京都へ行くなんて優雅ね〜、羨ましい〜、沢山名所を知っているのでしょう?』と。

現実は~~、皆さんが想像してはるものには~~ 全く当てはまりませんのや~~ (京都弁)。 毎朝 6時半には起き、8時半に開門する六角堂の学院へ入り、授業の準備。 9時半から12時まで講義(10分の休憩あり)。昼食の後は 18時まで実技 (きっかり15時に15分のおやつの時間あり)。毎日がついていくのに必死な講義と、目の前の今日中に生けるべき花のことに必死で 一日が あっという間! 18時過ぎ、ご挨拶で解散すると毎日クッタクタ。勿論、観光する場所は全て閉まっているし、行くエネルギーなんて残っていない。お腹ペコペコ、早く帰りたい、明日のために寝たい。そんな五日間なのです。

 しかし、花だけにむきあい、華道のことだけに「缶詰」状態で学べる。こんな幸せな時間があるだろうか。海外旅行より贅沢で濃密な時間を堪能できる深〜い期間。

ま、しかし 欲張りでタフな身体も持つ私としては やはり、せっかく京都へ行くのだから、茶道の教えを感じられるようなひと時、また、東京では味わえない「お休み」を愉しめたら…との思いで「どこからしらへ」と、いつもアンテナを張っている。スミマセン、貪欲なので。

 ことのほか猛暑が厳しかった今夏。そんな日々のなか、「京都で 蓮を じっくり観たい」そんな希望が私の胸にうずいていました。

「水無月」のお菓子を食べて、名越の祓えの行事を済ませた7月初旬、祇園祭の準備が進み出した京都へ一日早入り。

久しぶりに花園駅近くの「宝金剛寺」五位山、ここの庭園は素晴らしい。「天龍寺」も好きなお寺ですがいつも混んでいるのでサラサラと素敵な庭を堪能しながら抜け、竹林側へ出てその裏山の竹林を越えて、本命の小倉池へ。

「宝金剛寺」の蓮
小倉池の蓮

ここはまだ未開の地なのか?蓮のシーズン前とはいえ、周りにはほぼ誰もいない。

小倉池のふもとに鎮座する「御髪神社」側から。空気が澄んでいる。
今でこそ、知らない人はいない 天龍寺の裏道 。

こうして 現実に生きている植物を実際に見て廻ることは、とても勉強になる。古人が『花は脚で生けよ』と言った意味がよく分かる。

実際に稽古で生ける作品と、現実に目の前に咲いている自然界の姿とは全然違うのだけれども、その ” 型 ” 生まれるべくして生まれ、その心が今に伝えつづけられているその “ 想い” が理解できる気がするの。

  観光客で混む前の午前中早々に、小倉池の蓮に癒され滞在先へ帰宅。さあ、明日からの始まる授業に備えます。

 

  2年目 2期 、7月3日 初日は「蓮」。私がこの世で一番好きな花。

蓮の花や蕾、朽ちた葉や花にも深い意味がある。それがこの花の特徴で池坊では「命」「時間」を表現する生花です。

水盤に銅筒に配り。写真を撮るときに真の葉がよってしまいました・・

現在を表現する「開葉」「開花」。

未来を表現する「開葉」「開花」「莟」。

過去を表現する「朽ち葉」「蓮肉(れんにく)」。

 水の深さを測る役、偵察隊の「浮き葉」。

『 一瓶調えたる姿は さとり の 因(おこり)なり 』

一昔(25年位?)前、京都の夏期講習で蓮の生花・立花を学んだ記録を見つけたので投稿します。↓この時は当然 剣山。今は、当然 配り。

京都の夏期講習で蓮の生花。一番大きな剣山を購入。
京都の夏期講習で「蓮の立花」前置きは河骨。

蓮の花、関東はたいてい茶碗蓮と呼ばれる小ぶりな花。関西の蓮は大きさが まるで違うので迫力。この花を生けていると誰もが幸せで平和な気持ちになります。

 2日目は「株分け」。今回は、太囲と燕子花で「魚道生け」。

魚道生け

「株分け」は根本の「躰」を分ける手法です。

砂鉢に銅輪を置き、花配りで生けます。

「魚道生け」とは、両方の株が ” 水辺で生きる植物 ” 。

「水陸生け」とは、” 陸地で生きるもの” と “水辺で生きるもの” を生け合わせる表現。← 陸ものと水物は一つの株になれない由。

(「水陸生け」は、2022年 2期 3日目で「夏はぜと燕子花」で投稿しています。)

「陸もの」を二種で株を分けて表現することはしません。一種でもね。←「一つの命」なので。

三種生けに限り、副が別れることがあります。

新風体も同じ剣山で株分けることが、今、流行していますね。

  

 三日目は、燕子花の二重生け。   

竹の二重切り花入に、二重生け

上の重には「懸崖の花」、下の重には「立ち登る姿」を表現します。

  

『ベストを常に出すのは難しい… 今ある実力の一番の解答を出す。

専永宗匠の父、専威宗匠が、

『いけばなの目的は、“ 人生の陶冶(とうや) ” にあり』と伝えたそうです。

「陶冶」とは、焼き物の粘土をねるなどの工程でのことす。

人格を形成することと同じ。

人生は、どう悟りに至るよう目指すか。悟りを得られる道、

『人格の完成を目指している』

  

