蓮心 表千家茶道教室 池坊いけばな華道教室

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2023年 1月 池坊いけばな「生花」の学び

2023年9月12日 Category: blog

 京都中央研修学院、総合特別科 石渡雅史先生の研究室の学びです。年に4回、1週間、池坊生花を徹底して深く学びます。

 私は10年前の 平成23〜25(2011〜2013)年の3年間、総合特別科 松永先生の古典立花の研究室に通いました。本当に素晴らしい学びでした。その時もこのブログに学んだことを書きたいと願っていましたが、忙しさに流されて叶いませんでした。でも、書き残しておきたい思いはどうしても諦めきれない。こうした池坊の深い学びを、私だけのなかに留めるのは とても勿体ないとこと思うので、今年から自分の復習もかねて、このブログに書くことにします。時間はかかりますし時差はありますが、お許しください。

まず一年度の四期、2023年 1月11日(水)〜15日(日) の五日間から。

 初日は「松竹梅(しょうちくばい)」。

初傳(初伝)で伝えられる『生花五箇条』のひとつ。

日本人が古くから大好きな「松竹梅」。その由来は中国の「歳寒三友」から。

「歳寒三友」とは、中国の宋代あたりから、文人の理想「清廉潔白・節操」を、冬を代表する植物を「三」というめでたい数字にセットにして表現する画題。

日本でも松や竹は古来から自生していて、その生命力のたくましさが崇敬の念を集めてきました。

平安末期には縁起物として松と竹を組み合わせた門松が、新年の門前を飾っていました。常緑の松は、長寿の象徴。成長力旺盛の竹は、繁栄の意味。奈良時代に憧れの中国大陸から日本にやってきた梅は、春一番に美しく芳しい花を咲かせる冬の希望、風物詩、風雅の象徴です。

松・竹・梅、いずれも枝ぶりに応じて真 添 に生けることができます。竹は池坊では「たれもの」に分類されるので、根締めに使う時は熊笹を用います。

 私は「竹の真」を生けました ↓ 竹の高さは2メートル以上はあり、付き葉を生かすので「どこでどう切るか?」を とても考えます。梅が副、躰が松です。

「松竹梅」を御玄猪に「井筒」で生けました。

「井筒(いづつ)」とは、竹を切って「井」の字型に植物を挟んで生ける手法。主にこの松竹梅と、初傳、七種伝の「水仙」の二本生けで使用します。

 私の作品は、「竹の節が水際から一寸上がりで奇数節」という決まりを守り、7つ節にしたところ、大変な大作になってしまいました。

この「松竹梅」は、「真・行・草」の生け方があり、いずれも水際の躰に竹、基本的に陽方奥に梅、陰方に松となります(逆になることも有)。竹は通常「*通用物」(*池坊では陸物とも草ものとしても扱うことができる植物)。松や梅は陸物。なので竹は「草の心」となるからです。(→この辺りを説明していると非常〜に長くなるので稽古で直接、伝えます。いつでもお尋ねください。)

この伝花は、『祝儀の極み』。品位が最高の花形なので、いける時は両脇に他の花は置かない。花器も銅器か金(かね)物。花台へ置くもよし。など色々伝承されています。

何故ここまで「松竹梅」に言及するかというと、茶道の世界と密着しているからなのです。

 三十五世池坊 専好の自詠に

『松竹と ならべてさすも 左より たけは水際と生て 立なん 

 木にあらず 草にもあらぬ 竹なれば いける水際の ふしに知べし

 右歌の意得 専一なり 水より一寸の 節を見るべし。』

 

 

さて、2日目は「水仙」と「万年青」。二つとも初傳「七種伝」です。

 水仙は、松竹梅と同じ「井筒」配りで生けます。

水仙を井筒配りで寸胴の花入へ。

水仙は『陰の花 水仙に限る』『賞美すべき花なり』と伝えられている「真」の花形の花です。真の花形なので、二本生けは基本的に竹の「寸胴」に生けます。

水仙の真っ直ぐに生きる出生(しゅっしょう)を生かすため、横掛けにいける事はしません。「置き生け、向掛によし。」

『葉の数は、偶数。蕾はひくく、開き花は高く。白根は蕾の水際に用う。

 冬は他の根締めに用うことはしない。早春より根締めに添えることも、また、

 水仙の根締めに金盞花を用いてもよし。二、三本生ける事よし。

 祝儀の席に用うべし。』

 

「水仙」の花は凛としていて、馥郁たる香りのこの花を生ける時、私はいつもイギリス人女優 オードリーヘップバーン を思い浮かべます。

5日目最終日は自由花材だったので「水仙の3本生け」をお玄猪へ生けました。↓ (日程順ではないですが続いた方が分かり易いので)

