蓮心 表千家茶道教室 池坊いけばな華道教室

西武新宿線沿い西東京市田無駅より徒歩11分の表千家茶道・池坊華道教室

令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告 – 初座 –

2023年10月26日 Category: blog

私ごとですが、本年令和 5年(2023年)卯年、還暦を迎えます。還暦は 干支が生まれた年に戻る=生まれ直して赤ちゃんに戻る、ということから子供用の袖なしの羽織、ちゃんちゃんこを送り祝う風習ができたそう。赤は魔除けの意味もありますしね。

 私は30歳から茶道と華道を伝えはじめました。道具も何も持っていのに。師匠から教わる世界が素敵すぎて。『こんなに素晴らしい、日本文化を知らないなんて、勿体ない!』ただ、それだけの気持ちが抑えられなくて。それから30年経。

  

 思い返すと、弟子たちが初めて自分たちで「茶事」を開いて私を招待してくれたのは、3年半前。私が表千家家元から教授者最高職を頂いたお祝いの茶事でした。(「蓮心会 令和2年「教授者最高職授与祝いの初釜 」で報告しています。)

その時、亭主を勤めてくれた 亜希さんの姿勢、働きが素晴らしく、後輩たちは皆『いずれ亜希さんのような亭主になってみたい』と志し、その時 新たな目標が生まれたのでした。

それから3年半の経験を積み、「時期も熟したかな?」との私の期待と 弟子たちの気持ちが “ 啐啄同時 ” 。弟子たちから今年度、「還暦祝い茶事」を開催しましょう!。というお話に。

しかし、だれか一人で亭主を勤めるのはまだ自信がない。なので、今回は経験が長い深雪さんを中心に、美礼さん、奈月さん、定篤さんの4人のチームで取り組みたいとのこと。

企画・進行が仕事上でも得意な深雪さんが社中の結束を目的に企画書『お祝いの茶事ストーリー』を書きました。本来の茶事は、そのようなもので進行するものではありませんが、なにせ今回は、初めてのことばかり。見守ります。

道具組も自分達で考えるので、物語のイメージも出来てきます。普段の稽古日から茶室の準備を自分達だけでし、庭の手入れや、掃除、そして茶懐石の試作も何度も繰り返しています。

毎週のように庭の手入れを全員で。
小学生の頃から稽古している昌平さんは、今や立派な造園技師に!
すだれ掛けの元木と、露地へ入るくぐり戸を作り直してくれました。
茶懐石の試作や仕込みのリーダーは定篤さん。
釜の灰も整えます。

 

本番開催は、7月23日(日)。参加者が 22人となったので、11人ずつにわかれ、前日22日はリハーサルとし、全員が何かしらで茶事へ参加できるようにしました。

  

さて、いよいよ 当日。台風は上手く外れてくれ、あっぱれな快晴。本当によそ様の家に招かれた気持ちで玄関前で待ちます。

 

幹事が企画した「お祝い茶事のストーリー」とともに報告を進めていきましょう。『』内が その企画書の文章です。

『この度、高森先生の還暦のお祝と、日頃の感謝をこめて、蓮心会主催によるお祝いの茶事を開催させていただくことになりました。

一本の竹には平均六十個の節があり、竹ごとに成長点を持つそうです。竹が強く、しなやかに、そして早く成長することが出来るのも ” 節 ” があるからとも言います。暦が一巡し、高森先生が新たな一巡に入られる ” 節目 ” を尊び、お祝いするとともに、社中である私たちにとっても今回のお茶事を一つの節目に、これからも成長していく所存です。』

玄関に兼中斎筆「雨後の青山青 転青(うごのせいざんあお うたたあお)」の短冊。

『お祝いの茶事を開催させていただくことにあたり、私たちは自身の未熟さや力不足を実感しましたが、それでもこうして無事にこの日を迎えることができましたのは、先生のお世話になっている皆様のお力添えによるものです。これからも精進して参ります。』