「成長しよう」という気持ちが、若さであり、10代でも諦めたら老人。

脳の成長はいつまでもつづきます。体力は平行しませんが…。

素晴らしい教えです。

  

四日目は、「月」の花器に燕子花。

月に燕子花。

上空に浮かぶ月を象徴する花器なので、軽やかに生けます。

「反ること」が若さの表現。とお聞きましたが、なるほど確かに。踊芸の世界での表現も同じですね。

  

最終日は、「交ぜ生け」。「交ぜ生け」は秋草に限り許される表現。

情景描写として、主従の分けなく 一瓶をまとめる、夏の水辺の情景描写として生まれた手法、「行」の花行です。

秋の野にありそうな植物たち

・芒と、女郎花、桔梗、菊

・女郎花と、撫子、桔梗

・桔梗と、撫子

・刈萱と、撫子  など。

夏に活用する水物では、

・太囲と、燕子花、河骨

・蒲と燕子花

・葦と、燕子花   など。

 実技は、「芒と、女郎花」。

「交ぜ生け」芒と、女郎花を御玄猪へ。

花かがみより「太囲と、燕子花」↓ (反転しています)

「交ぜ生け」太囲と、燕子花
柴田教授の作品。

 以上。

最終日に蜻蛉返りで、次の日は東京お茶の水の池坊会館で「巡回講座」です。

  

さて、これで7 月までの報告ができました。(去年の10月のはまだですが)

 

ようやく、7月23日に弟子たちが私の “還暦のお祝い” に「茶事」を開いてくれた報告ができます。

 お楽しみに。

  

  

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2022年 4月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月12日 Category: blog

今年2023年の「生花」の学びを投稿したので、昨年2022年の石渡雅史先生の一年目、一期の報告を。(なかなか進まないので サクッとね)

2022年 4月25日〜29日。

『 “美しい” とは なにか… 』から始まった池坊生花研究室。皆さんならなんと答えますか?

「健気にイキイキと生きる命の姿」「海に沈む夕焼け」から「いま高騰中の金」など、24通りの答え。

 <美しさを目指すのは人間だけ。>

  

この教室では、3種生けと新風体以外は剣山を使わない!さあ、楽しみな三年間のスタートです。

 初日は基本中の基本、「川柳と小菊」。配りの留め方も丁寧にご指導下さり嬉しいです。

御玄猪に川柳と小菊。

 作品録もしっかり書いて提出です。

毎回提出する作品録。

  

 二日目は華道の歴史の講義の後に「山梨と都忘れ」の二種生け。

いけばなの哲学は、1542年28世 専応口伝がルーツにあります。30世 専栄の花伝書に『出生(しゅっしょう)の姿 肝要也(なり)』とあります。その後、広めていくために だんだんと生花は形を持っていきます。

 「命の姿」が大切なのです!

花配りで生けるのは なかなかに大変ではあります。が、『諦めず、誤魔化さず、真摯に花と向きあい、腕をつけていこう!』と改めて心に決めました。

御玄猪に「山梨と都忘れ」。

 

三日目は “春”の燕子花。杜若とも書きます。

燕子花は池坊でとても大切にしているけれど「伝花」ではありません。

 季節表現の最たるもの。春のうぶな姿を生けました。初めて「うぶ葉」を真に生けました。↓ 真の前葉を隠方に生かすのも初めて。教室の皆さんの色々な生け方を見ることが出来るのも嬉しいです。ちゃんと段階を踏んで理解していくことが大切!

竹の寸胴に。この後、「舟」の花器にも生けてみました。

  

四日目は「花菖蒲」。

「いずれ菖蒲(あやめ)か燕子花」。花道を学んでいないと違いは分かりにくいですよね。この季節、端午の節句限定。

『子供は親を超えて成長して欲しい』という先人の想いがこうした “型” として伝えられていることに毎年感動します。

竹の寸胴へ。→「真」の花形です。

 そう… ここはいけばな発祥の地。全国から多くの方が学びに来ています。

生花の型は時代で変化していることも実感しました。

  

最終日 5日目は「三種生け」か「新風体」。自由に選べます。

池坊の三種生けは、自由と多様を求める心。” 挑戦する心理から発生した” と学びました。三種生けの可能性にワクワク。↓

リョウブ・レッドウイロー・銀葉

↑ リョウブは、古くからある植物ですが、その枝ぶりが素敵だったので三種生けで生かすことにに挑戦!

   

  

今回は一日早入りして、京都在住のお友達とドライブ。京都の海沿いを走り、伊根の船宿へ。昔々、ドスガトスにアルバイトに来ていた成蹊大の学生がここの出身。ず〜っと来たかったので思わず電話しちゃった。ネギぼーず みたいな髪型だったからあだ名は「ねぎ」。イチゴ農家の息子と恋愛し嫁ぎ、自分たちで無農薬の野菜を一所懸命作ってた。もう立派なお母さん、夏子。懐かしかったなぁ~~

左上の1枚が「伊根」。「ホリデイホーム」の素敵なカフェで一服♡

そして、お友達が日本で一番好きだという久美浜にある、とてつもなく素敵なホリデイホームへ。あらためて。日本って、素晴らしく豊かな自然の宝庫の島ですね!

