令和8(2026)年 初釜報告(前半・小間編)
令和8年度「初釜」報告です。長くなりそうなので、前半と後半に分けますね。
近年の年明けの茶事を思い返すと、昨年は「東京清祥会支部設立25周年・石渡正子師卒寿記念華展」が一月にありましたので、初釜は「春の茶事」として三月に行い、また一昨年は喪中のため「稽古初めの茶事」となりました。ですから新年を寿ぐ「初釜」は三年ぶりの開催でした。こういった一つ一つの行事を開催できることのありがたみをしみじみと感じます。
今年の干支は丙午。「丙」は五行では「火」、陰陽では「陽」にあたるため、「強く表に出る火・エネルギーが外に向かう太陽のような燃え盛る状態」だそうです。そこから「丙午の女性は夫を不幸にする」などという迷信が生まれたと言われています。
こんな干支のことを知っている四柱推命に詳しい友人から、私の命式の日柱(日干)が「丙」なので、「今年は“火”が強いからキレやすい。気をつけるように」とアドバイスをもらいました。
はて。こんなに静かで、目立つことを嫌う大人しい性格なのに?……笑
確かに、毎年、年の暮れはあまりの多忙に心が折れそうになり、かえって攻撃的になってしまう傾向があります。心を戦闘モードに切り替えないと忙しさに対応できないからです。しかし!今年の初詣で手に入れた小さな神棚に、毎日柏手を打つ習慣が続いていて、今のところ「穏やかな心、キレない自分」を保ち続けております。はい。
さて、初釜用に午・馬にまつわるお道具は何があるかな?と 探してみたところ、即中斎宗匠が「銀鞍」と書かれた扇面を見つけました。銀の鞍(くら)と書いて「ぎんあん」と読むそうで、銀で装飾された豪華な馬の鞍のことだそうです。
調べてみると、李白の漢詩『少年行』に「銀鞍白馬度春風(銀鞍の白馬、春風を度る)」との一節がありました。これは、貴公子や若者が美しい馬具をつけ、颯爽と風の中を駆け抜ける華やかな情景を詠んだもの。まさに高貴な身分の方の正式な装飾鞍とのことです。扇面も金と銀の華やかな気品あるデザインです。
この馬に乗ったような、優雅な気持ちで、お茶事の一日を過ごしていただきたいと思い、玄関に飾りました。

寄付には、八代・丸山應祥が描いた人形と梅の絵に、即中斎宗匠が「献春」と画賛された、いかにもお正月らしい掛物を掛けました。
煙草盆は一閑櫛形、火入は青楽木瓜形。

お客様は露地へ移り、亭主である私から迎付けを受けます。

本席の掛物は「一箭中紅心」。九代 了々斎筆、即中斎箱書。
今年初めに流鏑馬の色紙を眺めていて、“一本の矢、一射で的の紅い中心、すなわち核心を射抜く” ことの重みを改めて実感しました。一箭で核心を射る情景を描いたこの言葉は、日常の忙しさにどうしても流されがちな自分を、戒めてくれているような気持ちがします。
華道の世界でも、作品を完成させ生かすのも、たった“ひと枝”で決まるのです。

台目棚で小間の室礼。炉縁は黒柿、指物師・大崎雄斎作。
炭取は久しぶりに「脛当」を選びました。片岡竹元斎作。最近放映中の大河ドラマで、よく甲冑姿を観ている影響を受けたのか?と自問します。いえ。師匠の稽古場でこの炭取籠を見た時の感動を思い出したのです。

香合は、私が茶道を習い始めて2年くらい経った頃に、師匠の稽古場で先輩社中の陶芸家による香合を作る機会がありました。かなり昔に造った馬の形をした香合です。なんと、干支が三周りもしてしまった程、前のものです!
その頃は携帯も無いので、馬の顔ってどんなだったっけ?と想像しながら。なかなか良くできているのではないかと自画自賛しているのですが、いかがでしょうか。
今年の年賀状用に馬のイラストを探していたとき、三十七年前の私が頭に描いていた、まさに理想の香合の形はこれだ!というイラストを見つけました。もちろん、そのイラストで年賀状を仕上げました。
そのイラストは、馬が自分の身体に頭を埋めて休んでいる姿です。
しかし皆さん駆け回っている馬の絵の方がオメデタイ雰囲気なので “なぜ?”と思われた方が多かったと思います。また私自身のことを、駆け回っているイメージだと思いる方も多いと思いますが実は静かに休むことも、休んでいる姿も好きなのです。それは単なる憧れなのかもしれません?笑

主菓子は表千家お正月の定番「常盤饅頭」。亀屋萬年堂さんにお饅頭の皮の山芋を増やしてもらい、モッチモチに仕上がっていました。
初釜は「前茶形式」に戻しましたので、お菓子をいただいてから腰掛けへ移っていただきます。
銅鑼で向付けになります。

後座の花入は尋牛斎書付の竹一重切り、正面の反対側に「佳日」と銘があります。のちほど説明しますが、今回は “竹” がサブ・メインテーマなのです。
花は鶯神楽(ウグイスカグラ・スイカヅラ科)と、ピンクの曙椿。どちらもおめでたい名前ですね。

水指は高取、十四代 (亀井)味楽、そして茶入は小岱焼、仕服は雲鶴緞子。茶杓は兼中斎共筒箱、銘「白梅」。

今年初下しすることにした茶碗は萩焼。当15代(板倉)新兵衛(正治)さん作です。
出帛紗は而妙斎宗匠好「瑞松染」帛紗。袋師・土田友湖製です。流石、いつまでも触っていたいほどの柔らかな食感の絹です。

