蓮心 表千家茶道教室 池坊いけばな華道教室

西武新宿線沿い西東京市田無駅より徒歩11分の表千家茶道・池坊華道教室

令和6 (2024)年「稽古初めの茶事」報告-[後編]

2024年4月26日 Category: blog

 本年1月最終週末に開催した「稽古初めの茶事」の続きです。前編は玄関の短冊から寄り付き、露地から小間の室礼へ席入りし、炭点前と濃茶をいただいたところまででした。後編は濃茶の後、席改めのために一旦露地へ移り再び広間へ席入りしたところからです。

炭点前の後に茶事のメインである濃茶をいただいた後、ゆっくりと広間で茶懐石と薄茶を戴くこの「前茶」と呼ばれるスタイル。パァっと明るい室礼に変わるところが醍醐味です。

広間の床の間には、掛物と花。香合も飾られています。

掛物は、建仁寺 小池心叟老師筆 (小池心叟老師は竹田益州老師に参禅し、白山道場開いた方です。)

『紅炉上一點雪(こうろじょういってんのゆき)』


 川中島の戦いで上杉謙信が武田信玄に正に斬りつけたそのとき、『如何なるか是 剣刃上の事(刀で斬りつけられ、死が迫る心境はどうだ?)』と迫り、信玄はその時、刀を鉄扇で払い、『紅炉上一点雪 (熱い炉に落ちる雪のように、あれこれ物事を分別せずに運命に任せて生き切るのだ)!』と返した逸話でも有名。
 赤くなった炉の上に、ハラハラと雪が舞い降りていく。熱風で融けてしまう一片もあれば、風に吹かれて炉を避けて地面に積もる一片もある。自然界の雪は、それらを狙って落ちるわけではない。
私たち人間は不安や後悔など妄想に絶えず振り回されてしまう生き物です。そんな念に修行を積むことで「生もなく死もない、執着もなく、恐怖もない」自分をつくっていくという中国 宋代の「碧巖録(へきがんろく)」の一説で『死に対する禅の答え』です。

 
昨年、大切な人との悲しい別れが続きました。そんな時、この一行から これからの自分の「生き方」を教えていただいた気がしたのです。

茶事では、自分で調べてくださいと伝えて多くを語りませんでした。皆さんは何を感じたでしょうか。

 

香合 フリフリ 紙釜敷シキテ 塗師 静峰
花入 青竹一重切 高野竹工花  梅、曙椿

 


茶懐石の献立は銘々皿に 真鯛昆布〆 穂紫蘇 山椒、慈姑、絹さや、

白和えは 菜花 下仁田葱 干し柿、黒豆松葉、金柑蜜煮、花弁百合根、海老芋。
飯物は、手鞠寿司。車海老 高菜 錦糸卵の三種

銘々皿に8種類。白和えは柚子を切り抜いた中に入れました。
煮物椀

煮物椀 蟹湯葉真薯 鶯菜 京人参 柚子

焼き物と、漬物

焼物  鰆西京焼
漬物  沢庵 菜の花 しば漬

小吸物 松 の実 針生姜

八寸で一献

八寸は、白魚筏焼松蓮根 木の芽

 

茶懐石の後、白湯をいただき、干菓子がだされ、お薄茶をいただききます。

お薄の室礼

炉縁  松葉散らし蒔絵 蒔絵師 香月

風炉先 腰金地 宗完花押棚

高麗卓 水指 染付 桶川 瓔珞文 西川徳泉作品

茶器 而妙斎好写 若松蒔絵平 村田宗覚作

茶杓 琉球

茶碗 黒 八事釜

  替     辰 榊原勇一作


  水注薬缶 腰黒 祥雲作即中斎好み

  (この水指をようやく見つけたので初お披露目です!)