  

  

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2023年 4月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月11日 Category: blog

2023年(令和5年) 4月10月10日(月)〜14日(金) 池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 二年度一期の報告です。

 前回のブログで書いたように、4月8日(土) 表千家 北山会館「春のおとずれ」展を堪能した後、その表千家北山会館が主催する『京都府立植物園の戸部博園長と一緒にこの植物園を巡るツアー』に参加。戸部博園長直々に植物園にある草・木・花の説明を受けながら巡り、先生から「植物園である意味」と「桜への熱い想い」をたっぷりと堪能させて頂きました。

京都府立植物園の植物たち。
京都府立植物園の山野草たち。私は、こうゆう花が一番好きです。

元来、「染井吉野」より「山桜」の方が好きだった私。先生から『染井吉野の桜が終わってからが本当の桜の季節なのです!』との言葉に同感するととともに、「里桜」の種類の多さと、それぞれの特徴を教えていただき、とても有意義で豊かな時間でした。

京都府立植物園の里桜たち。

 

 次の9日(日) は、京都在住の親友と『天気が良くて気持ちが良いから 、山へ歩きに行こうか』との話になり、 山科駅から毘沙門堂、そして南禅寺まで気持ちの良い山歩き。 (山歩き用の靴を持って来てなくて革靴だったのですが。) 散々、歩いて『汗を洗い流したいよねぇ』と、五条の 昔のまま薪でお湯を沸かしている銭湯、そして、その近所の美味しいクラフトビール屋さんと。。「いやぁ、遊んだなぁ」と、携帯の万歩計を見ると 3万歩弱の数字! あれ?明日からが「本番」のワタシなのですが・・・まあ、私はこのくらいは普段の生活とあまり変わらないので大丈夫。笑 帰宅後がが〜と夕食作る私に友人は流石に呆れていましたが。。。

友人が撮影。緑が眩しいくらいにキラキラしていました。

 

はい。さて、本題。

二年度一期の初日は「牡丹」。初伝七種傳の一つです。

「花かがみ」牡丹一種の絵図。

牡丹は、初伝「七種傳」のひとつ。

牡丹は花が立派で “花王” として賞美されます。牡丹籠に「行」の花形(かぎょう)で生けますが、花の品格から「井筒配り」を用いて「真」として扱います。 

牡丹の枯れた枝を真に蕾一輪を高く、開花一輪を低く使う。

水揚げが難しく溜めも効かないので、出会った花の自然な姿を生かします。(←これが難しい… 「池坊生花の学び方」の本に書いてありました。 ↓

『自然観を念頭に置き、花に尋ねて処理すべきです。この花に尋ねて花からの返事を待つにはより多くの訓練が必要でしょう。』 

はい。素晴らしい教え通り 花に尋ねた私の作品です。↓(汗) 

牡丹籠に、牡丹。

牡丹は、竹で井桁(いげた)形に「井筒配り」に留めます。この竹も自分たちで削ります。

朝、学校へ行く道に季節の花を置いている素敵なお家があるのでいつも楽しみにしているのですが、丁度勉強する日の朝に こんなに立派な牡丹の鉢が!牡丹は、一年に1センチと言われる位成長するのに時間がかかると聞きました。ここまで育てるのに何十年かかったのでしょう?立派に咲いていました。

いつも季節の花をさりげなく飾っているお宅の玄関。

 

二日目は「桃」の一種を「御玄猪(おげんちょ)」の花器へ。

桃は古くに中国から移入され「古事記」「万葉集」にもみられます。古くから邪気を祓い悪霊の侵入を防ぐとされ、その霊力に祈る風習がありました。

現在は雛祭りの節句に生けられますが 旧暦なので新暦だと4月初めに咲きます。

枝の出方にまろやかな風情があるので、その特徴を生かして優しい雰囲気に整えます。

桃の一種を御玄猪へ。

  

3日目は、「初伝」で伝えられる伝花『五ヶ条』の一つ「桜」。今回の花材は「山桜」。私が一番好きな品種の桜です。

この伝花は「一本の木の出生を生ける」のではなく、吉野の山のような「景観美」を表現するので、大花瓶か手のない大籠に大ぶりに賑やかに生けます。

山の桜は下の方から上の方へと咲いてゆくので、中段・下段に開花、真には蕾がちの枝を使います。苔木を一本(または二本)いけ交えます。そして緑の松一本を下段に交えて花の色を更に惹き立たせる。3メートル離れて観るのが正しい世界。もの凄いスケールでしょ?

ダイナミック!
↑私の作品。伝花「桜」を牡丹籠へ。木(ぼく)は直径4~5センチあります!