兼中斎筆「雨後の青山青 転青」

この一行は「雨によって空気中に漂う塵も落とされ 山に生える樹木も潤いを得て、は鮮やかに青さが冴えている。」という、目の前のありのままの自然の姿を “ あぁ、ありのままだなぁ ” と素直に感じる心と同時に、

「目の前の塵が洗い流されて迷いがなくなり、端々しい生気を放っている。厳しい酒豪の後、自身がそれ以前と変わっている。」という、悟りの境涯も表しているそうです。

この会が始まるまで、皆が無心に 目の前のことに対峙している心持ちと、この会が無事に終わった後の皆さんの悟りの境涯を予感しているようで、とても楽しみになりました。

玄関から「寄り付き」へ。

玄関から寄り付きへ。

寄付きの床の間に 即中斎筆の扇面、「南山寿」。

寄付きの扇面「南山寿」、即中斎筆。

『高森先生の還暦をお祝い申し上げます。先生がご健康で末長くご活躍されますように。また これからも先生にたくさんの幸せが訪れますよう 社中一同お祈り申し上げます。』

「南山」は、中国再安の西南に悠々とそびえる終南山。この山は全山堅固な岩石からなるゆえ「不壊」を意味します。「寿」も「南山」も めでたさを表す縁語に繋がるため、正月などの祝い、特に長寿の祝いの席で好まれます。

「月の恒ゆみはりの如く、日の升(のぼ)るが如く、南山の寿(じゅ)の如く、かけず崩れず。松柏の茂(しげる)が如く、爾(なんじ)に承(う)くるくる或(あ)らざる無し」(「事文類聚」より)

この扇面から祝風が吹き下ろしているよう。期待に胸が膨らみます。

床の間に、掛物と釜、茶杓、茶碗二種の「箱書き」。
莨盆 竹手付 火入 青楽木瓜形
煙草盆の火入れも頑張って練習していましたね。水団扇があって助かりました。
京都に戻られた敦子さんからいただいた「蘇民将来子孫也」の御守り。
玄関の厄除けの御守り粽(ちまき)と共に毎年、とても有り難く飾っています。

寄付で白湯代わりに頂いた冷たい檸檬水で爽やかに喉を潤した後、半東から「露地へ」との案内があり、露地へは昌平さんが竹を割くことから作ってくれた力作! の潜り戸をくぐり移ります。

昌平さんが丹精込めて作ってくれた潜り戸。とても素敵!

綺麗に整えられた露地、苔。

今年の酷暑で日向の苔は焼けていますが、素晴らしく手入れが行き届いています。

これは 一朝一夕にできることではないですね。

昨夜梅雨明け宣言され、今日は “大暑”。とても暑い最中でしたが、今さっき雨が降ったのかと見まがうほどに水打ちされた木や草を抜け、時折り吹く風が 私たちの心を優しく清めてくれます。

露地の腰掛けで、亭主の迎え付けを待ちます。

亭主が蹲踞の水をあらため、迎え付けてくださいます。

亭主の迎え付け。前日のリハーサル。
亭主の迎え付け。本番当日。

『今回のお茶事は、先生のおめでたい節目に開催されるものです。また、社中にとってもひとつの成長の節目でもあります。そのため、次に目指す先を見定める良い機会とも言えます。

普段は先のことや雑念に振り回されがちですが、こういった「節目」のタイミングこそ、今一度、大事なことに向き合うことができているかどうかを自分に問いかけていきたいと思います。今後も引き続き、ご指導を賜りたく、宜しくお願い致します。』

新たな水にあらためられた蹲踞で口と手を清めます。
露地の腰掛けには「煙草盆」と、円座が用意されています。
莨盆 一閑 鱗透溜 五代 近左作  火入 祥瑞  莨入 檀紙
煙管 如心斎好 二代 清五郎

ご亭主の深雪さんに迎えられ、初座へ関入りすると、「一箭中紅心 (いっせん こうしんにあたる) 」のお掛けもの。
表千家九代 了々斎宗匠が書かれた一行物で、寄付きに即中斎の箱書がありましたね。

