蓮心 表千家茶道教室 池坊いけばな華道教室

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令和三年初釜報告

2021年4月2日 Category: blog

今年は桜の開花が例年より10日ほど早く、私の大好きな桜吹雪が舞うようになりました。

またまたすっかり遅くなりましたが、今年1月30・31日に開催した初釜の報告をさせて頂きます。


今年は年明け 1月8日、2度目の非常事態宣言が発令されました。私は生徒の安全を完全に守れるのか? 正直、初釜を開催して良いものか、とても悩みました。

そこで社中へ『 3月に延期することも可能だよ?』と、聞いてみした。すると生徒たちから言われました。『この事態は、きっと直ぐには変わらないでしょう。私たちがしっかり気をつけますので、先生、いつものことをいつものように続けてください』と。


皆のその言葉に背中を押され、今年の初釜を開催することを決断しました。

『東山水上行(とうざんすいじょうこう)』。「山が水の上を行く。動かぬ山が川を流れて行く。」

今までの当たり前だったことは、実は当たり前でない。どんな時でも自然に学び、逆らわず、 今、できることを コツコツと積み重ねて行く蓮心会。流石です!(自画自賛 笑) 。 

小金井公園の梅。梅の中でも一番好きな「月の桂」。


 一年前の自粛要請の頃から散歩に行く習慣がつき、小金井公園へ行く回数も以前より増えました。そんな中の一月初旬、やはり少し早めに咲き始めた梅の花を常より多く見ることが出来ました。
〈 霜や霧に負けず寒さの中、どの花よりも早く開花する 梅の花〉と、「松竹梅」に例えられていますね。
その美しさ、その健気さは、じっと苦難や試練を耐えて初めて得られるのではないか… その花の姿に、とても感動しました。

私たちの今置かれている環境とあわせ思い、どんな状態でもその中で懸命に生きる植物のしなやかな生命力に改めて気付き、深く感じ入ったのです。


そんな感動を胸に、今年の初釜の道具組を思案していた時、丁丑(1997←24年前!)に即中斎宗匠が書かれた『梅花似照星(ばいかはてれる星に似たり)』という短冊に出会いました。

これは、菅原道真が12歳の時に書いた「月夜見梅花(つきのよにばいかをみる)」という詩です。
「月輝如晴雪(月の輝くは晴れたる雪の如し) 梅花似照星(ばいかはてれる星に似たり) 可憐金鏡転(あわれぶべし きんきょうの てんじて) 庭上玉房馨(ていじょうに たまぶさのかおれることを)」


月の輝きを晴れた日の雪…月の下に咲く白梅の花を星が照る光… に例えるなんて、なんて素敵な感性でしょう!


そして、「照」という字は、まだ先の見えない今の私達の先を照らす “光 ” に感じられ、前向きな気持ちになる良い字だな〜と、思っていたら、而妙斎が書かれた『神光照天地』という、掛物に出会い‥
堀之内宗完宗匠の手づくりの茶杓『白梅』があり、
円山慶祥筆 “(白梅と)人形画” に即中斎が「献春」と賛した「瑞色」と云う華やかな掛物も!

 

「小間では尋牛斎の竹の一重切りに花は紅梅と紅白の椿だな、、尋牛の意味も皆にちゃんと知っておいてもらいたいし」

「香合は、榊原勇一さんに”傘牛“ を特別注文したし、、」

「では、これは、お薄茶席の床の間へ… 青竹に結び柳、大きな富利富利(ブリブリ)香合を紙釜敷に載せて‥」

 
.. と、自分の力ではなく、赤や白の紐が自ら生き物のようにうねり動いて紡いていくように物語が生まれていきました。
去年 縁があり、沢山の素晴らしいお道具と出会うことが出来たお陰です。それを惜しみなく、組み合わせてみました。
こんな大変な時こそ、目にも心にも舌にもご馳走を!

 

そう、この機会に主客ともに五感をフル回転させてあげましょう!

 

お庭も久しぶりに大きくリニューアルです!

亭主と客が無言で踞い、挨拶をするところ。
ここはいつも私の担当。この角度が難しいけれど、ピッタリ合う時は快感!
下:リニューアル前、中:角度をあわせて・・上:完成

沢山の竹を、一本一本タワシで丁寧に洗います。以外にこの作業を皆さん知らない。。

 露地も、3年ぶりに竹垣や門など全て作り直しました。

入り口のフェンスを竹に。
奥の竹垣を風通しの良い感じに戻しました。


懐石料理も、金子サーダ料理長と共に迷いも無く直ぐに組み立てられました。

皆も手伝い、料理教室も兼ねているようです。

細かな作業をコツコツ仕込みが命。

木の芽味噌を作るため、沢山の木の芽の青葉一枚一枚づつとり、
すり鉢で少しづつ擦るのが、実に大変でした!

 


・蟹の蒸し寿司に、錦糸卵 三つ葉 ・(クチナシで色染めた)慈姑・(生の)巻き湯葉炊き合わせ ・活車海老・独活と白蒟蒻の木の芽和え ・絹さや ・蓮根の酢漬け ・沢庵 ・辣韮 又は、牛蒡
・焼物は、鰤の水尾柚子味噌幽庵焼き 

取り分けをせず、一人づつに盛り合わせます。大樋焼の梅の立体模様。

煮物椀は、焼いた丸餅でお雑煮 クタクタに煮含めて中の芯だけ抜いた下仁田葱、山椒の隠し味で煮含めた鴨の胸肉、菜の花、松葉切りした水尾の柚子を添えて。

煮物椀。

・八寸は、金子さんの手作り からすみ と、私の炊いた黒豆を玄関の松葉に刺して。沢庵以外、全て、ここで作りました。

八寸の時間になると、ちょっとホッとします。


主菓子は、鶴屋八幡さんに特注した「誰が里(たがさと)」。 源 俊頼(新古今和歌集)の、「心あれば問わましものを 梅が香に 誰か里よりか匂い来つらん」今年は梅が歌われている詩が道案内してくれます。

開くと決めたなら、広間は思いきり初釜らしく華やかに!
平和な日常が戻って来るように願いを込めて、結び柳。

 

「濃茶席」椿は加茂本阿弥と曙。茶杓が「白梅」なので、花は紅梅を。

全てを広間の室礼で開いたので、ディスタンスは充分取れました。

薄茶は半東さんがお点前を。

名残惜しい時間です。

初釜は、「書初め」を。

 

 仕事の都合などで、稽古へ来られない方もまだいらっしゃいます。庭の手入れをしている時や、懐石の試作や準備をしているとき、そして勿論 当日も、その方々のことを思わない時はありませんでした。その生徒達の為にも、頑張ろうと誓い頑張りました。

 

きっと蓮心会の社中皆は同じ想いだったと思います、『ああ、この感動を来られなかった方々と、いつか分かち合いたい‼️ 』と。
熱い熱い蓮心会のメンバーなのです。笑 

去年のあの、社中の皆さんで開いてくださった初釜から丁度一年。

深い ふかい、一年でした。
確かに、個人的にも大変なこともありました。しかし、去年のことが無ければ見失っていたままでいた大切なことが多くあり、それを改めて見直すことができ、私にとっては実りの方が多かった一年でした。
それは、これから生きていく上で本当に大切な素晴らしい"気づき” でした。
そして、また、この一年で培ってきた蓮心会の皆さんの繋がりは、とても強くなったと感じています。
稽古場で一緒に居ることだけでは無い深い繋がりを感じています。

私たちは、茶道を通して、いつでも 一緒にいると。

今年もじっくり、学んでいきたましょう。

 

令和3年  春分

 

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