立花を凌ぐスケール感!以前行って感動した、吉野の山の風景を思い出します。

  

4日目は「株分け(かぶわけ)」。<特殊な情景を象徴するもの>です。

左右に分けて横の広がりをする夏の表現です。先人の日を表現する美意識の高さに、毎回舌を巻きます。

本勝手では、向かって左側に “山の景色”「男株(おかぶ)」、右側に “水辺の風景”「女株(めかぶ)」を生けます。男株の水際に石を置き、遠くの景色であることを表現します。

水陸生けを銅器水盤へ。「胴筒」に配りで生けます。

↑ 今回は男株に「銀葉やまなし」女株は水中に生育する「燕子花」を生けました。 なんと…↓

男株の銀葉やまなし。こ〜んなに、高い枝から枝どりしま〜す。

   

最終日は新風体。

八重の牡丹桜の枝ぶりが なんとも可愛らし買ったので、山や公園で観た景色を思い出し、最初は銀葉やまなしと取り合わせましたが、先生から『好きなもの同士を合わせると、どっちつかずになるよ。』とのアドバイスがあり、銀葉やまなしを抜いて芭蕉と取り合わせてみたところ、目が覚めるほど桜がイキイキとしました。↓

新風体。牡丹桜・芭蕉・松

 4月14日(金)、5日間の学校が無事に終わり、飛んで帰ります。15日(土)田無の華道稽古後、ダッシュで精進料理の準備などをし、16日(日)は「利休忌」。本来二日に分けて開催しますが、色々ある私のために、社中一同がこの日に集まってくれました!感謝。

田無茶道教室で「利休忌」。

利休坐像の掛物を掛け、茶花は銅器に松。お菓子はおぼろ饅頭。利休さまの徳を偲んで供茶、御伽(おとぎ)=精進で一献。

今年は「炭について」の話もしました。

  

  

ゆっくりしたいと、 4月末に奄美大島へ三泊四日。G.W.は休まず働き、 5月G.W.明けには伊豆下田へ二泊三日の旅行。ちっとも「ゆっくり」なんか出来ない私。 笑。

二期は7月上旬。三期はこれを書いている10月下旬なので、なんとか三期が始まる前に報告を仕上げたいと思いま〜す。(茶事の報告もあるのに できるのか?)

では、明日は二回目の「天然忌」なので。ちょこちょこ校正しながら更新していきます。

  

  

 

日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもF.B.とInstagramにアップしています。

https://www.facebook.com/ritsuko.takamori.7

https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/

よかったらご覧ください。

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2023年 3月東京連合花展 報告

2023年9月22日 Category: blog

さあ、京都「春のいけばな展」の後期をなんとか観、上野の東京都美術館で開催されている「東京連合華展」へ、飛んで帰りました。

上野の連合華展は、ほぼ毎年 3月21日(火)〜30日(木) の10日間。京都の華展は24日〜27日でしたので、もろに被ってしまったのです。

(華展の報告は、そのころのInstagramとF.B.にライブで投稿しています。そちらでは、勝手に他の方の作品も掲載させていただいておりますが、このblogでは基本的に自分と社中などにしています。)

 前回の報告で記載した、1次に出瓶した八幡 純平さんの作品から。この作品の仕上げを見届けて、京都へ行ったのでした。↓のびやかで素敵な作品でしょう?

八幡 純平さんの作品。生花 3種生け。
宿根スイトピー・雪柳・オクラレウカ

3次の 25・26日。私は京都華展で全く携われなかったのですが、頼もしくも遠藤和歌子さんは一人でこの作品を仕上げました。↓勿論全て、彼女のアイディア。

遠藤和歌子さんの自由花。

彼女の自由花は、自分の好きな世界のイメージを一貫して持っています。それがとても素敵なので、より深く、完成度を積んでいくように稽古を重ねています。

 

そして 5次 29・30日は、上野の連合会華展デビューの山田美玲さんと、私。

山田美礼さんは、小品自由花。↓ 彼女の作品の前にはいつも人だかり!

山田美礼さんの小品自由花。

今回は、北欧フィンランドの建築家、アルバ アアルトのフラワーベースを使って製作したいとの希望。剣山は使わず、銀やブルーグリーンのワイヤーで抛げ入れのように花を挿して制作しました。花を置く台も自分でシルバーの紙を敷いて。 花の陰が照明で綺麗に演出され、「森の中の湖」のイメージ通り 表現されていました。

彼女の華展デビューは、昨年秋、東京清祥会 青年部の華展でした。その時の彼女の作品の印象は、「さすが一級建築士! グッゲンハイムの建築みたい〜」。

東京清祥会 青年部華展、山田美礼さんの作品

「花を生けることと、建築はとても似ているところがある」と気がついた貴女の これからの華道人生は、薔薇色よ。

東京清祥会 青年部の華展では、もう一人、木村奈月さんも華展デビュー!

東京清祥会 青年部華展、木村奈月さんの作品

↑ 伸びのびと空間をたっぷりともった爽やかな自由花です。

 

あら。去年の上野華展の写真が出てきました。昨年も報告出来ていなかったので、ここで一瞬 脱線して掲載させてください。↓

2022年、樋口 亜季さんの新風体生花↓ スケールが大きくて、見事!

木瓜、竹シャガ、紫蘭

そして、私の2022年。特別席。「紫雲」逆勝手 の指定でした。 ↓

「紫雲」の花器に、木瓜の一種、逆勝手。

 ありがとうございます。

戻りまして今年の上野の私の作品。近年しばらく上記のように↑「生花」の担当が多かったですが、久しぶりに「立花 新風体」が当たりました。

私の特別席作品、立花 新風体。

勿論、この華展のための試作は積んできましたが、花材は、生き物、旬のもの。自分の思い通りには決してならないものなのです。我々の常の稽古は、どんな事態にも『臨機応変』に自由に花を生けせることが出来るようになるため。

『臨に応じて、機に変割れる』ための稽古。

花と出会った時の感覚はまさに「JAZ」。花たちと私のジャズセッション。特に「新風体」は。

ありがとう。その日、出会った花たち。

雪柳・山吹・ストレチア・アップライト・コプロスマ・オクラレウカ・ドラセナ・ホワイトスター・シャレ板。

 そして会場へ、いらしてくださった方々、ありがとうございました!