「一箭中紅心」九代 了々斎宗匠筆、即中斎の箱書。

「箭」は矢。「一矢でど真ん中を射抜け。当たらないまでもど真ん中を狙え。」「一点一心に集中する。」

聞けば当たり前のことのようだけと、これがなかなか、簡単に出来ることではあません。「瞬間、ことの本質に対峙する。」「自分がやるべきことからやれているか?」「目の前のことに、集中する!」

今年の初釜、この掛物の言葉に触れた時、皆の中にまるで電気が走るように何かが生まれた瞬間があったのではないでしょうか?
この掛物から、今日という日が始まったことを思い、感無量の気持ちで改めて拝見しました。
皆のなかにそれぞれの形で確実に茶道で培われた意識が育っている。だからこそ、この掛物しかないと感じた。その声が聞こえてきました。
この言葉とともに一日を成功させようと一心になっている皆の姿を頼もしく、そして心から嬉しく感じました。

亭主の深雪さんとここで初めてご挨拶。お互い感無量の心です。
炭点前の室礼。

たっぷりとした松竹文様の真成形の釜、十二代 加藤忠三郎作。寄付に宗心宗匠の箱書きも寄付きにありました。
拝見すると灰も綺麗に整えられていました。

濡れたような潤いのある春慶塗の丸卓、竹で出来た水指は繊細で細かな漣(さざなみ)の模様が施され、まさに高野竹工の伝説の名人職人、不虔斎(増田宗陵)さんの技。水辺にさざ波が広がる様子が目に浮かびます。
 同じく高野竹工さんの職人、窮斎作が利休ゆかりの待庵古材で造られた風炉先「天王山写し」。妙喜庵の士芳老師の花押が漆で有ります。
岩清水八幡、男山から天王山を眺めたときの景色を妙喜庵の写したものだそうです。「天王山」大山崎の山で、「天下分け目の天王山」と比喩される山崎合戦の舞台。秀吉は天王山に城を築き、利休に二畳の茶室「待庵」を作らせました。その茶室が後に妙喜庵に委託されています。
天王山北西には、細川三斎と古田織部が境に蟄居する利休を見送った場所もあります。
戦国時代から安土桃山時代、生死をかけて生き抜いた武士たちの息遣いが感じられる妙喜庵の古材で天王山を写した風炉先は、目の前の茶室全体を山々に囲まれた大自然に一気にワープさせてくれました。
さて、今日の一日は「天下分け目の天王山」… となるか?と感じてしまいました。

亭主の炭点前。

利休好みの油竹網代の炭斗。火箸は竹の節。釜敷は木村表惠作、こより。
釜に清らからな水が足されるその音は、朝茶ならではの瑞々しさで、外の暑さをすっかり忘れさせてくます。

亭主の炭点前を見守る11人の客、一体感。

香合 小林星山さん作「翡翠(かわせみ)」。初夏を知らせる渡り鳥。

香合 小林星山さん作 「翡翠(かわせみ)」。

香合を拝見させていただき、亭主にお尋ねします。

香合を拝見し、お尋ねをする。

実は道具組の相談があった時、この香合は普段使いにしていたものだったので少し不思議に思って、道具組みの担当 奈月さんに『香合はもっと値打ちのあるものにしては?』と聞いてみました。すると、『幸福な蒼い鳥は幸せを運んでくれる。なので、今回先生へのお祝いに是非、と想い選びました。』とのこと。

一つひとつの道具に皆の”想い“ が込められて選ばれている。これこそが茶事の醍醐味。
ほの暗い室内でこそ、生き生きと輝く金と翠の輝きは、皆の想いの深いさなのだと感じ、あらためて感動しました。

幸せ気分に慕っていると、鼻腔をくすぐるお出汁の良い香り!茶懐石のはじまりです。

半東さんたちが、手際良くお膳を運んでくださいます。
めいめいに折敷の膳が出されます。(↑写真は前日リハーサル)

