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七夕と梶の葉

2024年9月21日 Category: blog

 毎年 7月、「天の川」のお菓子を見て “七夕” を思い浮かぶ方は多いのですが、「梶の葉」を表現した主菓子をいただきながら 『あぁ、七夕ですね。』と、ピンとくる生徒が増えないことを残念に思い、(超簡単にですが)今年7月 Instagramに『 “七夕” イコール “梶の葉” 』の投稿をしました。

その内容(前編)は下記の通り。↓

 七夕の歴史は古い時代の中国で、七月七日に行われていた「乞巧奠(きこうでん)」という儀式に因みます。

「七夕乞巧奠」とは織姫にちなんで、金銀の針や色糸などを供えて天の二星に織物技術や、詩歌の上達を願う行事。
七夕の夜に習字や詩歌の上達などの願い事を、芋の葉上の朝露で墨をすり「梶の葉」に書く風習が日本に伝わりました。七夕には “習字上達の願い” も含まれ、昔は七夕の短冊の代わりとして梶の葉が使われていました。

乞巧奠では、願いをしたためた梶の葉を水を張った「角盥(つのだらい)」というタライり浮かべることで願いを天に届ける慣わしだそう。

乞巧奠で梶の葉を水を張った「角盥(つのだらい)」
主菓子 左「梶の葉」右「天の川」
七夕「梶の葉」の飾りもの。なんと、メルカリでも流通していました!

師匠に梶の葉に墨で書かれた暑中見舞を見せていただいた時の感動は今でも忘れられません!

2017年7月、建仁寺館長様から師匠に届いた暑中見舞!

  

 … と、いうゆうことで、今まで「七夕」イコール 「梶の葉」なのだ。と、私自身なんとなく分かった「つもり」でいました。

さらに調べると、梶の葉は「柏」と同じように『神前に供える供物の食器や祭具の「弊」としてつかわれ神聖な意味合いを持つ植物』だからだそう。

ふむふむ。「…?」。

はて。「神聖な意味合いを持つ植物」と書いてあるが、「 ” なぜ ” 、梶の葉が 神聖な意味合いを持つ植物なのか」は、どこにも書いていない。

そもそも、紙を作る代表は「楮(こうぞ)」…『何故、七夕の行事は “楮” ではなく “梶の葉” でならなくてはならないのか??その意味は?』

この疑問から私の、わかったつもりでいた「梶の葉」の謎ときの旅が始まった。

その矢先、『倭文(しずり) 旅するカジの木』という映画が上映された。
勿論早速観に行く。

映画「旅する梶の木 倭文(しずり)」

なぜ人は衣服をまとうのか… 化学繊維が人間の体を覆い尽くす現代に〈衣〉の神秘的な始原を追って、台湾、インドネシア・スラウェシ島、パプアニューギニア、そして日本。日本の神話に秘められた大きな謎を解き明かすために北村皆雄監督が五年の歳月をかけて完成させたドキュメンタリー映画です。

 「衣・食・住」の中の「始めに”衣”を造る手立てであった”紙から布へ”」と繋がる歴史は実に面白い世界だと識る素敵な映画でした。しかし、私の「何故 梶の葉なのか?」の疑問はまだ謎のままです。

この映画の監督・製作は私の大親友、阿部櫻子ことチャックの元上司・職場。映画上映中、チャックのギャラリー「ディープダン」でこの映画に出てくる布が三日間限りで展示されていた。そのご縁でこの映画に出演していた “紙を糸にして布を織る作家” の妹尾さんとチャックと一緒に “中国少数民族の衣装とアフリカのクバ王国の布のコレクターでギャラリスト” の梅田さんのギャラリー兼、別荘がある茨城 笠間(友部)へ、「今年5月に開催された『アフリカ クバ王国の布展』の展示をまだ観ることが出来る」というので行くことに。

車窓からは蓮(蓮根用)畑が一面!