  

スミマセン💦もう一つだけ、脱線させてください。

このブログを書くために写真を探していたら数年前の私の自由花の写真が。自由花の作品は掲載したことがないので。 日本橋三越で開催された東京華展。↓ 何年前だったかなぁ・・・

自由花。

↑「瀧から落ちる水飛沫」をイメージしたくて、棒のアクリルを何色かのブルー系に染めて、熱をあてながら曲げて苔木とあわせました。懐かしいです。

実はわたし、稽古を初めてしばらくは 自由花が専門?と思われていた位、自由花の出瓶が多かったのです。池坊の自由花は、幅が広くてデザイナー時代の脳が刺激されるので好きです。

  

(二度の脱線から戻ります)

 3月一杯の華展が無事に終了し、4月4日、ようやく小金井公園の山桜を観に行けました。仕事の後、夜中でしたが。凄い大木でしょう?

小金井公園の山桜。

 毎年、見事な花と香りを楽しませて。とても癒されます。

 

 

人生・・・ 思いもよらぬこと、様々なことが起こります。

しかし、たとえどんなことが起こったとしても、自然界の営みは休むことはなく、季節が巡る。そしてその度、それぞれの花を咲かせます。

逞ましく生きる草木の命に見習って。私も、与えられたこの命を大切に生かそうと思います。

 ↓青年部で開催した筑波山での「花供養」の写真です。

全員で花を供えました。
朝、土砂降りだったのに、午後には晴天に。
筑波山山頂に住む大木にご挨拶しました。

   

次は 4月10日から京都中央研修学院 生花研究室 二年目一期が始まります。

さあ、命みなぎる春を味わい尽くします!

 

  

日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもF.B.とInstagramにアップしています。

https://www.facebook.com/ritsuko.takamori.7

https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/

よかったらご覧ください。

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2023年 3月京都「春の華展」報告

2023年9月15日 Category: blog

令和5年 京都池坊中央研修学院の学院祭が 3月24日(金)〜27日(月)に開催されました。石渡雅史生花教室は去年から開講しましたので、雅史先生の元で、一年間学んできた成果を発表する初めての場です。先生、おめでとうございます!

 ↓石渡雅史生花教室の指針。

先生がデザインされた教室の舞台。古典的な作品は、まるで和室の道場席のような落ち着いた雰囲気の室礼で、とても素敵です!↓

一種生け、二種生け。伝花や別伝など、伝統的な作品がバランスよく配置されています。

三種生けや、新風体のコーナーは、明るくモダンな室礼。↓

三種生けや、新風体がゆったりと。

 

先ずは、石渡雅史先生の作品。↓

連翹(レンギョウ)・芭蕉・とても小さくて可愛い蘭 (多分→)ミルトニア。

↓先生の作品に先生のお言葉。

『草木との対話は、花をいけるものに与えられた かけがえのない時間』

はい。時に、生みの苦しみにもがくことも ありますが (笑)・・・それも含めて「花との対話」。本当に「かけがえのない時間」なのです。

そして、私の作品。↓

三種生け

前回のブログで報告した通り、花はなまもの。注文した花材があるとは限りません。又、隣付近の方との花の取り合わせも気をつけなければなりません。前回、レンギョウで試作をしていましたが、お隣の雅史先生の作品が連翹をメインに生けていらしたので、私は「木瓜(ボケ)」で真を上段流枝に。そして副・躰も木瓜で正風体の規律を作り、ドラセナの赤い葉とかすみ草をあしらいに生かしました。自分でも「私らしい作品」だなぁ と感じる作品となりました。

「古典的ななかに、新しい出会い。」そのテーマを感じていただけたら幸いです。

 

毎回なにより楽しみにしているのが、専永宗匠の道場席の作品。↓

専永宗匠の道場席の作品、新風体立花。

専永宗匠の作品の前に座ると、不思議に肩の力が抜けて、そして徐々に心が元気になる素敵なエネルギーを感じることができます。正座して 何時間でもこの作品の前にいられます。(と云っても、ここはとても混んでいるので現実的には不可能なのですが。笑 )

この春に毎年開催される華展は、京都・六角堂にある池坊中央研修学院の学園祭。各クラスごとの一年間の成果を発表する華展です。前期、後期と二日間づつですが、生け込みなどの準備があるので早めに上京します。

以前この学院祭は四月に開催されていましたが、桜が美しい京都なので当然物凄く混み、毎年宿が取りにくくなり、又、四月は新年度が始まり一期の授業と重なってしまう事も多いので、最近は三月に繰り上がりました。

いたしかたないことなのですが、毎年三月中旬から約半月間、池坊東京都連合会の華展が上野の東京都美術館で開催されます。

なので毎年三月は、華展月間 (汗) 。

そう、この華展のために上京する21日、生徒のひとりが上野の華展出瓶の日!練習を重ねた甲斐があり、とても素敵な三種生けが一人で生けられていました。その報告は次回に。

 

今回京都の華展の後、 東京の華展へトンボ帰りするのがわかっていたので、21日上野で生徒の手直しを終え、早めに上京できたので京都府立植物園へ。

この植物園は私の癒しの場。山歩きをした気分になる小道があるのです。日陰ツツジや貝母、一人静、土佐水木、桜の大木!を堪能し、楽しみを先取りしました。

来月の4月8日に、表千家同門会の企画で戸部博園長と一緒にこの植物園を巡るツアーに参加します。それも、雅史先生の2年目の一期が始まる前のお楽しみの先取り計画。何故ならその一期の一週間の授業が終わったら、金曜にはトンボ帰りして土曜は家の華道稽古と、日曜の「利休忌」の精進料理の出汁をとったりと準備に大忙しになることがわかっていたので。

学びも遊びも、仕事も、と、超欲張りな私。私の生徒たちは皆わかってくれているので助かります。

人生、切り替えが大切!