お献立は、新生姜と玉蜀黍ご飯、稚鮎、和歌山雑賀崎の海老、冬瓜翡翠煮、花蓮根、黄ズッキーニ・南瓜・隠元胡麻和え、巻玉子、ミニトマト出汁付、青楓麩、守口漬・瓜・水茄子の漬物。

銘々皿に盛り合わせて。いろどりも素晴らしい。

茶懐石のメイン、煮物椀は「枝豆豆腐」、柚子、白木耳、潤菜。

煮物椀「枝豆豆腐」。私の一番好物ばかりです。
全てに心がこもったお献立

すべてに心と身体が喜ぶご馳走。この時間、永遠に続かないかな。と思っていると、小吸い物が運ばれてきます。梨と茗荷が刻んで浮かんでいます。シャリシャリと食感がさわやか。

小吸い物でお口をさっぱりと洗います。

 そして、茶懐石のハイライト。亭主から「八寸」で一献。

 焼き加減、塩加減とも絶妙な美味しさ! 和歌山の鱧の白焼と、アスパラガスの味噌漬けの「八寸」。

「八寸」は、鱧の白焼と アスパラガスの味噌漬け。
「海の幸、山の幸」八寸は茶懐石のハイライト。
一人ひとり、亭主とのやりとり。
「どうぞ、お取りあげを」
「こんなに綺麗に盛り付けてあるので、どうぞ取り分けてくださいませ。」
そして、一献。
中正客から、美玲さんが。

「千鳥の盃」を楽しみ 茶懐石を楽しんだ最後に、縁高で主菓子をいただきます。

 とても涼しげな「水牡丹」の主菓子。優しくて上品。

「水牡丹」の主菓子。お菓子もとても重要なテーマ。

 『お菓子を召し上がりましたら、露地へ。』との案内に、『お鳴り物でお知らせください。』と、主客の挨拶。初座の名残の拝見後、ふたたび露地へ。

 と… 。

かなり長くなりすぎてしまいましたが、ここまでが茶事の初座です。

つづきは後日、「後座〜編」で報告させていただきます。お楽しみに。

 

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

 

2023年 7月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月15日 Category: blog

(池坊いけばな「生花」の学び、去年の報告も一緒にさせていただいているので間際らしくてすみません。月の時系列で投稿しますので、ご理解ください💦)

今年令和5年の池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 2年目 2期 、7月3〜7日の報告です。

よく皆さんに云われるのです。『年に何度も京都へ行くなんて優雅ね〜、羨ましい〜、沢山名所を知っているのでしょう?』と。

現実は~~、皆さんが想像してはるものには~~ 全く当てはまりませんのや~~ (京都弁)。 毎朝 6時半には起き、8時半に開門する六角堂の学院へ入り、授業の準備。 9時半から12時まで講義(10分の休憩あり)。昼食の後は 18時まで実技 (きっかり15時に15分のおやつの時間あり)。毎日がついていくのに必死な講義と、目の前の今日中に生けるべき花のことに必死で 一日が あっという間! 18時過ぎ、ご挨拶で解散すると毎日クッタクタ。勿論、観光する場所は全て閉まっているし、行くエネルギーなんて残っていない。お腹ペコペコ、早く帰りたい、明日のために寝たい。そんな五日間なのです。

 しかし、花だけにむきあい、華道のことだけに「缶詰」状態で学べる。こんな幸せな時間があるだろうか。海外旅行より贅沢で濃密な時間を堪能できる深〜い期間。

ま、しかし 欲張りでタフな身体も持つ私としては やはり、せっかく京都へ行くのだから、茶道の教えを感じられるようなひと時、また、東京では味わえない「お休み」を愉しめたら…との思いで「どこからしらへ」と、いつもアンテナを張っている。スミマセン、貪欲なので。

 ことのほか猛暑が厳しかった今夏。そんな日々のなか、「京都で 蓮を じっくり観たい」そんな希望が私の胸にうずいていました。

「水無月」のお菓子を食べて、名越の祓えの行事を済ませた7月初旬、祇園祭の準備が進み出した京都へ一日早入り。

久しぶりに花園駅近くの「宝金剛寺」五位山、ここの庭園は素晴らしい。「天龍寺」も好きなお寺ですがいつも混んでいるのでサラサラと素敵な庭を堪能しながら抜け、竹林側へ出てその裏山の竹林を越えて、本命の小倉池へ。

