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令和4年 朝茶報告

2023年3月8日 Category: blog

こんにちは 今年初のブログです。

令和5年度の初釜も、能の発表会も無事に納め、ホッとしている三月「上巳の節句」の頃です。

去年書きかけのままになっていた朝茶の報告を遅ればせながら掲載させていただきます。お許しくださいませ。

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 今年は暖かい天候が続き、長く秋を堪能していた気がします。

ただ、お茶人さんは毎日の気温ばかりで判断するのではなく、

風炉から大板、中置きと、茶釜の置き場所が、ほんの少しずつ移ることや、障子の隙間からの微かな風の違い、そして床間の花籠に可憐な秋草が盛んに咲いていたのが、徐々にススキが尾花となり、道を歩きながら見上げた空の高さの変化に確かな季節の移り変わりを敏感に感じることができます。

さぁ、朝茶の報告をしましょう。

今年も相変わらずコロナ感染者は、波を打つように増減を繰り返しつつも収束にはまだ時間がかかりそうで、朝茶の頃もちょうど増えていた時期でした。

「必ず伺う」と前礼をくれた3人が、なんと直前に感染してしまったり濃厚接触者になってしまったり。

  

生徒の中に一人、医療関係者のため、この3年間稽古をお休みしていた人がいます。彼女はこの3年で自分の働き方や生き方を見直し、実家へ帰る決心をしました。

「いずれは…」と思っていても、環境を変えるのはとても大変なことです。彼女の「地元に戻り、親の近くで仕事をして、自分が親の面倒をみたい」という優しい想いはすばらしいと思いました。

しかし、いつも明るく和やかな雰囲気にしてくれる彼女が稽古場に居ないことを想像することは辛いことでもありました。

ずっと一緒に稽古をしたいと思っていたのは、本人よりも、私や一緒に稽古をしている仲間たちのほうが強いのかもしれません。

人と人は、永遠に一緒にいることは出来ません。

しかし、心が繋がっていたらどんなに離れていても以心伝心。

そんなテーマから玄関の掛物を選びました。

 南山打鼓 北山舞 (なんざんに つづみをうてば ほくざんにまう)

 「雲門広録」に収められている禅語の一つです。

南の山で鼓を打つと、鼓の音が聞こえるはずもない北の山で、鼓に合わせて舞っている。

 心が通じ合って入れば距離など関係なく一心同体。

 久田宗也宗匠の書かれた短冊です。

寄付きの掛物は、12代即中斎宗匠の横軸 『清風』。

本席も、同じ即中斎宗匠一行 『清風動脩竹 (せいふう しゅうちくをうごかす) 』

即中斎宗匠一行 『清風動脩竹』

 脩竹とは、細長い竹の意味。爽やかな風に吹かれて サラサラと、葉鳴りの音を立てている情景が浮かびます。

 「風」だけでも、「竹」だけでも、音を生み出すことはできない。風が竹を「動かす」ことで、この爽やかな境涯が生まれる。

爽やかな言葉の裏に禅語の深さが響きます。

  

 毎回茶事を開く度に、新しいお道具をお披露目することにしていますが、今回の朝茶では、数ヶ月前に「春慶塗の丸卓」を入手していたので、それに従来のお道具を組み合わせて…と、考えていました。

そう考えていたのに、朝茶の直前に「出会って」しまったのです。完全に一目惚れしてしまいました。長いお付き合いをさせていただいている信頼できる京都高野竹工のギャラリーにて。

まず、待庵の古材を使った「風炉先」、「天王山写し」。妙喜庵の士芳老師の花押も漆で書いていただきました。高野竹工の職人、不窮斎作。

岩清水八幡・男山から天王山を眺めたときの景色を妙喜庵の古材で写したもの。

「天王山」は大山崎の山で、天下分け目の天王山の山崎合戦の舞台。秀吉は天王山に城を築き、利休に2畳の茶室「待庵」を作らせました。その茶室が後に妙喜庵に移築されています。