写真上:車窓から一面に見える蓮畑。 下:梅田さんのギャラリー

都内から1時間半でこんなに素敵なところへ来られるのね〜
梅田さんのギャラリーのすぐ下には魯山人の別荘が移築された「春風萬里荘」がある素敵な一軒家。

『ここはパラシュートで落ちて偶然見つけたような土地なのよ』と、(80歳にはとてもみえない)チャーミングに語る梅田さん。
アフリカ・クバ王国の布への熱い解説をしていただきながら拝見できた幸せな時空間。

ちなみにアフリカのクバ王国の布も、ラフィア椰子の木の繊維でできた樹皮だった。

『この布の模様、私たちには不思議な幾何学模様に見えるけれど、実は調べてみると顕微鏡で見た人間の細胞の形とそっくりだと分かったの。きっと、彼らにはそれがみえるのだろうと想像出来るわよね』との話に深く腑に落ちる私たち。

アフリカ・クバ王国の布。ずっと見ていると引き込まれていくような錯覚に、

きっと現代の文明社会では忘れられてしまった「見えないけど大切な なにか」がまだ生きているのだろう。自然と共に生きている人の想いを感じ、布フェチな私としてもとても興味深かった。
なにより “自分が好きなことを追求し続けてることを貫き通している方々” の語る言葉は一つひとつが優しく重い。

梅田さんのギャラリーの脇にも気がつけば梶の木らしいものが生えているという。映画に出演していた妹尾さんが目をキラキラさせて『私、梶の木などの見分けの目はこの映画でかなり肥えましたから』と見に行く。

梅田さんのギャラリーとその近辺。風が気持ちいい!

梶の木も楮もヒメ楮も同じクワ科の血縁仲間。パッと見た目では良くわからないが、梶の葉の裏は、毳毳(けばけば)しているので触ると良くわかるそう。梅田さんの家の木はヒメ楮でしたが、葉の形は梶の葉と変わらなかった。

梅田さんの家の木はヒメ楮。沢山生えていました。

40年位前から中国少数民族などの古い服や布が大好きで収集している梅田さんは、偶然この笠間の土地と出会ったと言うが『倭文‥』の映画にあったようにこの常陸の土地は織物の神と星の神が戦った神話にある石井神社が直ぐ近くにあり、やはりこれは”縁”に導かれたとしか思えない?
映画で日立市の大甕(おおみかみ)神社が撮影されていた理由が少しずつ解かれていくようなワクワク感!早速、皆で石井神社へお詣りに。

石井神社

石井神社の御祭神は健葉槌命(たけはつちのみこと)。日本書紀などに「開拓(武運)の神」と記述がある。健葉槌命は、倭文の里(那珂市)で倭文織(しずおり)・機織りを伝えていた神、産業の神としても信仰されている。

そして、石井神社がここへ鎮座した由来が書いてありました!

石井神社鎮座の由来と歴史

 『神代の昔、天つ神が豊葦原中国(とよあしはらのなかつくに)を平定する際に、この地方を支配していた天甕星(あめのみかぼし)・香々背男(かかせお)だけが従わず、討伐に派遣された武甕槌神(たけみかづちのかみ)経津主神(ふつぬしのかみ)に対して、巨大な石となり抵抗した。二神の命をうけたここ石井神社の御祭神、織物の神である倭文神・健葉槌命は、久慈郡・大甕(おおみかみ)の山でその巨石を蹴り飛ばし、天甕星を退治した。割れて三方向に飛んだ石の一つが石井の地に落ち、天甕星の祟りを恐れて倭文神・健葉槌命をお祀りした。』

そう。この落ちた石が祀られているのが、布コレクター梅田さんが偶然見つけたギャラリーのすぐそばの石神神社、なのです!偶然ではなく、引く寄せられたのでは?

神話のロマンに心踊る私たち。

沢山素敵なエネルギーをいただき、ご縁に感謝。来訪を約束し、ギャラリーを後にした。

帰り道、「何故 “梶の葉” なのか?」の謎がまだ解けない私に、”映画監督” チャックが持論を話してくれた。

『綿や絹が生まれる以前、楮や梶の木を剥いで採れる繊維はとても貴重だった。その剥いだ繊維を砧のような道具で叩き柔らかくし、細く頑丈な糸を作り、染める布に加工するまでの技術は、今の時代でいうIT技術やA.I.のようなものだった。だから布をを持った者がその時代、権力を持ち、その地を支配していたのだろう。布を作るという技術は、その時代の先端の技術だった。
いつの時代も先端を征する者が強いとされるのだ。今ならGoogle?これからはA.I.とかか? その神様たちが、倒されたのは、布より新しい鉄などの技術が現れたせい』と、チャックは説明した。

 映画の中のラストシーンで踊る人たちが、大甕神社の神話を抽象的に表現していたのだと、チャック先生のお陰で整理ができました。

流石です!チャック監督!!

 五節句の中の四番目の「七夕」という行事。何故か昔からとても興味が湧いて仕方がなかった。今回、今までと違う視線で学べたことをとても嬉しく思う。また今後も沢山の気づきがあるだろう。楽しみで仕方ないです。

 

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