「宝金剛寺」の蓮
小倉池の蓮

ここはまだ未開の地なのか?蓮のシーズン前とはいえ、周りにはほぼ誰もいない。

小倉池のふもとに鎮座する「御髪神社」側から。空気が澄んでいる。
今でこそ、知らない人はいない 天龍寺の裏道 。

こうして 現実に生きている植物を実際に見て廻ることは、とても勉強になる。古人が『花は脚で生けよ』と言った意味がよく分かる。

実際に稽古で生ける作品と、現実に目の前に咲いている自然界の姿とは全然違うのだけれども、その ” 型 ” 生まれるべくして生まれ、その心が今に伝えつづけられているその “ 想い” が理解できる気がするの。

  観光客で混む前の午前中早々に、小倉池の蓮に癒され滞在先へ帰宅。さあ、明日からの始まる授業に備えます。

 

  2年目 2期 、7月3日 初日は「蓮」。私がこの世で一番好きな花。

蓮の花や蕾、朽ちた葉や花にも深い意味がある。それがこの花の特徴で池坊では「命」「時間」を表現する生花です。

水盤に銅筒に配り。写真を撮るときに真の葉がよってしまいました・・

現在を表現する「開葉」「開花」。

未来を表現する「開葉」「開花」「莟」。

過去を表現する「朽ち葉」「蓮肉(れんにく)」。

 水の深さを測る役、偵察隊の「浮き葉」。

『 一瓶調えたる姿は さとり の 因(おこり)なり 』

一昔(25年位?)前、京都の夏期講習で蓮の生花・立花を学んだ記録を見つけたので投稿します。↓この時は当然 剣山。今は、当然 配り。

京都の夏期講習で蓮の生花。一番大きな剣山を購入。
京都の夏期講習で「蓮の立花」前置きは河骨。

蓮の花、関東はたいてい茶碗蓮と呼ばれる小ぶりな花。関西の蓮は大きさが まるで違うので迫力。この花を生けていると誰もが幸せで平和な気持ちになります。

 2日目は「株分け」。今回は、太囲と燕子花で「魚道生け」。

魚道生け

「株分け」は根本の「躰」を分ける手法です。

砂鉢に銅輪を置き、花配りで生けます。

「魚道生け」とは、両方の株が ” 水辺で生きる植物 ” 。

「水陸生け」とは、” 陸地で生きるもの” と “水辺で生きるもの” を生け合わせる表現。← 陸ものと水物は一つの株になれない由。

(「水陸生け」は、2022年 2期 3日目で「夏はぜと燕子花」で投稿しています。)

「陸もの」を二種で株を分けて表現することはしません。一種でもね。←「一つの命」なので。

三種生けに限り、副が別れることがあります。

新風体も同じ剣山で株分けることが、今、流行していますね。

  

 三日目は、燕子花の二重生け。   

竹の二重切り花入に、二重生け

上の重には「懸崖の花」、下の重には「立ち登る姿」を表現します。

  

『ベストを常に出すのは難しい… 今ある実力の一番の解答を出す。

専永宗匠の父、専威宗匠が、

『いけばなの目的は、“ 人生の陶冶(とうや) ” にあり』と伝えたそうです。

「陶冶」とは、焼き物の粘土をねるなどの工程でのことす。

人格を形成することと同じ。

人生は、どう悟りに至るよう目指すか。悟りを得られる道、

『人格の完成を目指している』

  

「成長しよう」という気持ちが、若さであり、10代でも諦めたら老人。

脳の成長はいつまでもつづきます。体力は平行しませんが…。

素晴らしい教えです。

  

