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令和6(2024)年「朝茶」茶事報告

2024年9月19日 Category: blog

 令和6(2024)年に蓮心庵で開催した「朝茶」の茶事報告です。猛暑の候に、朝方の涼しい時間の茶の湯を愉しむ茶事です。7時半席入。朝茶はいつも「続き薄」のスタイルです。

  

玄関に、短冊 『澗水湛如藍(かんすい たたえて あいの ごとし)』
十二代 兼中斎筆です。

玄関「澗水湛如藍」

 この句は、『山花開似錦 (さんが ひらいて にしきに にたり)』

 春の山は気が満ちて吉野の春景色を美しい、また春が過ぎれば 山は緑に覆われて、まるで錦のよう。という意味の句に続いて、

 『澗水湛如藍 (かんすい たたえて あいの ごとし)』

 谷川の水は 青々として 淵いっぱいに 藍のように湛えて流れゆく。という何とも素晴らしい自然の風光が浮かぶ詩文の名句です。

しかしこの句は単なる景色を叙した詩句の意味だけではありません。

実は『碧巖禄 (へきがんろく)』の第八十二則にある大龍智洪 (だいりゅう ちこう)の公案で、
『僧、大龍に問う 色身(しきしん)は敗壊(はいえ)す、如何なるか是れ堅固法身。龍(大龍)曰く、山花開いて錦に似たり 、澗水湛えて藍の如し。』です。

修行中の僧が大龍に『私たちのこの肉体と精神からなる現身(うつしみ)は死ねば直(じ)きに腐敗し、焼けば灰になってきまいましすが、金剛不滅といわれる堅固法身(法身仏のような清浄無垢で不生不滅)は、その場合どうなるのでしょうか』と、問いたことに答えたのがこの句なのです。

大龍和尚は、この修行中の僧は「金剛不滅といわれる堅固法身」の意味をまだ深く理解していないとみて、『今、美しく咲きにおうているが、一夜の嵐に吹きちってしまうあの山桜が、そのまま堅固法身の当体じゃぞ』と、示したのです。

深い公案なので解説するのは難しいのですが、わたしには「一瞬として同じ姿でとどまることのない大自然の営みのなかの美こそ、私たちと同じ生きている命の姿なのだ」と、云われているように感じました。
私たちも、大自然の営みも一瞬として同じ姿でではない。今日の日を一期一会の会にしたいとの想いをテーマに、この短冊からスタートです。


寄付の掛物は、大徳寺 立花大亀老師筆『滝』

寄付、大徳寺 立花大亀老師筆『滝』
煙草盆は 輪島櫛形 宗芳作。火入は青楽瓜形 和楽作

この酷暑の中、瀧が落ちてくる風景を想像して、少しでも凉を感じていただけたら。という想いと、「この瀧の水の流れと同じように、茶の湯の道は間断(かんだん)なく流れつづける」ことを感じていただきたいと選びました。

  

本席の掛物は、永源寺 (篠原)大雄老師筆
『朝看雲片々 暮聴水潺々(あしたにはみるくもへんぺん くれにはきくみずせんせん)』
 朝、空を見上げ雲の片々を見、夕暮れに庵へ帰り谷から潺々と沸く水の音を聴く。山奥で暮らす理想郷を描いています。が… ここは茶人。「市中の山居」というように、たとえどんな環境にいても、この心境で暮らしたいものです。
この永源大雄老師の 托鉢へ行く修行僧の後ろ姿の画賛は、稽古を始めた頃、師匠宅で拝見し、とても感動し憧れていたので、長い間探し続けてようやく見つけました。

『朝看雲片々 暮聴水潺々(あしたにはみるくもへんぺん くれにはきくみずせんせん)』

 炭点前の炭斗は、菜籠。香合は、源氏蒔絵(観世水) 不窮斎(高野竹宗陵)作。

  

茶懐石の献立は、
飯物に、平目昆布寿司。白板昆布を甘酢で炊いてバッテラ寿司のように乗せました。自家製辣韮(らっきょう)を細かく刻んで混ぜ、辣韮の甘酢とレモン汁でスッキリしたシャリを作りました。茗荷酢漬と、京都産すぐきの漬物を添えて。