御抹茶は、柳桜園の而妙斎好特別引上「祥雲の昔」。茶道を学び始めた頃から馴染んでいるこの味に心が落ち着くので、近年蓮心会の定番になっています。
ここまでが、小間の室礼です。
このあと広間の室礼で茶会懐石と薄茶を差し上げます。
続きは「後半・広間編」へ。
*投稿に少し時間はかかると思いますが、気長にお待ちください。ませ。
令和8年5月 稽古日のお知らせ
*茶道教室 5月
・水曜日 13日、20日、27日 13時〜16時 / 18時〜22時
・日曜日 10日、16日(土)、31日 12時〜17時
16日のみ土曜日に華道・茶道両方の稽古になります。
人数の都合で時間の変更もあります。直接お問い合わせください。
*華道教室 5月
・水曜日 13日、20日 、27日 12時〜22時
・土曜日 9日、16日、30日 12時〜17時
* 上記茶道教室の時間に茶室での華道稽古は可能です、ご相談ください。
* 茶道・華道とも教室開講時間を明示しています。上記の時間内でご都合の良い時間に学ぶことができます。
*田無教室の『茶道体験』は 一名様 お菓子など水屋料込みで4.000円、
『華道体験』は 一名様、花代別で3.000円と致します。 花代は2.000円です。
現在「見学のみ」は承っておりませんので、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
・吉祥寺「ドスガトス」華道教室 日時は相談可能・要予約
現在、金曜日の11時から13時半、稽古可能です。直接相談してください。
「ドスガトス」は、スペイン料理店です。この店の一角をお借りして華道教室を開催します。初心者から優しく指導しています。このHP「連絡フォーム」よりお申し込みください。 吉祥寺華道教室 1回 3500円+花代(約1800円〜)
ドスガトスH.P.→ https://www.dosgatos.jp
日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもInstagramとF.B.にアップしています。
https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/
よかったらご覧ください。
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子
令和8年 4月稽古日のお知らせ
*茶道教室 4月
・水曜日 1日、8日、15日、22日 13時〜16時 / 18時〜22時
・日曜日 5日、12日、26日 12時〜17時
人数の都合で時間の変更もあります。直接お問い合わせください。
(3月水曜が都合で2回でしたので、4月に4回稽古日を設けています。)
* 12日(祝)、15日(水)に「利休忌」を開催します。
*華道教室 4月
・水曜日 1日、8日 、22日 12時〜22時
・土曜日 5日(日)、21日、25日 12時〜17時
* 上記茶道教室の時間に茶室での華道稽古は可能です、ご相談ください。
* 茶道・華道とも教室開講時間を明示しています。上記の時間内でご都合の良い時間に学ぶことができます。
*田無教室の『茶道体験』は 一名様 お菓子など水屋料込みで4.000円、
『華道体験』は 一名様、花代別で3.000円と致します。 花代は2.000円です。
現在「見学のみ」は承っておりませんので、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
・吉祥寺「ドスガトス」華道教室 日時は相談可能・要予約
現在、金曜日の11時から13時半、稽古可能です。直接相談してください。
「ドスガトス」は、スペイン料理店です。この店の一角をお借りして華道教室を開催します。初心者から優しく指導しています。このHP「連絡フォーム」よりお申し込みください。 吉祥寺華道教室 1回 3500円+花代(約1800円〜)
ドスガトスH.P.→ https://www.dosgatos.jp
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令和8年 3月稽古日のお知らせ
*茶道教室 3月
・水曜日 11日、18日 12時〜16時 / 18時〜22時
・日曜日 1日、22日、29日 12時〜17時
人数の都合で時間の変更もあります。直接お問い合わせください。
3月水曜は都合で2回ですが、4月に4回稽古日を設けます。
*華道教室 3月
・水曜日 11日、18日 12時〜22時
・土曜日 7日、28日 12時〜17時
* 上記茶道教室の時間に茶室での華道稽古は可能です、ご相談ください。
* 茶道・華道とも教室開講時間を明示しています。上記の時間内でご都合の良い時間に学ぶことができます。
*田無教室の『茶道体験』は 一名様 お菓子など水屋料込みで4.000円、
『華道体験』は 一名様、花代別で3.000円と致します。 花代は2.000円です。
現在「見学のみ」は承っておりませんので、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
*3月21〜30日に、上野東京都美術館で池坊東京連合華展が開催されます。私の出瓶は、3次 25・26日です。「立て花」を生けます。
観覧ご希望の方はチケットを差し上げますのでお声がけください。
・吉祥寺「ドスガトス」華道教室 日時は相談可能・要予約
現在、金曜日の11時から13時半、稽古可能です。直接相談してください。
「ドスガトス」は、スペイン料理店です。この店の一角をお借りして華道教室を開催します。初心者から優しく指導しています。このHP「連絡フォーム」よりお申し込みください。 吉祥寺華道教室 1回 3500円+花代(約1500円〜)
ドスガトスH.P.→ https://www.dosgatos.jp
日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもInstagramとF.B.にアップしています。
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令和7年 蓮心庵「朝茶」報告:前半
令和7年 朝茶報告 (前半:玄関〜本席〜懐石・菓子〜外腰掛け〜花)
残暑お見舞い申し上げます。
7月最終の週末、蓮心庵にて夏の茶事「朝茶」を無事に開催いたしました。
今年も本当に暑い7月でしたが、8月も半ばを迎えた今思い返すと、あの頃の方がまだマシだったかも…と思うほどの暑さですね。
ご参加くださった皆さま、そして準備に尽力してくれた社中に、心より感謝申し上げます。
ようやく一段落しましたので、取り急ぎご報告いたします。
(この記事は 前半 です。後半は「続き薄茶」から「皆さまのお声」までをまとめていますので、近日中に公開いたします。)
玄関
尋牛斎宗匠の短冊 「青山元不動」。
青山元不動 白雲自去来
(せいざん もとを うごかず はくうん おのずからから きょらいす)
〈五灯会元〉
“ いつでも何をするにしても 万緑万境(周囲の色々な現象)に心をとらわれて右往左往することなく 泰然として我が道を貫き通しなさい ”
今年は、いまの自分に刺さる言葉から始めてみました。

寄付
立花大亀老師筆「瀧」の掛物を。滝の飛沫を浴びていただくような気持ちで。
煙草盆 手付桶 火入れ 青楽木瓜。
本席
掛物は、「山雲海月情」(碧厳録)。而妙斎宗匠筆、即中斎箱書き。
語(かたり)尽くす 山雲(さんうん)海月(かいげつ)の情 〈碧眼録〉
“ 山・雲・海・月の情心、即ち一切の心のことで、親しきもの同士が胸中の心情、境地、心境のありったけを、お互いの腹の底まで包み隠すことなく、あらいざらいに打ち解けあい語り合う ” という意味だそうです。

実際に言葉を交わす というより、茶事においての一体感を表すもの。今回のお客様を思い浮かべ、迷わずこれに決めました。
炭斗は菜籠。香合は京都高野竹工さんの名工・不窮斎作、「月に萩」。
万年山こと相国寺の古材で作られ、有馬頼底老師の花押があります。
茶懐石と菓子7時半に席入りした朝茶。炭点前が終わる8時半前頃、濃茶の前に一汁二菜の茶懐石を召し上がっていただきます。