四日目は、「月」の花器に燕子花。

月に燕子花。

上空に浮かぶ月を象徴する花器なので、軽やかに生けます。

「反ること」が若さの表現。とお聞きましたが、なるほど確かに。踊芸の世界での表現も同じですね。

  

最終日は、「交ぜ生け」。「交ぜ生け」は秋草に限り許される表現。

情景描写として、主従の分けなく 一瓶をまとめる、夏の水辺の情景描写として生まれた手法、「行」の花行です。

秋の野にありそうな植物たち

・芒と、女郎花、桔梗、菊

・女郎花と、撫子、桔梗

・桔梗と、撫子

・刈萱と、撫子  など。

夏に活用する水物では、

・太囲と、燕子花、河骨

・蒲と燕子花

・葦と、燕子花   など。

 実技は、「芒と、女郎花」。

「交ぜ生け」芒と、女郎花を御玄猪へ。

花かがみより「太囲と、燕子花」↓ (反転しています)

「交ぜ生け」太囲と、燕子花
柴田教授の作品。

 以上。

最終日に蜻蛉返りで、次の日は東京お茶の水の池坊会館で「巡回講座」です。

  

さて、これで7 月までの報告ができました。(去年の10月のはまだですが)

 

ようやく、7月23日に弟子たちが私の “還暦のお祝い” に「茶事」を開いてくれた報告ができます。

 お楽しみに。

  

  

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

 

2022年 4月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月12日 Category: blog

今年2023年の「生花」の学びを投稿したので、昨年2022年の石渡雅史先生の一年目、一期の報告を。(なかなか進まないので サクッとね)

2022年 4月25日〜29日。

『 “美しい” とは なにか… 』から始まった池坊生花研究室。皆さんならなんと答えますか?

「健気にイキイキと生きる命の姿」「海に沈む夕焼け」から「いま高騰中の金」など、24通りの答え。

 <美しさを目指すのは人間だけ。>

  

この教室では、3種生けと新風体以外は剣山を使わない!さあ、楽しみな三年間のスタートです。

 初日は基本中の基本、「川柳と小菊」。配りの留め方も丁寧にご指導下さり嬉しいです。

御玄猪に川柳と小菊。

 作品録もしっかり書いて提出です。

毎回提出する作品録。

  

 二日目は華道の歴史の講義の後に「山梨と都忘れ」の二種生け。

いけばなの哲学は、1542年28世 専応口伝がルーツにあります。30世 専栄の花伝書に『出生(しゅっしょう)の姿 肝要也(なり)』とあります。その後、広めていくために だんだんと生花は形を持っていきます。

 「命の姿」が大切なのです!

花配りで生けるのは なかなかに大変ではあります。が、『諦めず、誤魔化さず、真摯に花と向きあい、腕をつけていこう!』と改めて心に決めました。

御玄猪に「山梨と都忘れ」。

 

三日目は “春”の燕子花。杜若とも書きます。

燕子花は池坊でとても大切にしているけれど「伝花」ではありません。

 季節表現の最たるもの。春のうぶな姿を生けました。初めて「うぶ葉」を真に生けました。↓ 真の前葉を隠方に生かすのも初めて。教室の皆さんの色々な生け方を見ることが出来るのも嬉しいです。ちゃんと段階を踏んで理解していくことが大切!

竹の寸胴に。この後、「舟」の花器にも生けてみました。

  

四日目は「花菖蒲」。

「いずれ菖蒲(あやめ)か燕子花」。花道を学んでいないと違いは分かりにくいですよね。この季節、端午の節句限定。

『子供は親を超えて成長して欲しい』という先人の想いがこうした “型” として伝えられていることに毎年感動します。

竹の寸胴へ。→「真」の花形です。

 そう… ここはいけばな発祥の地。全国から多くの方が学びに来ています。

生花の型は時代で変化していることも実感しました。

  

最終日 5日目は「三種生け」か「新風体」。自由に選べます。

池坊の三種生けは、自由と多様を求める心。” 挑戦する心理から発生した” と学びました。三種生けの可能性にワクワク。↓

リョウブ・レッドウイロー・銀葉

↑ リョウブは、古くからある植物ですが、その枝ぶりが素敵だったので三種生けで生かすことにに挑戦!