 以上。

 

上記の情報は、今年の3月の F.B.とInstagramにアップしています。

https://www.facebook.com/ritsuko.takamori.7

https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/

Instagramは、sado_kado_ritsuko

Facebookは、高森 梨津子 で検索してみてください。

↑自分で上記検索すると、Facebookはなんか違うページに行ってしまうようなので。要確認事項ですね。(どなたか教えてください!)

 

    

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

2023年 1月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年9月12日 Category: blog

 京都中央研修学院、総合特別科 石渡雅史先生の研究室の学びです。年に4回、1週間、池坊生花を徹底して深く学びます。

 私は10年前の 平成23〜25(2011〜2013)年の3年間、総合特別科 松永先生の古典立花の研究室に通いました。本当に素晴らしい学びでした。その時もこのブログに学んだことを書きたいと願っていましたが、忙しさに流されて叶いませんでした。でも、書き残しておきたい思いはどうしても諦めきれない。こうした池坊の深い学びを、私だけのなかに留めるのは とても勿体ないとこと思うので、今年から自分の復習もかねて、このブログに書くことにします。時間はかかりますし時差はありますが、お許しください。

まず一年度の四期、2023年 1月11日(水)〜15日(日) の五日間から。

 初日は「松竹梅(しょうちくばい)」。

初傳(初伝)で伝えられる『生花五箇条』のひとつ。

日本人が古くから大好きな「松竹梅」。その由来は中国の「歳寒三友」から。

「歳寒三友」とは、中国の宋代あたりから、文人の理想「清廉潔白・節操」を、冬を代表する植物を「三」というめでたい数字にセットにして表現する画題。

日本でも松や竹は古来から自生していて、その生命力のたくましさが崇敬の念を集めてきました。

平安末期には縁起物として松と竹を組み合わせた門松が、新年の門前を飾っていました。常緑の松は、長寿の象徴。成長力旺盛の竹は、繁栄の意味。奈良時代に憧れの中国大陸から日本にやってきた梅は、春一番に美しく芳しい花を咲かせる冬の希望、風物詩、風雅の象徴です。

松・竹・梅、いずれも枝ぶりに応じて真 添 に生けることができます。竹は池坊では「たれもの」に分類されるので、根締めに使う時は熊笹を用います。

 私は「竹の真」を生けました ↓ 竹の高さは2メートル以上はあり、付き葉を生かすので「どこでどう切るか?」を とても考えます。梅が副、躰が松です。

「松竹梅」を御玄猪に「井筒」で生けました。

「井筒(いづつ)」とは、竹を切って「井」の字型に植物を挟んで生ける手法。主にこの松竹梅と、初傳、七種伝の「水仙」の二本生けで使用します。

 私の作品は、「竹の節が水際から一寸上がりで奇数節」という決まりを守り、7つ節にしたところ、大変な大作になってしまいました。

この「松竹梅」は、「真・行・草」の生け方があり、いずれも水際の躰に竹、基本的に陽方奥に梅、陰方に松となります(逆になることも有)。竹は通常「*通用物」(*池坊では陸物とも草ものとしても扱うことができる植物)。松や梅は陸物。なので竹は「草の心」となるからです。(→この辺りを説明していると非常〜に長くなるので稽古で直接、伝えます。いつでもお尋ねください。)

この伝花は、『祝儀の極み』。品位が最高の花形なので、いける時は両脇に他の花は置かない。花器も銅器か金(かね)物。花台へ置くもよし。など色々伝承されています。

何故ここまで「松竹梅」に言及するかというと、茶道の世界と密着しているからなのです。

 三十五世池坊 専好の自詠に

『松竹と ならべてさすも 左より たけは水際と生て 立なん 

 木にあらず 草にもあらぬ 竹なれば いける水際の ふしに知べし

 右歌の意得 専一なり 水より一寸の 節を見るべし。』

 

 

さて、2日目は「水仙」と「万年青」。二つとも初傳「七種伝」です。

 水仙は、松竹梅と同じ「井筒」配りで生けます。

水仙を井筒配りで寸胴の花入へ。

水仙は『陰の花 水仙に限る』『賞美すべき花なり』と伝えられている「真」の花形の花です。真の花形なので、二本生けは基本的に竹の「寸胴」に生けます。

水仙の真っ直ぐに生きる出生(しゅっしょう)を生かすため、横掛けにいける事はしません。「置き生け、向掛によし。」

『葉の数は、偶数。蕾はひくく、開き花は高く。白根は蕾の水際に用う。

 冬は他の根締めに用うことはしない。早春より根締めに添えることも、また、

 水仙の根締めに金盞花を用いてもよし。二、三本生ける事よし。

 祝儀の席に用うべし。』

 