相変わらず、蓮心庵の懐石は一品一品が美味しすぎる。「手間ひま」しか、かけていません(笑)。

主菓子は亀屋万年堂さんへ特注。練り切りの「朝顔」。
『 2・3粒の寒天の水滴で演出するなんて、繊細な日本文化が誇らしくさえ感じました。暑いと一刀両断するのではなく、その中でも涼を工夫する、見つけるセンサーを持つ。夏の過ごし方のみならず、人生を幸せに生きる為の工夫にも通じる学びです。』 (M.S.さん)
お菓子を召し上がったら外腰掛けへ。

(M.Eさんのお手紙より)
『蝉の声がすっと静けさを縫うように響いたあの朝、炭点前が始まり空間がふわりと動き出した空気感は今も心に残っております。その後に拝見した蝉の花入の意匠の美しさに深く心を打たれました。また、腰掛けでは思いのほか暑さも和らぎ、雲が日陰をつくってくれたことにささやかなやさしさを感じました。その時そっと姿を見せた小さなヤモリも印象的でした。「家を守る」と書くおり どこか静かに私たちを見守ってくれているようであたたかな気配を感じるひとときとなりました。』
花
蝉籠に花を。毎年育てている朝顔は当日咲いてくれましたが、開きすぎて持ちそうになく…。
実は「今年はこれを」と思い描いていた花があり、前日に茶花店へ行くと奇跡的に出会えました。

「河原撫子」です。干菓子もそれに合わせて注文。庭の「姫矢筈ススキ」と「岡虎の尾」を取り合わせました。
報告が長くなりましたので、続きは後半の記事でお届けします。
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室
蓮心会 高森 梨津子
令和7年 蓮心庵「初釜(春の茶事)」報告
前回のblogに記載通り、2月末の「尚月会 十周年記念能会」と、3月中旬〜下旬の「池坊春の華展」・「池坊東京連合会支部華展」が開催された間の、3月8・9日に蓮心庵にて「春の茶事」を開催しました。
実は、蓮心庵で 3月に初釜を開くのは 2回目のことで、15年前の平成22(2010)年、庭の梅の木が満開になる頃「梅見の茶事」として開催しています。
今年は「雛祭り」をテーマにしました。
玄関は 而妙斎筆の「緑生春深」の短冊、そして雛人形がお出迎え。

今は亡き母の手作りの雛人形。母がパンを捏ねて制作したもので 私のお気に入りです。
後で登場する主菓子の「引きちぎり」は、雛祭りの定番。蓬が香ります。
寄付きは、玄関の雛人形がモデルになったような色紙で「桃花笑春風」、玉林院(洞雲)画賛。
白湯を召し上がっていただいた後、露地に移っていただき「迎えつけ」。これから始まる茶事への緊張のオープニングです。二日間とも穏やかな天候で気持ちの良い幕上げでした。
本席は「東山水上行(とうざんすいじょうこう)」、瑞龍山雲澤禅寺 足立泰道筆。
精神的に強い揺らぎを感じた時に励みとなってくれた禅語です。
雲門禅師が弟子の僧に『如何なるか、是れ諸物出身の処(悟りの境界とはどうゆうものでしょうか)。』と問われたとき、『東山水上行(山が 水の上を流れていく)。』と、答えたというこの言葉。
「動かざること山の如し」と習ってきた我々です。風や雨がどんなに強く吹こうが、動じることなく堂々たる姿の象徴とされていた 山が、「動かないはずの山が、川の上を流れる」って、どうゆうこと?!ですよね。
川の水は高いところから いかなる障害があろうとも無心に流れ、時には岩をも削り取るほどの大きな力を発揮して大海へと流れていきます。
「動くもの」と「静なるもの」。「天」と「地」。「自己」と「無心」。
この言葉は「自分の意識分別を断ち切ること」を教えてくれている。とのことで、自分を没入し去って「山を見るときは山」に、「川を見るときは川に」なりきってこそ、本当に川を知り、山を知る人になるという「悟りの境地」を解われています。
茶道を学び 禅語を知るなかで年々、自分自身の体験を重ね、この言葉の意味を実感するようになりました。
初釜は「前茶」スタイルでゆっくりしていただくので、炭点前のあと、前述の主菓子を召し上がっていただき、露路へ移ります。

釜:浜松真成、勘渓作。 炉縁:黒柿。
炭取:一閑 神折敷。 羽根:黒鷲。 香合:巳、和楽。
香合を拝見した後頃合いを見て 亭主は銅鑼を打ち、後座へ誘います。

整えられ、たっぷりと水が打たれている露地に心が清らかになります。
毎年京都 高野竹工さんへ注文する青竹。今年もスタイリッシュで素敵な花入を製作してくださいました。光るような青竹に、花がとても引き立ちます。
花は、姫日向水木と貝母百合。
台目棚に火襷の水指。 茶入:膳所 陽炎園 肩付。 茶杓:丹頂 宗完筒箱共。

茶碗:嶋台。 出帛紗:騎羊人物椿梅折枝文様金蘭
お濃茶:猶々斎好特別引上「楽寿の昔」柳桜園詰
小間での炭点前と御濃茶の後、再び露地へ移っていただき、室礼を8畳の広間に変えます。
初釜らしい華やぎを感じていただけたら嬉しいです。
掛物:宙宝和尚一行 「雲収山嶽青(くもおさまりてさんがくあおし)」

炉縁:唐松 川瀬表完作 風炉先:有馬頼亭自画讃花押 銀閣寺古材 曳舟
棚:及台子に、紫交趾 青海波の皆具
茶器:扇蒔絵大棗 一光作 茶杓:宗也筒箱共 銘「千草」菊蒔絵溜