   

  

今回は一日早入りして、京都在住のお友達とドライブ。京都の海沿いを走り、伊根の船宿へ。昔々、ドスガトスにアルバイトに来ていた成蹊大の学生がここの出身。ず〜っと来たかったので思わず電話しちゃった。ネギぼーず みたいな髪型だったからあだ名は「ねぎ」。イチゴ農家の息子と恋愛し嫁ぎ、自分たちで無農薬の野菜を一所懸命作ってた。もう立派なお母さん、夏子。懐かしかったなぁ~~

左上の1枚が「伊根」。「ホリデイホーム」の素敵なカフェで一服♡

そして、お友達が日本で一番好きだという久美浜にある、とてつもなく素敵なホリデイホームへ。あらためて。日本って、素晴らしく豊かな自然の宝庫の島ですね!

  

  

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

 

2023年 4月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年10月11日 Category: blog

2023年(令和5年) 4月10月10日(月)〜14日(金) 池坊中央研修学院、石渡雅史生花教室 二年度一期の報告です。

 前回のブログで書いたように、4月8日(土) 表千家 北山会館「春のおとずれ」展を堪能した後、その表千家北山会館が主催する『京都府立植物園の戸部博園長と一緒にこの植物園を巡るツアー』に参加。戸部博園長直々に植物園にある草・木・花の説明を受けながら巡り、先生から「植物園である意味」と「桜への熱い想い」をたっぷりと堪能させて頂きました。

京都府立植物園の植物たち。
京都府立植物園の山野草たち。私は、こうゆう花が一番好きです。

元来、「染井吉野」より「山桜」の方が好きだった私。先生から『染井吉野の桜が終わってからが本当の桜の季節なのです!』との言葉に同感するととともに、「里桜」の種類の多さと、それぞれの特徴を教えていただき、とても有意義で豊かな時間でした。

京都府立植物園の里桜たち。

 

 次の9日(日) は、京都在住の親友と『天気が良くて気持ちが良いから 、山へ歩きに行こうか』との話になり、 山科駅から毘沙門堂、そして南禅寺まで気持ちの良い山歩き。 (山歩き用の靴を持って来てなくて革靴だったのですが。) 散々、歩いて『汗を洗い流したいよねぇ』と、五条の 昔のまま薪でお湯を沸かしている銭湯、そして、その近所の美味しいクラフトビール屋さんと。。「いやぁ、遊んだなぁ」と、携帯の万歩計を見ると 3万歩弱の数字! あれ?明日からが「本番」のワタシなのですが・・・まあ、私はこのくらいは普段の生活とあまり変わらないので大丈夫。笑 帰宅後がが〜と夕食作る私に友人は流石に呆れていましたが。。。

友人が撮影。緑が眩しいくらいにキラキラしていました。

 

はい。さて、本題。

二年度一期の初日は「牡丹」。初伝七種傳の一つです。

「花かがみ」牡丹一種の絵図。

牡丹は、初伝「七種傳」のひとつ。

牡丹は花が立派で “花王” として賞美されます。牡丹籠に「行」の花形(かぎょう)で生けますが、花の品格から「井筒配り」を用いて「真」として扱います。 

牡丹の枯れた枝を真に蕾一輪を高く、開花一輪を低く使う。

水揚げが難しく溜めも効かないので、出会った花の自然な姿を生かします。(←これが難しい… 「池坊生花の学び方」の本に書いてありました。 ↓

『自然観を念頭に置き、花に尋ねて処理すべきです。この花に尋ねて花からの返事を待つにはより多くの訓練が必要でしょう。』 

はい。素晴らしい教え通り 花に尋ねた私の作品です。↓(汗) 