「水仙」の花は凛としていて、馥郁たる香りのこの花を生ける時、私はいつもイギリス人女優 オードリーヘップバーン を思い浮かべます。

5日目最終日は自由花材だったので「水仙の3本生け」をお玄猪へ生けました。↓ (日程順ではないですが続いた方が分かり易いので)

水仙の3本生け

 3本で生ける時は、「井筒」ではなく「花配り」に。

「真」の株の前に「副」の株を入れ、その副の葉が陰方後方へ降り出す特殊な生け方です。稽古で生けたものが分かりやすいので↓

水仙の3本生け

 

上記に記載通り、竹二重生けの下の重や、筆の花入れなどにも生けます。

 

この水仙、シンプルで簡単そうに見えますが、一株の姿 そのまま生けることはできないので、まず下の「袴」と呼ばれる花を包んでいる苞から中身の花と葉を順番に抜き、そしてあらためてその袴に長い葉から順番に仕組み直します。これが、初めはなかなか上手くいかず、難しいのです。昔、何度も袴を破ってしまい、『先生、これゴムで括っちゃダメですか〜?』と泣きべそかいて笑わせてくれた生徒がいたっけ。笑

この袴に入れかえる手法、皆さんに是非一度、体験してもらいたい。

 

続いて「万年青」。まんねんあお、と書いて「おもと」。

万年青を「松風」の花器に「石穴」に生けました。

 万年青も「祝儀」の花です。

「中傳」に『万年青を用いる事は 相続易き物故なり。唐土にては熨斗の替わりに是を用う、相続易く物なればなり。(中略) 祝儀には万年青を用い 実のない時は仮に実を作りても用う。但し 婚礼に紫色を用いず。』

 

「実物」は、本来祝儀の席には用いないことになっています。池坊は、明日咲く蕾に希望をたくす。実は花の後、過去のものと捉えるからです。

しかし!この万年青だけは別ものなのです。中傳に伝承されているように、

一年中青々として次々と新葉をだす万年青。

その出生は、向き合って生じた昨年の葉の間から、今年の春、新しい花茎と新葉が成長し、実は赤くなる。昨年の古い葉は新葉と実のために外側へ押し出されて傾く。

その姿を、冬に真っ赤に染まる実とともに賞美されるのです。

意外に身近に植えられている万年青。今、大河ドラマで話題の徳川家康が江戸城本丸に入城する際に、家臣から三種類の万年青が献上され、家康にとても喜ばれます。

一年中枯れない美しい緑色を保つことから、「繁栄」を象徴となり、確かに徳川はその後 300年の長きに栄えたことから、「引っ越しに万年青を贈るのは縁起がいい」という風習になったのです。

 

生花の中で役枝を「立葉」「露受葉」「流葉」「前葉」と扱うことも、また、丸く穴の空いた「石穴」と呼ばれる石の中に生けることも、独特な万年青です。

我が家では毎年、お正月に床の間に飾ります。

 

 

3日目は「梅」。梅の一種を、お玄猪(げんちょ)へ。

梅の一種を御玄猪へ。

松竹梅でも書きましたが、春、先がけて咲くお目出たい花。

現在開花している花の枝、来春に芽吹く青い枝、そして苔むした古木で表現されるこの一瓶は、力強く生きる喜びに溢れています。

 

梅園に行かれた方は、咲いている花だけではなく、苔木(苔むした木)や、ずばえ、と呼ばれる来年花を咲かせる枝となる青い棒みたいな枝に気が付かれるのではないでしょうか? 必ずありますので、まだ気がつかれていない方は、来年楽しみにしてください。花が咲いている枝だけではなく、こうした梅、そのものの姿を尊重し、力強く生けます。

先人の植物を観察する審美眼にはいつも感服いたします。

梅は、稽古のベースとなるもの。基本なので「伝花」ではありません。

 

 

4日目は「三種生け」。

三種生け

この後、池坊開館で 3月24〜27日に開催される「春の華展」の試作です。私は「三種生け」が指定されました。

連翹(レンギョウ)の変化形「上段流枝」で、真・副・躰の花率を作り、ドラセナ・ブラックリーフで、真・副のあしらい。かすみ草もあしらいで。

古典的ななかに、新しい出会いを求めます。

でもまだあと2ヶ月あり、花材が揃うか分からないので、どんなことになっても臨機応変に対応できるように稽古します。

 

 

長々書きましたが、これが京都の一週間の学びです。

東京では、深夜まで起きていてやらなくてはならないことに追われる日々ですが、この京都の学校に滞在している時は早寝・早起きで、一番健康的な生活ができます。『花の勉強だけ』できる。こんな幸せな事はありません。ホントウに。

そして、この学びを次の世代に伝えていく。その仕事を私の「使命」と信じていますので、学び続けます。

こんなに素敵な日本文化。日本に住んでいながら知らないでいるのは「勿体ない!」ことですよ。

茶道、華道で心を豊かにしていきましょう♡

 