花入:曜変祥瑞 六代 五郎助 花:白桃、卜伴椿、白初雁
香合:青貝 紙釜敷シキテ この青貝の香合は、以前一緒に稽古をしていた兄弟弟子さんの手作り。和紙を貼り定家の和歌が書かれています。
茶碗:大樋 九代 長左衛門 替 伊羅保 榊原勇一作 千羽鶴 陽炎園 他
江戸時代後期、大徳寺418世住職であり同時に相国寺派の管長兼任なさった宙宝宗宇(そうう)禅師は、松月老人と云う号でも知られる とても有名な方です。
書かれている通りの自然界の美しい光景「雲が晴れて山々が青々と見える」その様子を表しているのと同時に、「人の持つ煩悩が浄化され、仏性が明らかになる」という “悟り” の境地を象徴していると解釈されています。
何はともあれ、
この「雲収山嶽青」の字の、なんと迷いのない心清らかなことか!
さて。
美味しすぎるのが難点の蓮心庵の茶懐石を召し上がれ~~(笑)
今年から本格的にコロナ対応の銘銘皿を止め、本来のスタイルに戻します。ご飯を「炊き立て」「蒸らし直後」「蒸らしたご飯」と三段階で召し上がっていただきます。約5年ぶりなので、これが一番緊張しました。

向付:細魚昆布締 菜種まぶし 山葵 海苔ゼリー
汁:合わせ味噌仕立て 辛子 桜麩
煮物椀:蛤真薯 京人参 菜花 灰干し若布
焼物:鰆 蕗味噌
炊合せ:鯛の子、鶏丸、蕨、巻湯葉
強肴:空豆、車海老、白桃 白和え
小吸物:土筆 梅
八寸:蛍烏賊 桃蓮根
白湯の後は、お漬物でお茶漬け。 以上
茶懐石の後、名残りを惜しんで 薄茶を点てます。

干菓子:味噌合わせ 立雛 蕨 末富製 御薄茶:栂尾の昔 ぎおん 辻利詰
庭の梅の花が喜んでいる様子、伝わりますでしょうか?
11時に席入りした会も、15時半にはお開きとなります。あっという間ですね。
亭主は余情残心。黙ってお見送りをします。
この時、実は「この日の数時間を振り返る」というより、「この会を企画し始めた瞬間から、今まで」を、そして「これからの課題」に直面する正に「余情と、残心」の時間、なのです。
今回は例年とは違う時期に初釜として「春の茶事」を開催しましたが、“春” を感じる茶事も、新鮮だったのではないでしょうか?
蓮心庵の茶事は、社中皆の協力あってで成り立っています。いわば皆 一人ひとりが「亭主」なのです。その裏方の活躍を少し紹介しましょう~~

今回は、「菜種まぶし」にする卵作りや、蛍烏賊の目玉、口、背骨をピンセットで丁寧に取ること、また 蛤真薯を大きめの貝に綺麗に盛り付けて仕上げる。などが難問だったかな? 花蓮根は先輩から伝授されて 皆さん上手です!

いつも茶懐石の準備と、露地、茶室などの掃除を一緒に頑張ってくれる、(自称) “無形文化財保持者”の蓮心会社中。感謝です!
こうして無事、素敵な初釜「春の茶事」が3月に収まりました。前述通り お陰さまでこの後、京都、東京で開催された華展に集中することができました。
3月に卒業旅行と称して奈良・京都を一人旅したり、4月にも京都旅、そして利休忌。仕事もとても忙しかったけれど、我ながら“本当に よくやった!自分☆” と言ってあげたい昨年秋から今までの私… でした。はい。
今は、7月末の「朝茶」に向けて準備を着々と始めています。お楽しみに!
日々の稽古や、生徒の作品、ワークショップの様子などをF.B.とInstagramにアップしています。
https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/
ご覧になれるかな?
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室
蓮心会 高森 梨津子
令和7年「尚月会 十周年記念能会」と京都「池坊春の華展」と上野「池坊東京連合会支部華展」の報告
令和7(2025)年 2月23日(日)、水道橋の宝生能楽堂にて「尚月会十周年記念能会」が開催されました。能の先生である東川尚史先生の私たち生徒と、先生の能楽師繋がりの方々にもご協力もいただき、十周年に相応しい立派な会が開催されました。いらしてくださった方、誠にありがとうございました。
お陰様で無事に、素謡と仕舞とも「半蔀(はしとみ/はじとみ)」を納めることができました。

半蔀の仕舞は短く それほど難しくはないのですが、怒涛の日々に呑まれてしまい、稽古しても全く頭に入ってきませんでした。しかし華展が終わった途端、頭の中が冴え、明るく照らされたようにすんなり仕舞が入ってきたのが不思議でした。やはり自分のキャパを超えた忙しさだったのですね~~

自分の中では、80点位できたかな?と安堵していましたが、皆さんが撮影してくださった写真や動画をみると、自分の頭の中と全く違う。課題が山積みです!(↑写真の解像度が良くないですが、ご容赦ください。)
「半蔀」は、源氏物語の光源氏と夕顔の君の恋物語。京の五条あたりに住む身分もわからない、夕顔の花のように可憐なこの女性に源氏はいたく心引かれ、情熱的に愛します。しかしそれも束の間、連れ出した先で 夕顔は物の怪に取り殺され、短い恋は終わりを告げてしまうというお話。
能の「半蔀」は、その源氏と夕顔の恋物語を基としていますが、物語を描くよりも、夕顔の花そのものの可憐さに、はかなく逝った夕顔の君のイメージを重ね、花の精のような美しい夕顔を造形しています。「すべては僧の夢」。という結末につながる 幻のようなしっとりした優美さが際立つ能です。
私が仕舞を務めたのは「クセ」(曲の中心となる重要な段落)の部分で、光源氏に夕顔の花を差し上げるような動きもあり、ひたすら光源氏を慕う夕顔の一途な思いが凝縮された舞。ごくゆっくりと、静かに気品を持ってしっとり舞われる舞です。先生から『ひたすら上品に “ためる” 仕舞です。』と教わりました。
仕舞を習ううちに、私は刀などを持って暴れるカッコいい演目より、この「半蔀」や「燕子花」のような優美で静かな舞が好きなことに気が付きました。
自分のキャラクターとは違うところに惹かれるのでしょうか。。。それとも実はこれが私のキャラなのか?… 笑
蓮心会社中も久しぶりに三人揃っての連吟。