  建水   而妙斎好 砂張 一ノ瀬宗也作

  蓋置 染付七福絵 紀州焼葵窯 二代 竿川栖豊作 「那智黒釉」
干菓子 味噌煎餅 辰焼印 福寿草和三盆 亀谷萬年堂

干菓子器 瑞雲 象彦

御茶 而妙斎好 栂尾の昔 ぎおん辻利詰
  煙莨盆 櫛形 一閑

  煙莨入 杉木 高野竹工製

  きせる 如心斎好 二代 清五郎

 

パンデミック中も休まず茶事を続けてきましたが、時間をかけないよう初釜も「続き薄茶」での開催でした。なのでこの「前茶」と呼ばれるスタイルは4年ぶり。「初めて」という生徒も半数位いました。茶懐石も4年前から各人へ銘々にしていますが、これはいつ戻せるのかなぁ?炊き立てご飯も4年作っていないと不安デス。

それししても今回の八寸「白魚筏焼」は、どうしても料理長の金子さんが作りたいと何度も試作を重ねたこだわりの逸品!

茶懐石の準備

茶懐石を手伝ってくれた社中は『パクっと食べちゃわないで、十分味わってくださいね!』と念を入れていました。笑

一つひとつの素材そのものの味を最大限に引き出す術も整い、今年は特に全てにおいて完成度が高かったです。

  

最後に皆さんから頂いたお礼のお手紙からひとつ抜粋させていただき報告を終わります。(長文ですが許可を得てそのまま投稿させて頂きます〜 ^^;)

  

拝啓
梅の花がそろそろ花を咲かせる季節となりました。
あと一息で春本番です。

 さて、先日は「稽古初め」の茶事にお招き下さいましてありがとうございました。
今回で何度目になるかわかりませんが いつも初めて招かれたような新鮮な気持ちで茶事に参加させて頂いています。
今回は久しぶりに衝立を立てて「小間」という小さな草庵のような茶室に見立てて濃茶を頂くスタイルがコロナ以降久しぶりに行われました。

茶事に招かれると、いつもこの「茶事」というものを 古の侍たちは、どう受け止めたのか、ここに何をみよう、感じようとしていたことに思いが至ってしまうのですが、最も大きく感じるのは、例えば、江戸時代は実際の大きな戦いのない時代になっていたものの、武士たちは常に帯刀して暮らし、茶室はその「刀」を置いて、人と人が向き合う空間であったということです。このことは「茶事」「茶室」を、「空間」を考える上で非常に大きなことだったのではないか、と思います。
帯刀する故に「侍」であった人たちが、それを持たずに会う場だったということは、人間そのものが、その人が持っているものが容赦なく見えてくるはずです。

こうゆうことから書き始めたのは、何と言っても今回が「小間」の空間で行われたのが印象的だったからです。
人と人との距離が狭く、空間はまさに参加した人たちの雰囲気や人柄で作られていました。人の思いや感じていることが、そのまま空間に流れ出して新たな空間を作っているような密な空間でした。
ふだん全く別な場所で異なる生き方をしている人たちが「小間」のような小さな空間で肩を寄せ合ってひとつの腕を回してお茶をのむということが特別と言わず何でしょう。不思議なことです。
この「空間」の共有と「茶碗」の共有。これを敢えて求めていくことの意味をどうしても考えたくなりました。
もうひとつ、このことを考える上でどうしても気になるのは、「武士の身体感」です。
武士としてきちんと鍛えていた人なら、私たちとは異なる身体感覚を持っていたと思います。
刀を扱うのに長けていたならば、自づと現代人と身体感覚は変わってくると思います。そういった身体に敏感な人たちが敢えて「小間」のような小さな空間で「空間」と「茶碗」を共有していたということは、私たちが先日、感じた以上の何らかの「交流」が かつては、茶事の場、茶室の中で行われていたのではないかと思うのです。神秘的なこととしてではなくて、日常的なこととして、です。
茶の文化が続いてきたということは、日本文化の核のような交流がそこで行われて来たのではないかと思います。
「美」「侘び」と言葉で表現され尽くせない何かが、そこにあったのではないか。実は今は、もうそこでは行われていたのではないか、そんな感じです。日本から消え去った文化がかつてそこにはあった。そんなことを考えるのも何か楽しくなる。「小間」という空間にはそんなちょっと興奮状態になってしまい色々妄想をしてしまいました。とにかく大変有難い機会を頂いたというのが、いちばん簡単な感想です。
あとは、高森先生が茶事で掛けられたお軸「東山水上行」「紅炉上一點雪」、美しい映像的な禅語で、心に残りました。「東山水上行」に関しては友人パルバティが同じようなことを話していたこと、さらに、インドの神様ハヌマーンが薬を採るために山をまるごと運んでくるのですが、そういった大きなスケールを見てうれしくなりました。逆に「紅炉上一點雪」の変幻自在振りな視点の変化も、この茶事になんとも言えない味わいを与えていたように思いました。私たちの一歩一歩がどこに向かっていようと一歩一歩行くしかないのだということを改めて感じさせてもらいました。

