五節句、「重陽の節句」
九月初旬の茶席では、菊を型どったお菓子や菊の絵が書いたお道具が見られるようになります。
お菓子も写真の様な『姫菊』というお菓子。
あら、秋だから菊・・と思っているだけではありませんか? 生徒に何気なく「菊の節句」の話をしたのだけど、ピンときていない様子。これは知らないと勿体無い!ちゃんと理由があるのです。
皆さん、『 “重陽の節句” って聞いたことある?』
まあ、これは知らなくて当然です。現代の日本に全く根付かなかったから。私も茶道を習いだして初めて知ったことの一つ。でも、知らないと残念な とても素敵な五節句の最後の一つ何です。
『では、五節句を 全部言える?』と 聞いたところ、『敬老感謝の日、とかですか?』・・ガクッ、そもそも『 “五節句” が分からない(汗;)』とのこと。はい。
では、分かるところから言ってもらいましょう。
『う〜ん・・「ひな祭り」ですか?』
『そうそう!三月三日ね。それと?』
『え〜っと、「子供の日」?』
『はいはい、五月五日「端午の節句」ですね〜、それから?』
『ん・・? お、お正月?』
『一月ね、一月七日は「人日(じんじつ)の節句」と云われます。あと、二つ。』
『三・五・一、、ああ、「七夕」ですね!』
『七月七日、そう、「七夕」、「乞巧奠(きっこうでん)の節句」です。これは中国の伝説が 今も同様に日本に伝わっているようです。さあ、あと一つ。』
『むむ、む・・11月11日 ですかぁ?』
『おぉっと、いき過ぎた!』
と、嘘のようにでき過ぎた会話が九月初旬の稽古場で水曜、日曜のともに、実際にありました(笑;)。
さて、では五節句について 簡単に書いていきましょう。
・ 一月七日、『人日(じんじつ)の節句』。七草粥をいただきます。
・ 三月三日の『桃の節句』。桃の花を飾り、ヨモギをいただきます。桃の節句については、2017年3月3日ブログに 詳しく書いたので、良かったらご覧ください。
・ 五月五日、『端午の節句』。菖蒲湯に入り、花菖蒲と兜を飾ります。粽を 頂きますね。
・ 七月七日、『七夕』。子供の頃、笹に願いを書いてつるしましたね。(七夕の「乞巧奠(きっこうでん)」や「梶の葉」については、また書きたいと思っています。)
さあ、そして、九月九日。『重陽の節句』と云います。
これは、一体どんな節句なのでしょう?
まず、『重陽(ちょうよう)』とは、「陽」が重なる、という意味。中国の陰陽思想では、奇数を「陽」、偶数を「陰」としているので、一の位で一番高い九の数字が重なるということで五節句の中でも特に縁起の良い日 なのだそうです。
では、何故「重陽」が「菊」の節句なのか。それはやはり、中国の風習が元となっています。
菊の原産地中国では、古くから不老長寿の象徴とされていて、日本には奈良時代末期に渡来したといわれています。旧暦九月九日は新暦十月の中旬、まさに菊の美しい季節。
中国ではこの日に菊の花を飾り、菊酒を酌み交わし、お互いの長寿と無病息災を願う習慣があるそうです。それが日本へも伝わり、「菊花の宴(うたげ)」として宮中で行われ始めたそう。
また、前夜から蕾の菊の花に綿をかぶせて、菊の露と香りをうつしたものを菊の被綿(きせわた)といい、翌朝、その綿で顔や体を清めると若さが保たれ長生きでいられるとする風習も。女性なら誰でもキュンとなりますよね。
丁度 重陽の節句の頃、京都へ越した生徒がこんな可愛らしいお土産を持ってきてくれはりました。
と〜っても良い香りがします!『先生、九月九日の重陽節会の日のみ、配られるという超レアものなんですよ〜』と。おおきに。ありがとう!
「茱萸袋」とは?茱萸(グミ)を入れるの?説明の紙が中にありましたが 難しく書いてあり・・はい、調べました。
茱萸袋とは、「かわはじかみ(山椒)を詰めた赤い袋」なのだそう。この赤は厄除けの意味があるそうです。
古代中国の言い伝えに、「九月九日に災いが起こるが、茱萸の枝を肘に巻いて高い所へ登り、そこで菊の酒を飲めば難を逃れられる」という予言があったそう。この予言を守り人々の命は助かったが、ふもとの家畜は死んでしまったとか。
その古事から、重陽の節句の日には、高い所へ登り、魔を祓う風習になったとか。(あ、前回のブログで書いた 中国人の生徒が『ピクニックへ行きます』と言った話は、もしかして、ここからなのかも⁈)
他の節句と比べて、新暦ではまだ菊の花が咲かないので 日本では残念ながら馴染みが薄いものとなった節句。
でも、知ると素敵な節句と思いませんか?10月には露地菊も咲き始めるでしょう。
私は、10月京都で菊の古典立花を勉強してきます。菊の香りに包まれて。楽しみです!
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蓮心会 高森 梨津子