三人、無本で「枕慈童」を連吟。声も良く通り、長い演目を暗記し、堂々と謡う姿はとってもカッコ良かったです!
東川尚史先生は、4年前「重要無形文化財指定保持者」に認定されています。今回の舞台では、先生の一番弟子の二人が面(おもて)を着けて能(半能)をなさりました。これは なかなかできることではありません。皆さん一人ひとり、この会で何段階もステップアップできた気がします。本当に素晴らしかったです。おめでとうございました!
(時系列でいうとこの後、3月8・9日に「春の茶事」として蓮心庵茶事を開催しました。しかしこの報告は次回させていただきますね。)
3月15〜18日は、毎年京都中央研修学院で開催される「春の華展」「学園祭」とも呼ばれている華展です。石渡雅史先生の生花教室で出瓶させて頂きました。
私は、伝花「椿一輪生け」です。「向こう掛け」に生けました。

このblogの「2025年1月池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室3年 4期報告」で詳しく伝花「椿一輪生け」を書いているので、ここでは割愛しますね。
1月はまだ花器が決まっていませんでしたが、直前に正子先生がお持ちの六代祥瑞窯、浅見五郎助さんの窯変花入に決まりました。白い椿が映えてとっても素敵です!浅見五郎助さんも奥様と会場へいらして下さり、とっても喜んでくださりました。

卓の中でも、掛けでも、基本は一緒です。究極の世界を堪能させて頂きました。
この一輪生けは、「能」の世界と似ているなぁ… 独りごち。
雅史先生の作品、新風体。木蓮とウンベラータ、そして黄花カタクリが可愛い!

石渡雅史先生の生花教室の作品です。

(華展会場の様子や他の方の作品は今年 4月9〜10日のInstagramにアップしています。)
石渡雅史先生の生花教室の作品は、皆さんの作品には品があり、凛としています。それも能と一緒で私の好きなところなのです。
やはり私は「品格」「凛」「優美」な人なのか、それともそれが「憧れ」なのか。(笑)
今年の能を初めて観にいらしてくれた生徒さんと後で話したときに、『先生のテーマは、まさに “美” ですね!』と云ってくれたことがずっと頭に残っています。それは確か、です。
春の華展の片付けをし、すぐに帰りましたがその直後、友人からT.V.の撮影補助の要請。スタジオでサリーをマネキンに着せたりアイロンかけたり、レイアウトを手伝ったりの一日仕事。こちらも華展で頭も気もHaiになっているので出来ましたが流石に疲れました~~. しかし、さすが一流のテレビ番組制作スタッフ群の動きは素晴らしかった。華展運営とまるで一緒!どの世界でも一流の働き方は気持ちがいいな、と感じました。
さて、3月21〜30日まで上野で開催される「東京支部連合会華展」。私の出瓶は1次の21・22日なので、20日が生け込み。
大体の構想は頭の中にはありましたし、練習もしました。しかし花は生き物。会場で受け取る花材を開けて「あら; どうしましょ」の連続なのです。
今年も昨年と同じ「生花三種生け・株分け」の指定席です。
「軽やかに」が私のテーマでした。

ベネチアンガラスの水盤に細かい白いしを張り、雪柳・琉球シャガを男株、女株にカトレアを生けました。
風にあそんで飛んでいってしまうほど軽やかに。そんなふうに感じていただけたたら幸せです。
社中の和歌子さんは 5次に立花新風体を出瓶しました。

華展は何度出瓶させていただいても慣れるということはありません。毎回真剣勝負です。しかし、一回でも多くその体験を重ねていると、確実に “腕” と “根性” は ついてきます。実はその “根性” の積み重ねこそが “道” に繋がっているのかもしれません。「好き」ならなんだかんだ言いながらも続けていけますからね。
そんな「好き」を見つけられたら、それは かけ甲斐のない「財産」なのでしょう。
私が長年経験してきて、人さまからみたら一見全く違う世界に思われがちな「ウインドサーフィン」「デザイン」「バレー(踊る)」などと、私が今 伝えている「茶道」「華道」の世界。実は、私の中ではちゃんとシンクロしているのです。
その話、いつか書きたいと思いつつ このblog書くだけでも日が暮れてしまう私です(涙;)
では、次は今年春の初釜の報告へ。
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子
日々の稽古や、生徒の作品、ワークショップの様子などをF.B.にアップしています。(個人的な投稿も。)↓
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2025年 1月 池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 3年 4期報告
2025年の池坊中央研修学院 総合特別科、石渡雅史生花教室 3年目、 4期(1/20〜24)の報告です。
前回報告しました「東京清祥会支部華展」の最終日、全ての片付けを終え、その余韻を味わう時間も全くなくその足で新幹線に飛び乗り京都へ上京。はい。
雅史先生も90瓶の作品の監修をしてくださり、相当なお疲れだと思われますが 、翌日月曜朝、パリっと切り替えてそれを全く感じさせない表情で『おはようございます。』と授業が始まりました。先生もまだ我々と同じ「ハイ」状態なのかもしれません?笑 引き続き お花三昧の幸せな一週間が始まります。
どんなに疲れていても お花を生けると、元気になるのは不思議です。花の命に元気をいただいていることは間違いありません。
初日は「枝垂れ柳と椿」。大籠や薄端、御玄猪に生けることが多いです。

枝垂れ柳は、両方に垂れるので「両垂れ物」と呼ばれます。因みに「片垂れ物」は、山吹・萩などがあります。
柳は木物の扱いをするので、根締には椿・山茶花・菜花・水仙・寒菊、また小葉と共に蕗のとうなどをとり合わせます。
↑スッキリと生けあげましたが、花屋さんから入手した時はこんなに大きいのです↓ 私の身長の二倍はあります。

柳は一本で「真」「副」をつくります。どうしても付き枝で副がとれない時は2本まで許されます。『見立てる目』を持つことが一番重要です。
根締は、椿↓

根締の椿は、柳の「真」と向き合うように生けます。
2日目は「水仙」。“ 陰の花は水仙に限る” と言われ、初伝で許される七種伝の一つ。陰の季節とは、秋分から春分までのことを云います。なので、春分までは他の植物の根締には使えません。春分以降は残花となり、根締にも、また水仙の根締に金盞花を生けても構いません。
祝儀の花で、婚礼の席など特に改まった席に用います。
初伝の伝花として花形がしっかりと伝承されています。
しかし! 我々は 生花教室の三年生~~! 今までの学びの集大成としてこの「伝花」の「型」が出来る前、 45世 専定宗匠の水仙を学びます。
今の私たちは、水仙を生ける「正解」を知っています。専定さまが生きておられた時代から“今”までの間に、どんな軌跡があったのか。それを探る旅のような稽古です。先ずは、専定生花(下図)の真ん中の絵図を花配りで 寸胴花器へ。(右写真は横から撮影)