天王山北西には、細川三斎と古田織部が境に蟄居する利休を見送った場所。

戦国時代から安土桃山時代、生死をかけて生き抜いた武士たちの息遣いが感じられる妙喜庵の古材で天王山の山並みを写した「風炉先」。

茶室全体を山々に囲われた大自然に一気にワープさせてくれました。

そして、「水指」は高野竹工の伝説の名人職人、不虔斎(増田宗陵)作「さざなみ」。

春慶塗の丸卓にこの水指を合わせたい!そう頭の中でイメージのチャンネルが会ってしまったのです。

もう、こうなったら止まりません。

永楽の青交趾、「波」の蓋置きも 初お披露目いたしましょう!

毎年ドキドキの茶花。初日は桔梗朝顔が咲き、

2日目は釣鐘人参・松本センノウ・みそ萩・白河原撫子・糸芒を蝉の花入へ。

桔梗朝顔
釣鐘人参・松本センノウ・みそ萩・白河原撫子・糸芒

主菓子は吉祥寺に本店を持つ亀屋万年堂さんに「玉川」を発注。

亀屋万年堂製「玉川」

干菓子は10年ぶりに、京都亀屋良永さんの「朝露」。朝顔の蕾が可愛い背負い籠に入っています。

亀屋良永製「朝露」

水を打ち清められた露地

  

さて、私からの一方的な報告が長く続いたので、生徒からのお礼の手紙を少し抜粋させていただき、その後に懐石料理を明記し、朝茶報告を終わりましょう。

 Miさんからの手紙です。

 『私たちの住む日本は、こんなに素敵な文化を持ち、それを存分に味わう感性を持っているのだと、とても誇らしく、日常の些細な光景もなんだか違って見えます。(中略)人生には予め決められたシナリオなど何ひとつなく、全てがその時その時の最適な奇跡の連続なのだと深く感じました。お客組み、その日の天候、床の間のお花など・・・普段暮らしている中で、ともすると人間が全てをコントロールしている錯覚を抱きがちですが、決してそんな事などなく、私たち人間も大きな流れの中で、ただ生かさせている小さな存在に過ぎないと感じました。だからこそ、こうしてお茶事に参加できる奇跡に心から感謝し、瞬間瞬間をめいいっぱい味わいながら、五感をフルに研ぎ澄ませて味わっていこう。お茶席で何度もその様に感じました。茶室の中で、清流や山々を感じ、暑い中でも涼を感じ、その場にはいなくても他の社中や作り手さんとも繋がれる。八畳の茶室にいながらにして、空間や時間を超えた広いつながりを感じたお茶事でした。(後略)』

 

参加した皆さんからこうしたお礼のお手紙を頂くことが いつも楽しみでなりません。感謝。

[ 朝茶事献立 ]

 鱧寿司・鰆西京焼・鶏丸・冬瓜煮・巻き湯葉

 薩摩芋栂尾煮・茄子田楽 柚子味噌・花蓮根

 枝豆、蓮芋、玉蜀黍、大徳寺麩の胡麻和え

 青楓生麸・よもぎ麩・車海老

 煮物椀   卵豆腐アーモンド入り  三つ葉  アスパラ  青柚子

 小吸い物  新生姜  梅干 

 八寸    かます風干し   小倉朧昆布

 お湯

令和4年 朝茶懐石

  

さあ、昨年の朝茶報告が無事に済みましたので、しっかりと頭を切り替えて初釜準備に集中します。

今年はワタクシ、「年女」。そう干支全てを一周させて頂きました。

現実に「還暦」を迎えてみると、若い頃抱いていたそのイメージとは全く違いますね。

ここまで健康で、好きなことをして生きさせてくださった全てに、感謝の気持ちを込めて開催したいと思います。

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はい。こうして令和5年の初釜も1月最終土日に開催し、

毎年恒例の「尚月会」、能の発表会も無事終了。

今は3月下旬の京都と東京上野で開催される華展の準備中です。

今年の初釜も、素晴らしかった。その報告はいつ書けるのか・・・

楽しみにしていてください。 (笑)

    

   

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子