水仙の3本生け

 3本で生ける時は、「井筒」ではなく「花配り」に。

「真」の株の前に「副」の株を入れ、その副の葉が陰方後方へ降り出す特殊な生け方です。稽古で生けたものが分かりやすいので↓

水仙の3本生け

 

上記に記載通り、竹二重生けの下の重や、筆の花入れなどにも生けます。

 

この水仙、シンプルで簡単そうに見えますが、一株の姿 そのまま生けることはできないので、まず下の「袴」と呼ばれる花を包んでいる苞から中身の花と葉を順番に抜き、そしてあらためてその袴に長い葉から順番に仕組み直します。これが、初めはなかなか上手くいかず、難しいのです。昔、何度も袴を破ってしまい、『先生、これゴムで括っちゃダメですか〜?』と泣きべそかいて笑わせてくれた生徒がいたっけ。笑

この袴に入れかえる手法、皆さんに是非一度、体験してもらいたい。

 

続いて「万年青」。まんねんあお、と書いて「おもと」。

万年青を「松風」の花器に「石穴」に生けました。

 万年青も「祝儀」の花です。

「中傳」に『万年青を用いる事は 相続易き物故なり。唐土にては熨斗の替わりに是を用う、相続易く物なればなり。(中略) 祝儀には万年青を用い 実のない時は仮に実を作りても用う。但し 婚礼に紫色を用いず。』

 

「実物」は、本来祝儀の席には用いないことになっています。池坊は、明日咲く蕾に希望をたくす。実は花の後、過去のものと捉えるからです。

しかし!この万年青だけは別ものなのです。中傳に伝承されているように、

一年中青々として次々と新葉をだす万年青。

その出生は、向き合って生じた昨年の葉の間から、今年の春、新しい花茎と新葉が成長し、実は赤くなる。昨年の古い葉は新葉と実のために外側へ押し出されて傾く。

その姿を、冬に真っ赤に染まる実とともに賞美されるのです。

意外に身近に植えられている万年青。今、大河ドラマで話題の徳川家康が江戸城本丸に入城する際に、家臣から三種類の万年青が献上され、家康にとても喜ばれます。

一年中枯れない美しい緑色を保つことから、「繁栄」を象徴となり、確かに徳川はその後 300年の長きに栄えたことから、「引っ越しに万年青を贈るのは縁起がいい」という風習になったのです。

 

生花の中で役枝を「立葉」「露受葉」「流葉」「前葉」と扱うことも、また、丸く穴の空いた「石穴」と呼ばれる石の中に生けることも、独特な万年青です。

我が家では毎年、お正月に床の間に飾ります。

 

 

3日目は「梅」。梅の一種を、お玄猪(げんちょ)へ。

梅の一種を御玄猪へ。

松竹梅でも書きましたが、春、先がけて咲くお目出たい花。

現在開花している花の枝、来春に芽吹く青い枝、そして苔むした古木で表現されるこの一瓶は、力強く生きる喜びに溢れています。

 

梅園に行かれた方は、咲いている花だけではなく、苔木(苔むした木)や、ずばえ、と呼ばれる来年花を咲かせる枝となる青い棒みたいな枝に気が付かれるのではないでしょうか? 必ずありますので、まだ気がつかれていない方は、来年楽しみにしてください。花が咲いている枝だけではなく、こうした梅、そのものの姿を尊重し、力強く生けます。

先人の植物を観察する審美眼にはいつも感服いたします。

梅は、稽古のベースとなるもの。基本なので「伝花」ではありません。

 

 

4日目は「三種生け」。

三種生け

この後、池坊開館で 3月24〜27日に開催される「春の華展」の試作です。私は「三種生け」が指定されました。

連翹(レンギョウ)の変化形「上段流枝」で、真・副・躰の花率を作り、ドラセナ・ブラックリーフで、真・副のあしらい。かすみ草もあしらいで。

古典的ななかに、新しい出会いを求めます。

でもまだあと2ヶ月あり、花材が揃うか分からないので、どんなことになっても臨機応変に対応できるように稽古します。

 

 

長々書きましたが、これが京都の一週間の学びです。

東京では、深夜まで起きていてやらなくてはならないことに追われる日々ですが、この京都の学校に滞在している時は早寝・早起きで、一番健康的な生活ができます。『花の勉強だけ』できる。こんな幸せな事はありません。ホントウに。

そして、この学びを次の世代に伝えていく。その仕事を私の「使命」と信じていますので、学び続けます。

こんなに素敵な日本文化。日本に住んでいながら知らないでいるのは「勿体ない!」ことですよ。

茶道、華道で心を豊かにしていきましょう♡

 

日々の稽古や、生徒の作品、またプライベートもF.B.とInstagramにアップしています。

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よかったらご覧ください。

 

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