専定生花の絵図

花器を変えて、↑専定生花絵図の真ん中と、左の絵図を探ります。↓

専定宗匠の絵図は伝えられていますが、花留など詳しい記録はありません。なので「自分で考える。」それが先生からの今回のお題です。左は竹で前後2本で花留め、右は石で留めました。
古典立花も同じですが、その頃の宗匠や、生けた方々の時代や気持ちを想像して生けるのは、ゾクゾクする楽しさがあります。絵画や他の芸術の世界と同じですね。
水仙は婚礼の席に相応しいと学んでいたので、十数年前、茶道の生徒の結婚式に水仙の立花を生けたことを思い出しました。披露宴会場で水仙は輝き、新郎新婦を寿いでいました。水仙立花を生けるのは大変ではありますが、生ける間中、その上品な芳香に包まれ、とても癒されるので疲れを感じる事はありません。
また祝儀の席の一番に代表されるのが清祥会華展で出瓶させていただいた「松竹梅」です。「松竹梅」を三瓶並べて生けるときは、中央に松、向かって右に竹、向かって左に梅を並べます。ただし、竹は笹の葉が直ぐに乾燥してしまうので華展向きではないのです。
「万年青」も祝儀、特に婚礼に相応しいとされる植物です。万年青は、一年中緑を保つ常緑植物で、古い葉株の中から新しい葉が次々に生じ、共に生育するため、「万年も家が栄える」「相続が絶えず続く」との意味があるからです。
起源を調べてみると、江戸城の本丸が完成した慶長11年、三河の長嶋長兵衛という人が「天福の霊草」として家康へ献上したそうです。その後、徳川家が長く安泰であったことから、万年青は陰陽道で建築・転移に「吉」であるとされ、大名、旗本など武家をはじめ全国の町民にも広がり、現在も縁起の良い植物とされているそうです。
(余談ですが)私はスペインへ旅行した時、お世話になった友人のスペイン人宅の庭で万年青を見つけたのでその場で生けさせていただき、その由来を紹介しました。当然花入れや剣山などあるわけは無く、深めのお皿に石で固定させ生けました。とっても喜ばれ、その大きなお宅の全ての部屋にお花を生けて欲しいとリクエストされ、大きなお家の何倍も大きな庭に咲く花を好きに切り、各部屋を飾りました。厳しい環境の土地でない限り、植物は世界中に育っていますし、流通しています。どの国でも花を部屋の中に飾ることを楽しんでいますが、日本には花を生けることの意味や先人の想いまでをも受け継いでいる “花の文化” があることを知っていただくことができ、私も嬉しかったです。
中国では万年青の葉を熨斗の代わりに用いるそうで絹で万年青の形を作るとも。万年青の実のない時期には、仮の実を作ります。池坊の資料館で、珊瑚で作った万年青の実を見たことがあります。
では、反対に祝儀にN.G.な植物とは・・・
芍薬の花は、祝儀の花ですが、婚礼に限ってはN.G.。芍薬は素晴らしく美しい花ですが花びらが “はらはら”と散ります。「散る」「落ちる」「別れる」が連想されるものは縁起が悪いとされているからでしょう。山吹など、“実をつけないもの”もN.G.。日本人はそうしたことを とても大切にしますよね。また、婚礼には紫色は用いません。これは、古い時代の日本建築は室内照明が暗いからで、黄色か白が良いとされていました。
3日目は、1年生から3年生の全員、「梅」が課題です。
梅は池坊の“大道”。梅は「真」「行」「草」いずれの姿に生けることが出来、「どう生けても良い」ので “一番楽しい・美味しいところ”と先生は言います。だからこそ『生花(しょうか)って何なんだ?』を問われます。
池坊の教えに『定まりたる枝葉もなし』 とありますが、それは「決まりきった形や型にとらわれず、目の前の植物を尊重し相談して、その場に応じた姿を表現すのが大切にしなさい。」という意味。「型」は基本であり、覚えることも大切ですが、いつまでもそれに縛られてはいけない。それはあくまでも出発点だ。ということですね。
こうした池坊の学びと経験を積んでゆくと、創造性はもちろん、柔軟性も養われていくのです。それは どれだけ私の人生を助けてくれたか計り知れません。
梅には「瑞枝・寿枝(ズバエ)」と言われるまっすぐ上に向かって勢いよく伸びる緑の枝があり、その枝を「来年咲く“未来”の象徴」として「あしらい」に生けます。薄端へ生けました。

太い苔木は、副方をナタで削り配りに生けます。

梅も正式には三世を生けます。花がついた枝を「現在」、苔むした苔木を「過去」、次の年に伸びて花を咲かせるズバエは「未来」の象徴です。
我々池坊人は、ズバエを未来の象徴として寿ぎますが、植木屋さんにお聞きすると、この枝は「徒長枝(とちょうし)」と言い、選定するものだそうです。なるほど、確かに。
最終日は、自由研究か草の花形、又は学園祭に生ける花の試作。私は学園祭の試作として「椿一輪生け」を学びます。「椿一輪生け」も水仙と同じ、初伝で許される七種伝の一つです。
最小、極小の花枝で、池坊の生花を完全に生け表した、代表的な花形です。

花が過ぎ実になるも落ちず、翌年の花が咲き実るまで実を保ち続け、同族の繁栄をはかる椿は、芽出たい限りで、祝儀の花とされます。
「椿一輪に自然界の営み・季節感や空間との調和・命の流れや空気の動きなど、全ての想い込める。」池坊の美意識をたった一輪の椿の花と、3枚半の葉で表現するという、池坊の教えの中で究極的に省略された美観の演出。極めて高度な精神性と技術を要する表現なのです。
専永宗匠が良く仰います。『花の向こうにある、見えない自然を感じさせなさい。』
たった一本の椿を生けるだけ…なのに、なんて奥深い世界なのでしょう。
私は、再来月3月に池坊中央学院で開かれる「春の華展」でこの「椿一輪生け」を「向こう掛け」生けることが決まっているので、しっかり学びます!
↓「椿一輪生け」を向こう掛けに生けます。まだ花器が決まっていまいので、仮に竹の器に生けてみました。三杯生けましたが、どれも満足出来ませんでした。

この「椿一輪生け」は、大抵、卓の内に生けることが多く、「掛け」に生けたものは今まで見たことがありませんでした。そこでもう一度伝書を読み直すと「掛けにもよし」とあります。今まで何度も伝書を読んでいたのに、全く気が付きませんでした。思い込みは良くないと改めて学びました。

三年間の授業が終了し、5日目は修了式。「蛍の光」は毎年歌うたびにウルウル(涙)してしまいます。「ありがとう。通わせてくれて。深く感謝します先生!三年間、しっかり学ぶことができて本当によかった。よくやった、自分!」ウルウル(涙・涙)
三年間、お世話になったお友達の家へ、恒例のお花のプレゼント。

梅の香りが部屋中に!

