令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告 – 後座 –
令和5年 7月「還暦祝い茶事」の報告「 初座」 につづく「後座」編です。
茶懐石の後、主菓子をいただき、名残の拝見をして露地へ移りました。
たっぷりと水を打った外腰掛。暑さを忘れ…と 書きたいところですが、正直‥ 暑かったです。露地で静かに待っていると、席中を準備する皆の苦労が手に取るように伝わってきます。私はひとり、外腰掛けで今後の課題に真剣に向き合った時間でした。
ほどなく、喚鐘(かんしょう)の音が響き、つくばってその音を静かに聴きます。蹲踞で手と口を清め、後座の席へ。
後座の床の間には、蝉の花入に唐糸草と紫の桔梗、河原撫子、糸芒。涼しげで可憐なその花たちの姿を見、先程までの暑さがようやく吹き飛ばされました。
後座の室礼を拝見し、いよいよ、茶事のメインである濃茶です。
感染症対策で各点前でいただいていましたが、社中皆さんの希望により、三年ぶりに回し飲みをするお濃茶です。
「今回の亭主や幹事、そして半東全員、一人ひとりの “節目” を、皆と 一緒に祝い味わっている。」と感じ、とても、とても美味しくおめでたく感じる味でした。
茶入 伊勢崎満さん作 備前肩衝 御仕服 菊苺
茶杓 瀑布 総見院 山岸久祐共箱
主茶碗 伊羅保写 鶉 妙全作 表千家 代 惺斎の箱書
替 志野 加藤右衛門作 替 赤楽 無事 佐々木虚堂作 御濃茶 猶有斎好 柏樹の昔 ぎおん辻利
干菓子 団扇、水、蛍
薄茶器 菊形 木村表惠作
薄茶椀 鳳凰紋 西村徳泉 替 尋牛斎共箱 蛍狩 替 兎 榊原勇一
薄茶 猶有斎特別挽上 楽寿の昔 柳桜園
建水 白南蛮内渋 榊原勇一作 蓋置 波に千鳥 真葛香斎作
今回の茶事は、私の還暦祝いだけでには留まらず「蓮心会に携わる全ての方の節目を祝う」意味もあるとのことで「節目」をテーマに開催したいと聞いています。
お祝いの席に、美礼さんと奈月さんの連吟で「小督(こごう)」の仕舞いを披露。
能も「継続の力」です。お粗末でしたが精一杯勤めました。美礼さん、奈月さん、ありがとうございます。
東川先生がお祝いに「猩々」をお謡いくださりました。水中に住む酒好きの妖精の、祝言の趣を持った曲です。東かわ先生、ありがとう御座いました。
皆にこれだけのお祝いをしていただき、どれだけ幸せな先生でしょう! 高野竹工さんに特注で作って頂いた竹の花入を今回の記念品としました。皆で記念写真を撮り、名残り惜しいですがお開きです。
今回、今の段階で精一杯、目の前の事に集中する皆の姿と対峙して、わたしにとっても、皆さんにとっても、もの凄く大きな「節目」の茶事となりました。
改めて茶の湯は、人間を成長させてくれる難しくも素晴らしい学びだと確信しました。
この茶事の開催にあたり、試作や準備も沢山の日時を要しましたね。
↓ 準備中の半東さんたち。
この準備を含めた「節目」の茶事を開催した経験を、しっかりと振り返り、この経験を今後、それぞれに 生かしていってください。
竹が強くしなやかに育つよう、今後も深く広い茶の湯の世界を学んでいきましょう。
素晴らしいお祝いの茶事でした。ありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
令和五年 八月大暑
蓮心庵 高森 宗梨