今回の懐石も大変おいしうございました。特にクワイとかユリネとかシンプルな煮物は存在感が素晴らしかった。
偶然か意図したものかは分かりませんが、クワイは芽が出ている姿が「芽出たい」のでお正月のオセチに食べるそうですが、今年の干支の甲辰の「甲」の字は田んぼから芽が出る姿が「甲」という字だと言われます。クワイと甲が「象徴」で同じような意味を持っているのも、あとから考えると何か示し合わせたようで面白い。

とにもかくにも、このような場を設けてくれている高森先生に心から感謝です。どれだけ準備が大変か、愛情がないとできないことで有難く感じています。
さらに、茶事の度に、七夕のように何度も社中の皆さんとお会いでき、場を共有できること、本当にありがとうございます。
細かいことを挙げると他にも色々書きたいのですが、書いていると春になりそうなので、この辺りで筆を置かせて頂きます。

本当に春を迎えるまであともう少しかかりそうです。どうぞご自愛下さい。

心から感謝を込めて、ありがとうございました。

                      敬具
                       2024年2月11日

 

便箋 8枚にびっしり書かれた御礼の手紙。ライブ感が半端じゃないでしょう?
私の親友、通称チャックさんからです。彼女は私の弟子ではありませんが、もう何十年も私が茶道華道に取り組む姿を見、茶事へ参加し応援してくれている心の友です。

参加した皆さんからそれぞれに素敵なお手紙をいただきました。手紙は本当に嬉しいです。私の何よりの宝✨です。

私が学んできた全てを、伝えていくことを改めて誓います。

ありがとうございました。

 

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子

 

令和6年 5月稽古日のお知らせ

2024年4月17日 Category: 稽古日のお知らせ

*茶道教室 5月

・水曜日  15日、22日、29日  12時〜16時 / 18時〜22時

・日曜日  5日 、12日、19日(日)  12時〜17時

 人数の都合で時間の変更もあります。直接お問い合わせください。

・露地の手入れを1・4・5日の11時から2時間ほどします。有志で行います(雨天中止)。

・ 初風炉は、12日(日)、15日(水)。

*華道教室 5月

・水曜日  15日、22日、29日  12時〜22時の間

・土曜日 4日、11日、19(日)日     12時〜17時

*19日のみ日曜の稽古日となります。

* 上記茶道教室の時間に茶室での華道稽古は可能です、ご相談ください。

   

*田無教室の『茶道体験』は 一名様 お菓子など水屋料込みで4.000円、

『華道体験』は 一名様、花代別で3.000円と致します。 花代は2.000円です。

現在「見学のみ」は承っておりませんので、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 

・吉祥寺「ドスガトス」華道教室 日時は相談可能・要予約

現在、金曜日の11時から13時半、稽古可能です。直接相談してください。

「ドスガトス」は、スペイン料理店です。この店の一角をお借りして華道教室を開催します。初心者から優しく指導しています。このHP「連絡フォーム」よりお申し込みください。 吉祥寺華道教室 1回 3500円+花代(約1500円〜)

ドスガトスH.P.→  https://www.dosgatos.jp

 

日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもInstagramとF.B.にアップしています。

https://www.instagram.com/sado_kado_ritsuko/

よかったらご覧ください。

 

 

西武新宿線沿い 西東京市 田無駅より徒歩11分の表千家茶道教室・池坊華道いけばな教室 蓮心会 高森 梨津子