椿も喜んでいます。

長々と書きました。読んでくださった方、ありがとうございます。
2月末は、尚月会10周年記念能会。3月は春の茶事(初釜)、そして上野での東京連合会支部華展。そして、利休忌。
今年はいつもに増して充実した春〜〜。頑張ります!
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室
蓮心会 高森 梨津子
「東京清祥会支部設立25周年・石渡正子師卒寿記念華展」の報告
令和7年1月18日(土) 19日(日)、東京美術倶楽部にて、「東京清祥会支部設立25周年・石渡正子師卒寿記念華展」を開催しました。
コロナが流行る年の前の11月にホテルニューオータニで開催してから、5年ぶりの支部華展です。
東京美術倶楽部での支部華展開催は、三回目。この会場は江戸時代から代々続く美術商も所属し、日本の優れた美術品の保存・活用を行う施設。2階には本格的な日本庭園と茶室と100畳の和室があり、表千家や各流派の家元が初釜など正式な茶会を開く伝統と格式を誇る空間です。
一年前から企画に入り、この華展に向けて会員一同、真摯に花と向き合い、各自が出瓶したいと思う花の稽古に励みました。
参加者は総勢90名。その中で私の社中は私を含め9名、出瓶させて頂きました。

大きく4部屋あります。
下↓ 写真上段右が正子師匠の新風体立花の作品。中段は私たち石渡雅史先生の生花教室に通っている同期で床の間に、左は松竹梅の「松の真」、右は「梅の真」、真ん中は「枝垂れ柳と椿」を展示させていただきました。三段目左は風間支部長の古典立花、右が石渡雅史先生の生花新風体。

私をこの伝統文化の世界へ導いてくださった美佳さんも。

池坊専好さま、専宗さま、雅史学院長の三人揃っていらしてくださり、出瓶者一人ひとりにとても丁寧にご巡視くださいました。
会場は二日間で 約2千人のお客様で賑わいました。ご来場いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
蓮心会の皆さんの作品を紹介します。先ずは私から。
伝花「松竹梅」の「松真」を薄端花器へ。『松竹梅 生方之事』は、お許しの五箇条の伝書の一番初めに伝えられている生花です。

池坊の原典『専応口伝』の中に「専ら祝言に用べき事」の筆頭に挙げられているのが 松・竹・梅で、この三種が祝言第一の花材とされています。祝儀の席に最も相応しい取り合わせであるとともに、その生け方に特別な習いがあります。
松竹梅の生け方は立花の内容と相通づる感覚の上に構成されます。竹を水平に切るのは、“その先” があることを象徴しています。
家元で正月に開かれる初いけ式以外、一月に華展が開催されることは滅多にないと思うので、皆さんが松竹梅や枝垂れ柳と小菊などの作品を見る機会は少ないと思い、生花教室の同志でこの伝花にしようと決めました。
和歌子さん 「立花 新風体」。

薔薇を主にフィロレンドロン、リューココリーネ、青文字、ベロニカ、シーグレープ、エレンジューム、レッドウィロー、バーゼリア、沖縄シャガ。
亜希さん 「立て花」。

梅、沖縄シャガを主に桔梗口の花入へ。
佐々木さん 「生花 新風体」。

南天、梅の寿枝(ズバエ)と苔木、カトレア。
八幡さん 生花 三種生け。

石化柳、アレカヤシ、フリージア。
美礼さん 「自由花」。

流木を組み合わせて作り、五葉松、オンシジューム、水仙、デンファレ。
奈月さん 「小品自由花」

ピンクの椿、スイトピー、レッドウィロー、霞草を変形花器へ。
金子さん 「小品自由花」。

竹の花器へ 老松、椿、水仙、水引。
友里さん 「小品自由花」

コノテヒバ、ガーベラ、デンファレ、ヒペリカムを水盤花器へ。
皆さん、自分で考えて、それぞれの個性を精一杯発揮することが出来ました。
そして皆さんが花に託したメッセージが観覧してくださる方に伝わる素敵な作品に仕上がりました。
正子先の支部華展には、必ず添釜として茶席を設けます。立礼席がCafeのように日本庭園を眺めながらくつろげる素敵な空間となりました。