日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもF.B.とInstagramにアップしています。

https://www.facebook.com/ritsuko.takamori.7

https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/

よかったらご覧ください。

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

令和5年 「初釜」報告

2023年8月30日 Category: blog

今年は異例の猛暑が長く続いております。

昨年の夏の朝茶報告を終えた途端。あら、あら。色々とブログも書きたいと頭の中では思いながら、日々は矢が飛ぶ様に過ぎ・・・一年経ってしましました。

書きたいことは山ほどあるのに、なぁ…


さぁて、言い訳はせず、2023年度、1月28日(土)・29日(日)に開催した初釜茶事の報告をいたしましょう。


玄関の短冊は、尋牛斎筆のおめでたい言葉「瑞日祥雲」。

寄付は、扇面「四海同風」。「高砂」の一節に『四海波静かにて〜』と祝儀に謡う謡曲があります。日本は全ての海「四海」に囲まれた国。なので「ここ 全てに同じ幸せな風が吹いている」という気持ちを込めました。

寄付き

日々の手入れが重要な露地。

蹲踞
この二人が一緒に席入り出来たことは、ここ数年の願いであった。奇跡の実現。

 

本席の掛物は、表千家九代 了々斎筆「一箭中紅心」。十三代即中斎宗匠の箱書があります。

 「一箭中紅心 (いっせんこうしんにあたる)」

 さて、いったいどんな意味なのでしょう?

 「一箭」とは、「一本の矢」という意味。

 

 「中」は「中(あ)たる」。当たるという意味。

  

 「紅心」は「的(まと)」。的の中心部の赤い部分、大きな意味で「心」のことを意味していると言えます。

 

そう、簡単にいうと「的の中心を射抜く」。

 「物事の一番重要な部分に取り組め」

 「色々あるなかで本質的な部分を捉えよ」と平たく言えますが、

まあ。禅語ですから、

 「自分の心を射抜け」というのが本意ではないでしょうか。

 実は、今年はこの言葉が物凄く、皆(社中)の心を射抜くこととなりました。

 そして、この夏の私の還暦祝いの茶事へ続いていくのですが。その話はまた後ほど。

 

濃茶は、柳櫻園の「祥雲の昔」。ひとりずつに濃茶を点てます。

 小岱の茶入れ。 茶杓は、宗完の花押「丹頂」。

表完作、紹鴎棚。 阿山作、兎の水指。 而妙斎箱、住吉蒔絵の棗。

これは広間席の床の間に飾った榊原勇一さん作の香合、十二年前の作品です。

 本席で初お目見えしたのは、捻梅の香合。紙釜敷を使いました。

今年も「続き薄茶」のスタイルです。

炭点前の後は茶懐石。

[ 初釜献立 ]

  蒸し寿司

  鰤(ブリ)山椒焼・慈姑・平目昆布締め数の子巻き・黒豆松葉・漬物

  聖護院大根・松蓮根・車海老・菜の花と赤貝の茄子酢味噌和え

 煮物椀   雲丹 帆立 蟹真蒸 鈴菜 京人参 柚子

 小吸い物  松の実 檸檬 

 八寸    唐墨 大根切り重ね    花百合根

 お湯

この、百合根を花の形に削るのは、職人技! 唐墨は社中料理長の手作り。

青竹に結び柳。

主菓子は「常盤饅頭」亀谷万年堂製。

初釜では、今年の抱負を書いていただいています。

 

 先ほど、「一箭中紅心 (いっせんこうしんにあたる)」という言葉が社中皆の心に矢を射ったと書きましたが、茶事後のお礼の手紙をひとつ紹介します。

 

 『(この掛物の言葉に)とても感銘を受け、また自分自身を顧みる機会をいただきました。お掛物を背に、始まる、お炭のお点前。幾重にもなった紙釜敷、羽箒、炭台の奉書紙、真っ白なアイテムで構成される演出に、最後に登場する捻り梅の香合。意匠のみで色味は抑えられているものの、まさに真っ白な世界に現れた紅い点のようで、とても感激いたしました。

 高森先生の室礼に、時代を超える了々斎の書が見事に融合したように思えました。この言葉の持つ意味が立体的に起き上がってくるかのようでした。

 表千家の歴代の宗匠の方々も、一席一席に狙いを定め、こだわりにこだわりながら、前に進んでこられたからこそ 今日の茶道があると思うと、深い尊敬を感謝、そして今を生きることへの勇気を感じてやみません。

 ここ三年、私たちは足踏みをしている様に見えながらも、すでに目の前にあるもの、たくさんの当たり前ではない日常の価値とありがたみを感じながら過ごして来ました。ある意味、強さを養ってきた時期だったのかもしれません。あの時からもうすぐ三年。また大きく時流が変わりつつあると感じます。

 ただ単に以前に戻るのではなく、これまで培った強さとともに、前に、己の目指すところにこだわりながら…。そんなことを「一箭中紅心」という言葉から感じずにはいられませんでした。

 (中略)この度のお茶事は、茶道のみならず、私自身の今後の行く末を考えるとても思い出深いものとなりました。茶道で頂いたたくさんの教えを、私も少しでもみなさんに循環できるようにと思いますし、また私がこの世で担当している分野においても還元していきたく思います。』

 

素敵なお手紙なので皆さんの代表で記載させて戴きます。そして、

このお手紙を書いてくれた彼女が中心となり、この夏、私の還暦のお茶事を開くとを企画し、7月23日に開催してくれました。

こんなに嬉しいことはありません。

 

さて、その報告はもう少々お待ちくださいませ。