銘々皿は、だし巻玉子、琥珀寄せ(小倉・南瓜・人参・針生姜)、ミニトマトのお浸し、隠元の生湯葉巻、冬瓜葛煮、花蓮根、枝豆、高野産の水茄子、青楓生麩。兎に角、素材の味が引き立つよう心がけます。

平目昆布寿司と、盛りつけた銘々皿。

皆さん、盛り付けの綺麗さにうっとり。しばし眺めていました(笑)

   

懐石のメインディッシュである煮物椀は、玉蜀黍豆腐に 蓴菜、苦瓜、青柚を添えて。

煮物椀、八寸、主菓子

お口直しの小吸物は、シャインマスカットと向日葵の種。

八寸は、鱧の白焼と、薩摩芋の栂尾煮。日本酒を変えてマリアージュ。

皆さんの幸せそうなお顔から、見た目にも、お口にも五感で味わえたことが伺えます。  

茶懐石の最後は、主菓子。亀谷万年堂製の「岩清水」です。岩の間から湧き出る澄んだ水を表現しています。掛物の中から出て来たようだと感じていただけると嬉しいのですが… 。

 主菓子をいただいた後、露地へ移ります。露地には足元の苔にも、木々の葉にも打ち水がされていて次の間へ移る前のひとときを心静かに過ごしていただけたと思います。残念ながら今年は写真を撮りそびれてしまいました(涙)

亭主の喚鐘の音を合図に、後座へ席入りします。

後座の室礼

後座の室礼を拝見します。

 風炉先 腰地 網代  兼中斎花押
 風炉釜 宗心花押 松竹文真形釜 十二代 加藤忠三郎作
     利休形 真塗長板
 水指  高取 十四代 (亀井)味楽 蓋 塗師 鈴木表朔
 茶入  備前 小西陶古 仕服 円文白虎朱雀錦

今年は二日間とも桔梗朝顔が咲いてくれました。これは奇跡です!花入れは、瓢箪。

いよいよ茶事の目的である お濃茶です。今年初めて、楽茶碗をお披露目しました。

 茶杓  大綱和尚「引く人も引かるる人も水の泡 浮世なりけり淀の川舟」(大徳寺黄梅院の大綱宗彦の詩) 三玄院 藤井誠堂老師のお手作り

 茶碗  十四代 楽吉左衛門 覚入 黒 銘「永寿」十三代 即中斎箱 
  替  蛍狩 清流之絵 平 尋牛斎画賛
 茶器  琉球螺鈿 中次

  建水 鉄黒様 弥三郎
  蓋置 表千家好 竹 一双の内

 御濃茶 猶有斎好 特別挽上 楽寿の昔 柳櫻園詰

干菓子を出して、続いて薄茶も召し上がって頂きます。
    
 御薄茶 而妙斎好 栂尾の昔 祇園辻利詰
 御干菓子 薄琥珀朝顔の花 味噌煎餅 垣根の絵 亀谷万年堂
 御干菓子 象彦

京都限定の「夏越し川」という御干菓子を戴いたので蒼いガラスの器に載せて頂きました。ありがとう!Yurikoさん^^

煙草盆 即中斎好 一閑 鱗透溜 五代 (川端)近左作
   火入  祥瑞
   莨入  琉球
  きせる 如心斎好 二代 清五郎

 

無事にお開きになったのは11時半前。あっという間でした。

 ダイナミックに刻々と移り変わる大自然の営みを想像し感じていただき、皆さんに「山里の茶室」の茶境を味わっていただけたら、とのテーマを元に玄関の句から始まった今年の朝茶。皆さん、茶事に慣れてきたとこもあり、朝茶らしくサラッと短時間ながらも、ギュっと茶の湯の醍醐味が濃縮された素敵な茶事となりました。

半東の皆さんは、滝のような汗を流しながら良く、よく頑張りました。数ヶ月前からの露地の手入れ、繰り返した試作などの準備から本当にお疲れ様。私は皆さんを本当に誇りに思います。ありがとう。

 

  

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