牡丹籠に、牡丹。

牡丹は、竹で井桁(いげた)形に「井筒配り」に留めます。この竹も自分たちで削ります。

朝、学校へ行く道に季節の花を置いている素敵なお家があるのでいつも楽しみにしているのですが、丁度勉強する日の朝に こんなに立派な牡丹の鉢が!牡丹は、一年に1センチと言われる位成長するのに時間がかかると聞きました。ここまで育てるのに何十年かかったのでしょう?立派に咲いていました。

いつも季節の花をさりげなく飾っているお宅の玄関。

 

二日目は「桃」の一種を「御玄猪(おげんちょ)」の花器へ。

桃は古くに中国から移入され「古事記」「万葉集」にもみられます。古くから邪気を祓い悪霊の侵入を防ぐとされ、その霊力に祈る風習がありました。

現在は雛祭りの節句に生けられますが 旧暦なので新暦だと4月初めに咲きます。

枝の出方にまろやかな風情があるので、その特徴を生かして優しい雰囲気に整えます。

桃の一種を御玄猪へ。

  

3日目は、「初伝」で伝えられる伝花『五ヶ条』の一つ「桜」。今回の花材は「山桜」。私が一番好きな品種の桜です。

この伝花は「一本の木の出生を生ける」のではなく、吉野の山のような「景観美」を表現するので、大花瓶か手のない大籠に大ぶりに賑やかに生けます。

山の桜は下の方から上の方へと咲いてゆくので、中段・下段に開花、真には蕾がちの枝を使います。苔木を一本(または二本)いけ交えます。そして緑の松一本を下段に交えて花の色を更に惹き立たせる。3メートル離れて観るのが正しい世界。もの凄いスケールでしょ?

ダイナミック!
↑私の作品。伝花「桜」を牡丹籠へ。木(ぼく)は直径4~5センチあります!

立花を凌ぐスケール感!以前行って感動した、吉野の山の風景を思い出します。

  

4日目は「株分け(かぶわけ)」。<特殊な情景を象徴するもの>です。

左右に分けて横の広がりをする夏の表現です。先人の日を表現する美意識の高さに、毎回舌を巻きます。

本勝手では、向かって左側に “山の景色”「男株(おかぶ)」、右側に “水辺の風景”「女株(めかぶ)」を生けます。男株の水際に石を置き、遠くの景色であることを表現します。

水陸生けを銅器水盤へ。「胴筒」に配りで生けます。

↑ 今回は男株に「銀葉やまなし」女株は水中に生育する「燕子花」を生けました。 なんと…↓

男株の銀葉やまなし。こ〜んなに、高い枝から枝どりしま〜す。

   

最終日は新風体。

八重の牡丹桜の枝ぶりが なんとも可愛らし買ったので、山や公園で観た景色を思い出し、最初は銀葉やまなしと取り合わせましたが、先生から『好きなもの同士を合わせると、どっちつかずになるよ。』とのアドバイスがあり、銀葉やまなしを抜いて芭蕉と取り合わせてみたところ、目が覚めるほど桜がイキイキとしました。↓

新風体。牡丹桜・芭蕉・松

 4月14日(金)、5日間の学校が無事に終わり、飛んで帰ります。15日(土)田無の華道稽古後、ダッシュで精進料理の準備などをし、16日(日)は「利休忌」。本来二日に分けて開催しますが、色々ある私のために、社中一同がこの日に集まってくれました!感謝。

田無茶道教室で「利休忌」。

利休坐像の掛物を掛け、茶花は銅器に松。お菓子はおぼろ饅頭。利休さまの徳を偲んで供茶、御伽(おとぎ)=精進で一献。

今年は「炭について」の話もしました。

  

  

ゆっくりしたいと、 4月末に奄美大島へ三泊四日。G.W.は休まず働き、 5月G.W.明けには伊豆下田へ二泊三日の旅行。ちっとも「ゆっくり」なんか出来ない私。 笑。

二期は7月上旬。三期はこれを書いている10月下旬なので、なんとか三期が始まる前に報告を仕上げたいと思いま〜す。(茶事の報告もあるのに できるのか?)

では、明日は二回目の「天然忌」なので。ちょこちょこ校正しながら更新していきます。

  

  

 

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西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子