立礼席も連日大勢のお客様で大好評。雅風会の皆さま、ありがとうございました!
↓前日の生け込み風景もアップしましょう。

みなさん、本当に良く頑張りました。
初日はホテルニューオタニにて、祝賀会。

来賓の皆さまから素晴らしい祝辞をいただき、品があり寛いだなかで、とても美味しいお食事を皆さんで頂きました。
会期中は確かに大変ではありましたが、まるで夢の中にいるような(ハイ状態だったのでしょう?)不思議な二日間でした。
最終日の次の日から京都の学校が始まるので、そのまま京都へ移動。という、強行スケジュールに疲れを感じる暇もありませんでした。はい。笑
京都の生花教室の授業も今期で最後。次はその報告ですね。
では、また。
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室
蓮心会 高森 梨津子
令和6年11月京都旧七夕会華展報告
京都・池坊本部で開催する代表的な華展は「春のいけばな展」と「いけばなの根源 池坊展」の二つです。
「春のいけばな展」は、題名通り毎年春(3月)、京都中央研修学院の修了記念・文化祭の華展。各教室の特徴がよく分かり、それぞれの特色が楽しめます。
毎年 11月に池坊会場(京都中央研修学院・家元道場)と 大丸京都店で開催されるのが「いけばなの根源 池坊展」。この華展は華道家元四十五世 池坊専永宗匠、次期家元 専好さま、青年部代表 専宗さまの作品をはじめ、全国の華道家による作品が 約900点 展示される池坊最大のいけばな展です。
この華展は「旧七夕会(きゅう たなばたえ)」と呼ばれ、江戸時代初期に御水尾天皇が宮中で七夕の立花会を催したことに由来する最大・最古のいけばな展です。
平安時代以降、宮中で七夕の日に様々な行事が催され、その一つとして花がたてられていたからです。しかし「七夕」は7月7日。なのに 何故11月?と、不思議に思われるでしょう?
はい。私が聞いた話では…『旧暦なので、新暦では8月初旬頃。京都の暑さは厳しく、花が保たなかった。9月に・10月に延期したけれど、その季節は農繁期。といって12月は皆忙しい。そんな経由で11月に落ち着いた。』確かに。11月は花材も豊富ですしね。とても真実味がある説です。
毎年この「いけばなの根源 池坊展」で、お家元がその年の池坊のテーマを発表し、そのテーマの華展が一年かけて 大阪・東京・札幌・仙台・名古屋・福岡を巡ります。
今年のテーマは『 花 命 みらい』。
池坊いけばなの根底にある 生成発展 する “いのち” の美しさと向き合い、“みらい”への希望を花に託して一瓶に表現する。
関西万博でも「いのち輝く 未来社会」が謳われていますしね。
…すっかり前置きが長くなってしまいました(^^;;
実は この旧七夕会華展に「石渡雅史先生の生花教室の代表」として選抜していただき、出瓶させていただきました! とても名誉なことなので報告致します。
私の作品は、木瓜の一種生け。薄端花器へ。

先生にアドバイスしていただき、凛とした作品となりました。
石渡雅史先生の作品。↓

“生成発展” とは、「古いものが滅び新しいものが生まれる」「勢いよく発展し続けること」。絶えず活動し、変化し成長していく様子を指します。
生花(しょうか)は特に、この『生成発展する “いのち”の美しさと向き合い、“みらい”への希望を花に託して一瓶に表現する』花形なので、今年の『花 命 みらい』のテーマそのものですね!
専永宗匠の作品。↓道場席の宗匠の作品の前に座ると、とても癒されます。

大丸京都店の専永宗匠の作品。↓

道場席の専好さまの作品。↓

道場席の専宗さまの作品。↓

このような素晴らしい華展へ雅史先生の生花教室の代表として出瓶させていただく機会をいただきましたこと、深く感謝いたします。
この三年間、生花教室での石渡雅史先生の講義・教えは、基本を徹底的に教えてくださることも勿論ですが、特に興味深かったのは、先生から毎回いただく「お題」です。
初年度は『皆さんにとって “美しい” とは?』でした。
改めて考えたことも無かった突然の問いかけに皆、驚きながらも色々な意見が出ました。
私は直感で『一所懸命生きている姿』と答えましたが、クラスの皆さんから「夕日」「山嶺」「満月」「新緑の水々しさ」「仏像」「車」「友情」「所作」「計算式」「金の価値」… などのように実際に生きていなくても美しいと感じるものは様々あり、とても面白かったです。
先生のお答えは『美しいとは、正しいもの』でした。私はそれを聞いた瞬間、少し違和感を覚えました。何故なら「”誰が判断した・何に対する” 正しいもの」なのかが、分からなかったからです。
その後 先生から『 “美しい”とは、快い・快感・感動=正しい=“真理” 。』『正しいとは、理に叶う姿。道理(筋)が通っている。』『大自然の秩序』『真理を目指しましょう。』と聞いて少し納得しましたが、私の心の中ではまだこのお題は課題として燻り続けています。
二期目は『人は “何故” 花を生けるのか?(今、世の中はSDGSと謳われているのに。命あるものを搾取してよいのか?)』でした。これはいつも私が考え続けていることでもあるので、教室の皆さんの色々な意見が聞けてとても興味深かったです。
実はこの課題が出された前日、『何故 こんなに花を生けること、勉強することが楽しいのだろう』と 考えていたところでした。そしてその日、友人に紹介され初めて会った方から、最近 最愛のご主人様を亡くしたと聞きました。その瞬間、その方に「花を贈りたい!」という気持ちがどうしようもなく湧き、遅い時間で店も閉まっていたので道端に咲いていた地味だが美しい花を お辞儀をしてから手折り「仏前に供えて欲しい。」と手渡しました。その時私は『何故人は 故人へ花を贈りたいのか?』と自問していました。
太古の昔から死者に花を手向ける習慣があったことが分かっています。
これは理屈ではなく、『美しく咲く花の命も私たち人間の命も同じ』という節理が無意識に働いているのでしょうか。
花の命と私たちの命。同じ命。
… 実はこの華展会期中、大好きな妹が病気で他界しました。
悲しみと向かい合いながらも「いのち」を懸命に生けることでなんとか、乗り越えられた気がします。
私の人生の中に『華道』があって良かった。続けてきて良かったと、心から思いました。
そんなこんなの事情で、ブログの更新が全く出来ずにいました。お許しください。しかし丁度、今!東京華展は2025年5月21日〜26日・日本橋三越で開催中です!なんとタイムリーで素敵な偶然(笑;)
折角なので、専永宗匠や専好さま、専宗さま、雅史先生、そして石渡正子師匠の作品を順次アップします!
専永宗匠の作品。↓

昨年11月の大丸京都店の作品が都市を巡り、季節に寄り添いながら変化してゆく姿も素敵なのです。
専好さまの作品。↓

専宗さまの作品。↓

石渡雅史先生の作品。↓

光と影までが演出されているようでした。
2次・石渡 正子師匠の作品↓

シラビソ・松・柘植・鳴子ゆり・笹百合・山アジサイ・クロトン・スプレー菊
「山静かにして、太古の如し」
喧騒の現代に生きて、私達はふと深山幽谷の静寂を夢みます。
しかしながら、その自然界では、草木は常に風にそよぎ、水は不断に流れ、生き物はあるがままに生きぬいています。
一見静寂に見えるなか、「輝くいのち」を表現したいと願っています。
静かな山の中にいるかのようでありながら、その静けさの中に「輝くいのち」のエネルギーが満ち溢れる作品。今年も全く年齢を感じさせない先生の作品に元気を頂きました。
令和6年はこの後 納会を無事に終え、新しい年を迎えることが出来ました。次は令和7年1月の「東京清祥会華展」の報告をします。お楽しみに。
西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室
蓮心会 高森 梨津子